2009/11/25

つくば古民家の書院でのコンサート

元禄時代(1688~1703)に建設された、つくばにある古民家の書院造りの空間にて、第4回つくばフクロウの森コンサート「メゾソプラノの世界」と題して、11月15日17時半からコンサートが有りました。

この古民家でクラシックコンサートを行うにあたり、今年の夏に、音響的に何か工夫ができないかとご相談をいただき、いくつか提案をし、実験を行ったりしながら検討いたしました。障子を除く、襖を板襖にする、廊下に屏風を立てる、畳を除いて板にするなどで様々に音響的に、室内を変化させてみました。

このコンサートは、街づくりの一環として行われているようで、主に近隣の方々が多く訪れていました。出演は、メゾソプラノ西村佳子氏、ピアノ江澤隆行氏です。

ホームコンサートなどといって、一般の住宅の居間などで行われるコンサートもありますが、この古民家の空間は、しっとりとしていて、日本庭園とあいまってとても美しい空間です。今回のコンサートは、さらに出演者と主催者とで相談しながら、屏風を立てたり、畳をはずしたり、工夫されたようです。
また主催者は、メゾソプラノにこだわり、声の美しさや温かい音色が表現されるよう選んだ曲のようでした。

曲目は、ヘンデルのオペラ「優しい眼差しよ」、フォーレの「リディア」、「夢のあとに」、西條八十作詞の「お菓子と娘」、野口雨情作詞の「七つの子」、北原白秋作詞の「びいで びいで」、ミュージカルから「夢やぶれて」、「一晩中でも踊れたら」などでした。ピアニストが曲の説明をしながら、また観客も地元の人がほとんどのため馴染んだ感じの良い雰囲気でした。音響的には、ピアノの下は畳を除いて板畳を敷き、演奏者の後ろには屏風折れの音響反射板を設置していました。歌も音も、とても親密感があり、素晴らしかったです。



 


10月には、この場所で篠笛と能管のコンサートが行われ、とても評判が良いため再演になるとのこと。また11月28日(土)には、弦楽四重奏のコンサートが計画されており、こちらも人気で、切符は売り切れとなり、急遽マチネを追加したようです。弦楽器に対しては、響きが不足するのではないかと気になりますが、どうなるでしょうか。


10月23日には、旧東京音楽学校奏楽堂で行われたソプラノのコンサートに行きました。ソプラノは田井中由幾子氏、ピアノ伴奏は青井彰氏で、そのほか芸大卒の若い演奏者も出ていました。曲目は、北原白秋、土岐善麿、三好達治などの曲でした。

この奏楽堂は、明治23年(1890)に初代学長の伊澤修二が建設したもので、空席の残響時間は1.1秒程度、コンサートホールとしては短いホールです。伊澤は、西洋音楽と日本の音楽の良いところを合体して、音楽を作ろうとしたようでしたが、その伊澤が目指した曲目(歌曲)が演奏されたのではと思って聞いていました。おそらく当時は、歌曲を対象にしたようで、音響特性も残響のそれほど長くない空間が好まれたのではと思います。最近行っている芝居小屋の音響空間の研究の延長のような感じで、興味をもって聞きました。

2009/11/05

「天地人」のかしも明治座でのコンサート

先日ブログでお知らせいたしました、ソウル&ビートユニット「天地人」のライブを見に、11/3(月)岐阜県の中津川市加子母(かしも)にある木造芝居小屋の明治座に行ってきました。

「天地人」は、元「オフコース」のドラマー大間ジロー氏率いる、ソウル&ビートユニットで、和太鼓(大沢しのぶ)、津軽三味線(黒澤博幸)、パーカッション(大間ジロー)のバンドで構成されています。

