2013/11/01

建築音響研究会で『Helmholtz共鳴器を有する高性能乾式遮音二重床の開発 -2質点系理論と実大実験の比較-』と題しての発表

10月29日(火)午後に、日本大学で日本音響学会の建築音響研究会が開かれ、共同研究者で神奈川大学の安田先生が上記テーマで発表いたしました。4月22日(月)には『Helmholtz共鳴器を有する高性能乾式遮音二重床の開発--2質点系モデルに基づく検討-』と題して主に理論構築に関して報告していますが、今回はその理論が、スラブ厚180mmの実験室ならびにスラブ厚110mmのストック住宅での実測値と比較して、理論のパラメーター、例えば共鳴管の数や空洞部の大きさの変化などを変化させた場合と実際の測定結果の変化が良く対応しているとの報告をしています。
発表後の質問はかなり具体的で、敷居との間の納まりは図で分かるが、コンクリート壁との間はどうなっているか、また重量床衝撃音のボールはわかったが軽量床衝撃音ではどうだったか、また室すべてが同じ大きさのユニットでできているかなどがありました。次第に興味を持たれていると感じられるようになっています。
今回の建築音響研究会の参加者はいつもより多く(もちろん我々の発表のせいだけではありませんが)、大教室が一杯になっていて補助の椅子も置かれていました。

他の方の発表のテーマを以下に示します。いずれも興味深い内容でした。


・界壁と音響起振機を利用した面音源型のマスキングシステムの検討―オフィス会議室への適用―
・断熱折返しによる遮音欠損改善方法の検討
・木造大スパン構造床を対象とした重量床衝撃音に関する検討
・コンクリート壁の二重壁仕上げにおける遮音性能実験事例と低域共鳴透過現象の分析



2013/09/24

横浜ボートシアター、第10回横浜カーフリーデーのパレードに参加

8/22日曜日の昼過ぎに、横浜でカーフリーデーパレードがあり、横浜ボートシアターのグループ30名ほどで参加してきました。横浜公園から象の鼻公園まで、歩行者天国にした日本大通りを練り歩きました。
横浜ボートシアターは、「第七金星丸」(鋼鉄製の艀)を拠点に活動している劇団で、横浜文化賞受賞経験もあります。この日は、普段舞台で使用している仮面をつけての参加です。

横浜市消防局の吹奏楽団を先頭に、バトンガールや一輪車で踊る人たち、フラダンスのグループなどの後に、我々の仮面パレードがありました。
かわいい象や馬など動物の仮面は子供たちに大人気でしたが、私は小悪魔の仮面でしたので、子供たちからの評判はいまいちでした。
我々の後に、パレード最後尾の騎馬隊が続いていました。

たくさんの沿道のお客さんに、特に子供たちに感謝です。

パレードの様子はこちらからご覧いただけます。



2013/09/04

2013年建築学会北海道大会で発表しました

8/31、気温32度の横浜を出発、千歳空港に到着すると22度で、背広が苦にならない。とても気持ちが良いが小雨降っており、傘を忘れたことに気がつく。

今年の建築学会大会は札幌の北海道大学で、8月30日(金)から9月1日(日)まで開かれ、私は9/1午後、3編の論文発表に参加しました。

一つは『高性能遮音二重床の開発その4 築40年を超える団地での測定結果』と題して 堀内氏発表、二つ目は『Helmholtz共鳴器を有する高性能遮音二重床の開発 その1 2質点系モデルに基づく検討』と題して、神奈川大学安田先生発表、三つ目は『Helmholtz共鳴器を有する高性能遮音二重床の開発 その2 2質点系モデルと実測との比較』を私が発表いたしました。

昨年の建築学会では、ヘルムホルツ共鳴器を有する二重床の開発結果を発表しましたが、このタイプのものを施工性やコストの低減を目標にユニット化して、スラブの薄いストック住宅の床改修に適用し、バングマシンで低減量をL数で-10実現したことを発表しました。またこの床が、なぜ床衝撃音を低減できるのかを、床および床下に開けた孔の頸部の空気の質量と、床下空気層およびヘルムホルツ空洞部の空気のばねなどで2質点系モデルを構築し、空洞部の大きさの効果や、穴の数の変化、床下空気層の厚みの効果、防振ゴムの影響などを解析したものです。
三つ目は、2質点系モデルの振動伝達率と、床衝撃音の低減効果、およびスラブの振動応答の低減効果を比較して、理論と実際がよく対応していることを示したものです。