明治座は、落ち着いた里山のなかにある芝居小屋で、2年前に音響測定に来たことがあり、懐かしいところです。




内部は、天井が格天井の板張りで、木がふんだんに使ってあり、いかにも木の産地であるこの地域のものだと感じます。



開始1時間前に到着しました。


拍子木の合図で引き幕が開かれ、コンサートが始まりました。すばらしい津軽三味線や和太鼓の歯切れの良いリズムに引き込まれました。木造芝居小屋は、いい空間ということもあらためて感じました。


われわれ音響技術者は、コンサートホール用の響く空間と、演劇や講演用の響かない空間の二つがあると今まで考えてきました。しかし、和太鼓や三味線やドラムのコンサートには、このような芝居小屋のような響かない空間がよいようです。
ライブツアーのプロデューサーの方が、今までは一般の多目的ホールで演奏すると、和太鼓の音圧が大きすぎて、うまくいかないとおっしゃっていました。
よく使用されるグラフで、B.F.Bay(他2名)が作成した「室の種類、室容積と最適残響時間」の中にあるコンサートホール用の最適残響時間の曲線は、「クラシック用コンサートホール」と書き換えないといけないのではと思います。

11月3日は、ちょうど寒波が訪れた日でした。天地人のメンバーは、秋田から寒波を連れてきたと言うほど舞台の上は寒そうでしたが、観客は地元の人が大部分で、この芝居小屋の隙間風には慣れた感じでした。
一般的なホールと比較すると音の返りが少ないので、自分の演奏音が聴こえにくく、そのためか最初の2曲は特に緊張感が感じられ、それがまたライブ感があって素晴らしかったです。

これまで天地人は、10月4日(日)内子座、10月18日(日)永楽館、そしてこれから、11月21日(土)九州の八千代座と23日(月祝)嘉穂劇場にも公演予定だそうです。宝船ツアーと銘うっての全国芝居小屋コンサートです。各地域で、すばらしい宝を見つけてきてください。

2009/11/02

歌舞伎座の音響調査

先日、歌舞伎座の音響測定をさせていただきました。

現代の伝統芸能の殿堂である歌舞伎座の音響を測定することで、これまでの全国の木造芝居小屋の音響データとの比較を行うことができます。そのため、歌舞伎座に調査の依頼を行い、深夜の空き時間を利用して測定させていただくことができました。ご協力いただき、大変感謝いたします。

当日は、神奈川大学寺尾研究室および木造劇場研究会のメンバーとともに測定いたしました。
調査場所は平土間席のみ、ダミーヘッドによるインパルス応答の測定を中心に、残響時間や音圧分布などを測定いたしました。

500Hz帯域の残響時間は1秒強、客席空間の室容積はおおよそ10000m3ですので、室容積と最適残響時間のグラフにプロットすると、木造芝居小屋と同様に、Knudsen and Harrisの講堂に好ましい曲線の近くにあります。
客席空間が大きいにもかかわらず、残響時間がこのように短いのは、歌舞伎座復興記念『歌舞伎座(非売品)』の中に、建築家の吉田五十八が、壁面のかなりの部分を『最新の吸音材料によって音響的効果が考えられており、』としたと書かれており、その結果と思われます。歌舞伎座に内部は、壁に菱形の文様のある壁材が使用されていますが、それが戦後の最新の吸音材料のようです。



現在、歌舞伎座のデータに関しては、インパルス応答と無響室録音の音を畳み込んで音響シミュレーションも行っており、座席の違いで聞こえ方が異なっていることもよく分かってきました。今後、木造芝居小屋の音響特性と比較しながら、邦楽にとって好ましい音響空間を研究していく予定です。


話は逸れますが、吸音材といえば、先日港北にある家具店IKEAに行く機会がありました。売り場の天井のかなりの部分にはグラスウールが貼られ、また内 部の大きなレストランの天井は、格子状の視覚天井の上に、ロックウール吸音材が張られていました。最近各地に続々と作られている大型ショッピングセンター では、ほとんど吸音材が使われていないため、ざわざわと非常に騒々しく疲れますが、IKEAのレストランでは、落ち着いて会話をしながら食事をすることが でき、吸音材の大きな効果が表れていました。