今年の発表に対しては理論的な展開もあるために、信用度が深まったせいか、温かな、好意的な質問が多かったと感じました。

前日の8/31の午後は、パネルディスカッション『マンション再生の可能性と限界-建築社会システムはどう再編すべきか-』を聞きました。
昭和40年代に建設されたストックRC集合住宅は100万戸ほどあると言われ、建て替える方法もありますが、それより躯体を生かして改修し機能を再生する方法が、持続可能な社会をつくる上で必要と思われます。
床衝撃音などの居住性能以外に、居住者に高齢者が多くなってきたことでバリアフリー化、設備の更新などの基本的な機能の更新、構造的な耐震性の向上などのほかに改修工事の静音化などの工法、さらに団地再生のための法律上の制度の整備などが必要のようです。現代の大きな課題です。

2013/08/19

ジュニア・フィルハーモニック・オーケストラ サマー・コンサート2013


84日(日)1400、ジュニア・フィルハーモニック・オーケストラ サマー・コンサートが、新しく改装された東京芸術劇場コンサートホールで開かれ、行ってきました。

本コンサートのパンフレットの巻頭に、オーケストラ代表の小林裕一氏が書いています。
『キンボー先生がジュニア・フィルの役割を強く意識してくださっているのが、器楽の演奏家だけでなく、オーケストラの活動を様々な方面から支える人たちを育てること。』その効果か、観客は老若男女さまざまで、また10代の若い人もたくさんいらっしゃいます。それだけで会場が明るくなる気がします。

コンサート前半は、モーツアルト/歌劇「フィガロの結婚」、後半はラフマニノフ/「交響的舞曲」、前半は、演出 菅尾 友、指揮 川瀬賢太郎、清水醍輝、ドタバタ劇の筋をキンボー・イシイ=エトーがくだけた調子で説明して始まります。オーケストラを前と後ろに分け、その間にスペースを作り、歌手がそこで演技をします。大道具はないのですが、あるときは演奏者が壁をつくり、それを衣装部屋の壁に見立てます。

後半は、趣のまったく違うラフマニノフの「交響的舞曲」(1940年)で、指揮はキンボーさんです。
全編にわたって激しい感情と穏やかな感情が繰り返し現れます。穏やかな時はとても美しい旋律です。第一楽章には、激しい動きのある曲の後に木管のオーボエとクラリネットとオーケストラには珍しいアルトサックスの、まるで朝に小鳥が鳴き交うような、きれいな旋律が出てきます。アルトサックスの音は大変柔らかな丸みを帯びた音で、演奏が終わった後、キンボーさんは何度かサックス奏者を立たせて、拍手をしていました。
大きなスケールで、これぞ交響曲と言った感じの曲ですが、よくこの難しい曲を若い人たちが頑張ったと思います。また聴きたいと思いました。

演奏終了後、キンボーさんの楽屋に行き、挨拶して、ちょっと質問をしました。昔オペラ座にオーケストラピットがなかった時は、どこで演奏したのだろうかと聞きましたら、「きっと舞台の上だと思う。舞台の奥にオーケストラ(楽団)がいても演奏はできる」と仰っていました。
オーケストラピットの位置は、とても機能的な位置ではあるのですが、舞台と観客を分断してしまいます。1600年に作曲された現存する最古のオペラ「エウリディーチェ」から1637年のサンカシアーノ歌劇場までは、オーケストラ(楽団)が舞台の前に居たわけではありません。それから現在まで、紆余曲折はあるでしょうが、オーケストラピットが様々な工夫をもって発展してきています。


また、出雲阿国が1603年に北野天満宮で歌舞伎踊りを行って以来、歌舞伎は発展してきましたが、昨日(8/16)のテレビ(にっぽんの芸能「追憶 市川團十郎 中村勘三郎」)の解説者の説明では、花道は1733年の市村座の絵図に初めて出てくるようです。最初は能舞台のように花道はなく、花道の発明までに、約100年かかっているとのこと。この花道によって舞台と観客席が一体になれると説明されていました。この歌舞伎の観点から見るとオペラのオーケストラピットは違和感があります。ときどき歌手が観客席まででてきて歌うことを夢想してしまいます。

2013/08/08

ASANO TAIKO U.S. 和太鼓スタジオがロサンゼルス南のトーランス市にオープン

ロサンゼルスの南、トーランス市に和太鼓のスタジオがオープンしました。
浅野太鼓のブログより

YABは、このスタジオの音響設計を担当させていただきました。オープンのイベントに合わせて私も渡米し、竣工直前に現場の確認および遮音の測定を行いました。


7月23日に現地到着、24日に大太鼓を使って遮音測定を行いました。遮音性能は問題なく安心しました。訴訟社会でもあるアメリカでは音の問題も非常に気をつかいます。

遮音測定の様子

ASANO TAIKO U.S.スタッフの皆さん

25日の午前は、神主による竣工式および夜はオープニングパーティがあり、26日はいよいよスタジオでの練習が始まります。ワークショップでは、鼓童の藤本吉利さんが指導して、20名が同時に大太鼓をたたく場面があります。この時が、ほぼ最大音圧が発生すると想定して、近隣に伝搬していないか再度チェックをしました。敷地境界周辺では全く太鼓の音は聞こえず、目標を達成することができました。本地域の騒音規制法の規制値は、日本の工業地域に相当し、衝撃音の場合には昼65dB、夜60dBと緩いのですが、隣接してホテルや事務所があり、道路を隔てて住宅街が広がっています。

太鼓連盟会長(左)と藤本さんの共演

20名同時演奏

ここで素晴らしい出会いもありました。
ホテルのフロントでペットボトルの水を買おうとしたところ、日系人の一団のチェックインにぶつかり、何十分も待たされることになりました。でも、待っている間にその団体の一人の気さくな男性と話はじめて、楽しく過ごすことができました。しかも、その方はなんとオープニングパーティの主賓、アメリカ太鼓連盟会長の田中誠一氏でした。
重要無形民俗文化財に認定されている方で、デーヴ・ブルーベックやデユークエリントンとテイクファイブやA列車を演奏し、またライジングサンという、ショーンコネリー主演の映画で太鼓を演奏したそうです。アメリカでの和太鼓のパイオニアです。

鼓童の藤本吉利さんは神がかった演奏をします。その奥様の容子さんの歌は、情感がこもっていて、太鼓をバックにした佐渡おけさは涙が出そうに素晴らしいものでした。

『石見の風』の今福優さん、堂本英里さん、末長愛さんの石見神楽は人々の健康や繁栄を祈願する楽しいものでした。また今福さんの太鼓は勢いがあり爽快なものです。

木村俊介さんは篠笛、津軽三味線、太鼓、何でも来いという感じで、『吉野の山』では、藤本容子さんの歌と合わせて篠笛の音色が、奈良時代か平安時代の華やいだ上品な雰囲気がよく出ていました。

その他、オープンパーティにいらした方は全米各地、サンフランシスコ、フロリダ、サンノゼ、ハワイから、またカナダ、イギリス、アルゼンチンなどからもいらしていました。人種も様々で、アジア系では、日系の人が多いのですが、韓国系や中国系の方もいらっしゃいました。

ワークショップのアトラクション

ワークショップのアトラクションで、表現の豊かさを競う太鼓のコンテストがあったのですが、我も我もと輪から中央に出てきて、踊りながら演奏していました。日系の人もアメリカ人と同じようにノリがよく、見ていて本当に楽しかったです。またリズムもジャズやロックやラップのような雰囲気があり、結構早打ちです。

様々な民族の人と同じ和太鼓をたたいているのを見ていると、平和の尊さを感じます。特に和太鼓の音色にはお寺の鐘のように唸りがあります。この唸りは天に我々の思いを届ける役割があると感じています。世界の平和を和太鼓で届けられればと思います。

またASANO DAIKO U.S. 社長の浅野勝二さん、奥様のジュリアさん、そのお兄さんのYuta Katoさん、そしてスタッフ皆様のご健康と、ご発展を祈念します。

2013/08/05

横浜ボートシアター第七金星丸での試演会 説教 愛護の若より 『恋に狂いて』

しばらく前の話になりますが、横浜ボートシアターの試演会は5月11日(土)と12日(日)と二日行われ、12日に行ってきました。

現存する説教節は「山椒大夫」、「刈萱」、「信徳丸」、「小栗判官」、「信太妻」、「愛護の若」の五つだそうですが、「愛護の若」だけは舞台化された記録がなく、また一切曲が残っていないものだそうです。今回の公演は、まだ朗読劇の形をとっているのですが、将来は横浜ボートシアターのヒット作『小栗判官照手姫』のように仮面劇にする予定とのこと。演出の遠藤さんは、80歳を超えていますが、新作に挑戦しています。

あらすじは、継母の子供いじめで、子供は滝壺に身を投げて自殺、その後、助けた人も、いじめた人も108名全て、身を投げて終わるというもの。
「いじめの本質をついた」説教節のおどろおどろしい迫力を感じました。何も救いがないような話なのですが、後味がそうでもないのは、腑に落ちるところがあるからだと思います。

今回は朗読に、エレキ三味線(説教節政太夫)やエレキギターおよび太鼓などの打楽器(松本利洋)の伴奏がついています。これがまた物語のおどろおどろしさを付加します。今回は朗読劇でしたが、俳優が仮面をつけ演技をすると、ますます人間の欲がむき出しになって表現されそうです。仮面劇の完成が期待されます。人形は遠藤さんが腱鞘炎になるほど、我を忘れて作成しているようです。

2013/05/13

第29回四国こんぴら歌舞伎大芝居に行ってきました


第29回四国こんぴら歌舞伎が4月6日(土)から4月21日(日)まで行われ、私は4月20日(土)の午後の部『銘作左小刀 京人形』『四代目 市川猿之助襲名披露 口上』『奥州安達原 袖萩祭文』と、4月21日(日)千穐楽の午前の部『鳥辺山心中』『義経千本桜 川連法眼館の場』を観ることができました。
市川亀治郎改め第四代目市川猿之助の襲名披露公演です。

4月2日には、第5代目歌舞伎座がオープンしたこの時期に、金比羅歌舞伎に出演する第四代目市川猿之助の心意気に期待しました。

4月20日は肌寒く、開場前の列に並んでいる間に雨が降り始め、鼠木戸口に入ってホッとしました。

20日は肌寒く、午後からは雨

天井に雪が用意されている

最初は『京人形』、華やかな舞台です。
名匠左甚五郎が、見染めた太夫にそっくりに掘った京人形が実際に動き出すという話。最初はぎこちなく動いていたが、人形の懐に手鏡を入れたとたんに女らしく動き始めるというユーモラスな内容です。

『袖萩祭文』は、人間関係が非常に複雑な仇討連鎖の物語で、平安末期の戦争時、袖萩と敷妙という姉妹がそれぞれの夫のことで敵味方になってしまう悲劇です。
舞台および客席全体が雪吹雪に覆われ、全編悲しみに打ちひしがれる内容で、袖萩の父は切腹、袖萩は自害、さらに袖萩の夫は妹敷妙の夫源の義家を殺そうとするが、その幼い娘お君が止めます。やはり歌舞伎は最後に救いがあります。

翌日の千穐楽は、前日の雨天から一転して晴れ、町長や観客や役者達によって餅つきが行われ、周辺の観客たちにも餅がふるまわれて、私もおすそわけをいただきました。

千穐楽の餅つき


『鳥辺山心中』は、愛之助演じる若い侍の半九郎が、ひょんなことから朋輩の市之助の弟を殺してしまい、一緒になろうとしていた遊女お染と共に死を決意して鳥辺山に向かうという内容で、全編に虚しさ漂います。
義太夫三味線に加え、黒御簾の中から泣くような胡弓の音色が印象的でした。

最後は、いよいよ猿之助の『義経千本桜』。
静御前の初音の鼓を(親狐の皮でできているために)親と慕う子狐が化けた忠信と、本物の忠信を猿之助が早変わりで演じます。
最後には、狐ということがばれて元の姿に戻り、鼓を抱きかかえながら宙乗り(懸筋)を使って桜吹雪とともに山に帰るシーンが、これぞ芝居小屋という見応えのある舞台です。

終演後、昨年回り舞台を支えるロールベアリングが外れてしまい、その修繕の跡を見に奈落に行きました。人が舞台上で動くと舞台はかなり揺れ、ロールベアリングにも負担が大きいことを感じました。江戸時代の釘を使った鴬張りの床も舞台上手側で、キィーキィーとなっていました。

江戸時代の釘を使った鶯張り

屋根はかわら葺


帰途、うどんの『たぬき屋』に行くと、先ほどまで出演されていた義太夫三味線の野沢松也さんがいらっしゃって、気さくにお話をしていただきました。古典だけでなく子供も楽しめる物語を浄瑠璃風に作曲をして演奏会をしているそうです。

2013/05/10

劇団ヴィエルシャリン公演『マネキン人形論』


4/26シアターX(カイ)に行ってきました。シアターX+ポーランド広報文化センター主催のポーランドの劇団ヴィエルシャリンの公演で、原作:ブルーノ・シュルツの『マネキン人形論』をピョトル・トマシュクが脚色・演出したものです。

舞台はまず暗く、青白く、そして太い材木でできた格子の中で主に展開されます。中には様々な神経質そうな細い金属でできた機械があります。マネキン人形論を講義するマネキンのような父親、屈強な男が演じるマネキンのような女中、ひ弱な息子が登場します。ファシズムがつくりだした世界、マネキンの様にしか生きられない世界を表現しているようです。格子の外では、ソビエト兵はポーランド人を、ナチスドイツ兵およびその手下のポーランド人はユダヤ人を探しています。最後に、父親は飛行機のような謎の機械に乗って逃避しようと夢想する救いがない世界です。

公演後に演出家・俳優を交えてアフタートークが開かれました。テーマが重かったためか、演出家のトマシュクは観客の質問に熱心に答え、演劇の役割を力強く語っていました。終了したのは10:20、まだ話し足りないような感じ様子でした。

帰り、空を見ると透明感のあるすがすがしい満月がありました。

日本騒音制御工学会春季研究発表会(2013.4)の発表



建築音響研究会の翌日4月23日(火)に、国立オリンピック記念青少年総合センターで騒音制御工学会の大会が開かれ、共同研究者の堀内さんが『高性能乾式遮音二重床の開発 その2 築40年超RC集合住宅における測定結果』と題して発表いたしました。

昨年はUR都市機構の八王子の技術研究所の実大実験棟で行ったものを発表したのですが、今回は、実際の築40年を超えるストック住宅の実験棟を用いて実用化実験を行った結果を発表しました。

現在、100万戸も存在するストック住宅の再生は社会的な要請であり、このような住宅に対応できる乾式二重床が早急に求められています。
従来の乾式二重床のほとんどは、スラブに設置すると重量床衝撃音はスラブ素面よりも悪化してしまいます。遮音二重床と言っても悪化の度合いが小さいというもので、よくなるというものではありませんでした。スラブ厚が薄い40年ほど前のストック住宅ではなおさらです。

今回開発した二重床は、昨年発表したものをユニット化し、工期短縮や工費を押さえるための改良を行いました。このユニット化したHelmholtz共鳴器を有した乾式二重床を用いて、スラブ厚110mmのストック住宅で重量床衝撃音を10dB低減することができました。今年は理論的な裏付けもできたことで、実用化を目指す所存です。

当日のプログラム(PDF)はこちら


建築音響研究会(2013.4)の発表


4月22日(月)、音響学会の建築音響研究会が、東京の田町にあるキャンパス・イノベーションセンター東京で開かれ、『Helmholtz共鳴器を有する高性能乾式二重床の開発-2質点系モデルに基づく検討-』の発表を行いました。発表は、共同研究者の神奈川大学の安田先生です。
この2年間、UR都市機構と共に『高性能乾式二重床』の開発を行ってきましたが、その高性能の理由について、2質点系の運動方程式を解いて説明しました。
この床は、63Hz帯域において、重量床衝撃音がスラブ素面より約10dB低減します。

2質点とは、支持脚の防振ゴムと床下空気層によるばねで支持された二重床の質点と、ヘルムホルツ共鳴器の中空部をばねとして、共鳴管の中の空気を質点としたシステムを指します。
2質点系ですから共鳴周波数を二つ持ち、今回開発した床では約25Hzと約90Hzにあり、その間の63Hzを含む周波数帯域では、振動伝達率が小さくなります。いわゆる動吸振の様な仕組みで、二重床の振動を押さえることで、床衝撃音を低減します。

安田先生のHelmholtz床の理論的な検討により、どうすれば良い性能が得られるかが検討しやすくなりました。Helmholtzの共鳴器は、自由空間にある場合には、その共鳴周波数はHelmholtzが1862年に発表した理論的な計算方法と一致しますが、床に用いた場合には、共鳴管を挟んで中空部と床下空気層との連成系になってしまい、どの周波数で効果的か簡単には予測できなくなってしまいます。今回の理論的な展開で、高性能二重床の開発が大きく進歩したと考えています。

当日の開催報告(PDF)です。


2013/04/30

丸山純子氏による『はなおくり-第七金星丸 2013』

BankArt Under35/2012がBankArt StudioNYKで2013年3月22日から4月14日(日)まで開かれ、最終日に行ってきました。目的は艀・横浜ボートシアター第七金星丸の屋根をキャンバスにした丸山純子氏による『はなおくり-第七金星丸 2013』です。

艀の約8m×30mの屋根いっぱいをキャンバスに粉石鹸絵具で花の絵を描き、その後雨が降って次第に消えていく様子を写真で撮影したものです。実際に描いたものを写真でなく見てみたいと思いましたが、移ろいゆくものの愛おしさが表現されていて、また形の定まらない波に浮かぶ船劇場の屋根に描かれたことにも感じるところがあります。

雨で消えてゆく花も、ふねの中で行われている形のない演劇・音楽、双方とも愛しく、記憶の中にしか残らないものです。良い記憶を積み重ねて生きたいと思います。


丸山純子展カタログより
(発行 BankART 1929)

2013/04/11

ヴィトルド・ルトスワフスキ生誕100周年記念コンサートと杉原玄一郎オーボエリサイタル Epitaph


3月25日(月)、紀尾井ホールで開かれたコンサートに行ってきました。ポーランド広報文化センターの主催です。曲目はルトスワフスキの「弦楽四重奏曲」、ショスタコーヴィッチ「弦楽四重奏曲第8番ハ短調」、マルコヴィチ「弦楽四重奏曲第3番」、シマノフスキ「弦楽四重奏曲第2番」で、20世紀ならびに21世紀に作曲された曲です。

演奏はルトスワフスキ・カルテットで、ルトスワフスキの名を冠した弦楽四重奏団です。
第二ヴァイオリン担当のマルコヴィチは作曲家(30代前半)でもあります。

ルトスワフスキは1913年1月25日生まれで、今年で生誕100周年、1994年に亡くなっているので、つい最近まで活躍されていた作曲家です。ポーランドに生まれ、1931~33にはワルシャワ大学で数学を学び、1932年にはワルシャワ音楽院に入学して、1936年に卒業。1939年大戦勃発ですから苦難の青春の時代を想像します。

曲目は現代音楽ですが、構えて聴かないといけないようなものではなく、ショスタコーヴィッチも含めて、柔らかい音が中心でした。いずれもいろいろなことを想像しながら、何を伝えたいかなどを思いながら聞きました。
曲目ルトスワフスキの弦楽四重奏曲は、勝手に想像するに、地球に生命が誕生して、それが滅びて、またそれが繰り返されているようなことを感じ、生命に対する愛おしさを感じます。



3月30日(土)、杉原玄一郎氏のデビューリサイタルがトッパンホールで開かれました。
杉原氏はボストン留学時代に、指揮者で友人のキンボー・イシイ・エトー氏の友人だったために、日本でのキンボーのコンサートでよくお会いしていました。

リサイタルは、ルトスワフスキの作曲した曲名の「Epitaphエピタフ」と名付けられていました。演奏曲目はバッハの「ソナタ変奏曲変ホ長調BWV1031」、プーランクの「オーボエ・ソナタ」、ルトスワフスキの「オーボエとピアノのための墓碑銘(エピタフ)」1979年作曲、シルヴェストリーニの「オーボエのための6つの練習曲」より第一番、スクリャーピンの「ロマンス」、クララ・シューマンの「3つのロマンス作品22」、ほかアンコール曲数曲。杉原玄一郎はミシガン大学で分子生物学を学んだ後、ニューイングランド音楽院に入り直したとのこと。ちょっとルトスワフスキに似ています。

トッパンホールは満席で演奏も次第に乗ってきて、エピタフの難曲を自信をもった力強いオーボエの音で演奏されていました。また聴きに行きたく思っています。

JATET FORUM2012-13


「東日本大震災による劇場・ホール被災調査報告―劇場・ホールにおける防災・安全・技術(その2)-」と題して、3月27日(水)座・高円寺劇場の地下2階のホールで開かれました。
開場から満席で、大震災による劇場の被害また復興についての関心の高さを感じます。

劇場・ホールにおける震災対応に関する調査アンケートでは、全国の劇場など2247館に発送して1024館から回答が有り、回収率は46%と非常に高い結果となったそうです。特に被災4県(岩手、宮城、福島、茨城)の配布数162館のうち、93館から回答があり、回収率は57%であったとのこと。建物・設備の被害状況では、768館(75%)が特に被害はなかったが、527館は何らかの被害があったという結果となりました。被害の内容は、「内外壁・床の亀裂・破損」、「客席天井の落下」、「外構被害」、「ガラスの破損」、次に「給排水管の破損・ズレ」、「空調換気ダクトの落下」、「機械設備の破損」、「舞台設備(機構・照明・音響)の被害」などです。

中でも注目されていたのは、ミューザ川崎シンフォニーホールの天井落下とその復旧についての報告でした。天井は音響効果のために、FGボード厚8㎜のボードが5枚重ねられて構成されていました。FGボード8mmは13.6kg/m2あり、5枚では68kg/m2になります。地震発生時は、幸いにもホールでイベントは行われていませんでしたが、オルガニストの松居直美さんが練習をされていたそうで、地震直後に脱出して無事だったとのことです。天井の落下原因は、吊ボルトの先端のフック状の金物が変形し、脱落したことによって落下したと結論付けられたとのこと。今回の改修で天井裏に2段に大きな構造体を設置して、それから吊ボルトで天井下地をボックス型の金具で固定する方法としているとのこと。天井には2000galの加速度が入力すると想定して安全を確認しているようです。身が引き締まる思いで報告を聞いていました。

2013/03/13

横浜ボートシアター第二回語りの会


昨年12月23日(日)に船の劇場で試演会がありました。
演目は宮沢賢治作『どんぐりと山猫』、小熊秀雄作『長長秋夜(じゃんじゃんちゅうや)』、遠藤啄郎作『創作影絵人形芝居~極楽金魚』いずれも筋の通った生き方を暗示させる力強い物語です。

次回は3月16日(土)、17日(日)16時で、人形劇団ネンネンネムネム!ねむり鳥の『私と遊んで』、原作宮沢賢治作 仮面劇『土神と狐』の試演会が船の劇場であります。



船の劇場内部(2012年12月23日)

2013/03/12

西湖いやしの里根場のコンサート


3/1~2に、山中湖に旅行に行きました。
2日は、富士山全貌を眺められるよい天気で、富士五湖を巡ろうと出発し、河口湖、西湖、精進湖、本栖湖と回ってきました。
西湖の近くにある野鳥公園の喫茶店に寄った際に『西湖いやしの里根場』で、ひな祭りイベントとして二胡と三線のコンサートが開催されるとチラシで知り、時間もあるので向かってみました。

そこは西湖の西の端で、民家園のように茅葺屋根の農家がたくさん山肌に並んでいる里山の様な場所で、しかも富士山が目の前にあり、素晴らしい風景でした。
農家の一軒一軒は、土産物屋、蕎麦屋、工芸・陶芸を行う場所など。また、ここの村の由来が書かれた記念館もあり、ここは昭和41年に大土砂災害で村が壊滅した場所と書かれていました。
改めて日本は自然災害が厳しい国だと思いました。目の前の富士山の雄大さも、厳しいからこその美しい景色だと感じます。

壊滅した村を復元し、観光地として再生させたことは素晴らしく、観光バスも何台もきており、海外からのお客さんも大勢来られていました。
天ぷらそばを食べてから、男性3名の二胡・三線・エレキドラムのコンサートをゆったり聞きました。3月11日で大震災から2年になりました。
日本には自然災害から立ち直るための知恵が改めて必要だと感じます。

西湖いやしの里根場

山中湖からの富士山

2013/03/07

○の音場を楽しむ会Ⅲ


浜松に一昨年できた球形のピアノ室にて、音場を楽しむ会というコンサートが開催されています。竣工時と、昨年、そして今年2/11が3回目となります。集まったのは、施主のご家族、設計の大野さん、施工関係者と私の計10名ほどです。

竣工時は、球形のピアノ室での初のコンサートということで設計者として音響には期待と不安がありましたが、とても気持ちの良い音で、皆さんにも大変気にいっていただくことができました。今回も楽しみに伺いました。しかも2年点検、一区切りです。とても丁寧に使っていただいているので美しい状態が保たれていました。

コンサートを終えてから、ワインとおいしい料理で会食会が開催されました。皆さんとても親しくなっていて、音楽のこと、趣味や建築(特に大野さんが現在担当している建物など)のこと、浜松のおいしいレストランや木造の城門の建設のことなど話題も様々に楽しく過ごさせていただきました。


球形のピアノ室外観

劇場通い


今年の劇場通いは歌のコンサートから始まりました。以下最近行った公演の紹介です。


スロバキア国立オペラ公演

1月20日オペラ椿姫を、1月27日オペレッタ「メリー・ウイドゥ」を杉田劇場で見ました。
一昨年(2011年)の1月、同じスロバキア国立オペラによるラ・ボエームを見て感激し、売りだされて即切符を購入しましたが、正解、いずれも満席でした。
一流のオペラ歌手、入場料3500円、席数300の組み合わせは、なかなかオペラにはないものです。登場人物は3~4名、オーケストラはなく、舞台下手にグランドピアノ1台、後はスロバキアの人の日本語による解説、舞台装置はテーブルや椅子だけ、幕設備はなく、音響反射板設置状態による公演です。いずれも社交界を舞台にしているので、グランドオペラの華やかさには欠けるのですが、300席の劇場、舞台が近く、椿姫のヴィオレッタの悲恋やメリー・ウイドゥの億万長者の未亡人ハンナの恋がよく伝わってきます。歌声は胸を震わせるほどの響きで感動ものでした。


西方音楽館の歌のコンサート

2月17日西方音楽館に行ってきました。栃木市西方町にある、農家の納屋を改造した小さなコンサートホールです。その隣は蔵を改造してオルガンの小ホールになっています。いずれも音響設計は著名な永田穂です。建物も、古い建物をきれいに改修されています。竣工してからちょうどホールの1周年だそうです。歌はメゾソプラノ大塚道子で、日本の歌、シューベルトなどの歌曲、作曲家猪本隆の歌曲で構成されていました。席は70席だそうですが、補助の丸椅子も出して、約80名の満席でした。最後は観客も一緒に『どこかで春が』などをうたいました。観客はほとんどが女性で、合唱団に所属しているようでした。

西方音楽館 内部

西方音楽館 外観



二期会オペラ公演

2月24日東京文化会館で二期会の喜歌劇こうもりを見てきました。幕が上がると、舞台の上1mほどのところに柱で持ち上がられた状態の四角い大きな箱が設置されていて、それが館の広間と見立てられています。場面が変わる時には、横にスライドして、別の同じような箱が出てきます。オペラの筋もドタバタ劇なのですが、演出もなかなかのもので、例えば、歌手が部屋に入ってきて、窓辺にあるワインの瓶を、1m下の舞台面にうっかり落としてしまいます。その瓶はその後のワインを飲むシーンになくてはならないものようで、時々取りに行かないとつぶやき、歌手が意を決して部屋から1m下の舞台に飛び降りますが、今度は1m上の部屋に戻るのに腹が邪魔しながらも必死でよじ登ります。最初は裏方が助けなくていいのだろうかと勝手に心配までしてしまいましたが、その後何度もこのようなシーンが出てきて、演出ということが分かります。

始まりと終わりには歌手たちが観客席に現れて、舞台袖の花道から舞台に上がって行きます。またオーケストラピットも深くなく、指揮者も腰から上がよく見え、また舞台と一緒に演技もしています。舞台全体が観客席と一緒に楽しもうという意思が感じられます。
また部屋に見立てた箱も現実と異なる夢の世界を象徴している感じで、最後は紗幕が飛ばされると、箱の後ろに劇場のダクトやキャットウオークなどが見える現実の世界が見える仕掛けです。
音響的にはこの箱は声を前に出す反射板の役割もしています。声が前に出てきて2000席のホールでも大きく聞こえます。