元禄時代(1688~1703)に建設された、つくばにある古民家の書院造りの空間にて、第4回つくばフクロウの森コンサート「メゾソプラノの世界」と題して、11月15日17時半からコンサートが有りました。
この古民家でクラシックコンサートを行うにあたり、今年の夏に、音響的に何か工夫ができないかとご相談をいただき、いくつか提案をし、実験を行ったりしながら検討いたしました。障子を除く、襖を板襖にする、廊下に屏風を立てる、畳を除いて板にするなどで様々に音響的に、室内を変化させてみました。
このコンサートは、街づくりの一環として行われているようで、主に近隣の方々が多く訪れていました。出演は、メゾソプラノ西村佳子氏、ピアノ江澤隆行氏です。
ホームコンサートなどといって、一般の住宅の居間などで行われるコンサートもありますが、この古民家の空間は、しっとりとしていて、日本庭園とあいまってとても美しい空間です。今回のコンサートは、さらに出演者と主催者とで相談しながら、屏風を立てたり、畳をはずしたり、工夫されたようです。
また主催者は、メゾソプラノにこだわり、声の美しさや温かい音色が表現されるよう選んだ曲のようでした。
曲目は、ヘンデルのオペラ「優しい眼差しよ」、フォーレの「リディア」、「夢のあとに」、西條八十作詞の「お菓子と娘」、野口雨情作詞の「七つの子」、北原白秋作詞の「びいで びいで」、ミュージカルから「夢やぶれて」、「一晩中でも踊れたら」などでした。ピアニストが曲の説明をしながら、また観客も地元の人がほとんどのため馴染んだ感じの良い雰囲気でした。音響的には、ピアノの下は畳を除いて板畳を敷き、演奏者の後ろには屏風折れの音響反射板を設置していました。歌も音も、とても親密感があり、素晴らしかったです。
10月には、この場所で篠笛と能管のコンサートが行われ、とても評判が良いため再演になるとのこと。また11月28日(土)には、弦楽四重奏のコンサートが計画されており、こちらも人気で、切符は売り切れとなり、急遽マチネを追加したようです。弦楽器に対しては、響きが不足するのではないかと気になりますが、どうなるでしょうか。
10月23日には、旧東京音楽学校奏楽堂で行われたソプラノのコンサートに行きました。ソプラノは田井中由幾子氏、ピアノ伴奏は青井彰氏で、そのほか芸大卒の若い演奏者も出ていました。曲目は、北原白秋、土岐善麿、三好達治などの曲でした。
この奏楽堂は、明治23年(1890)に初代学長の伊澤修二が建設したもので、空席の残響時間は1.1秒程度、コンサートホールとしては短いホールです。伊澤は、西洋音楽と日本の音楽の良いところを合体して、音楽を作ろうとしたようでしたが、その伊澤が目指した曲目(歌曲)が演奏されたのではと思って聞いていました。おそらく当時は、歌曲を対象にしたようで、音響特性も残響のそれほど長くない空間が好まれたのではと思います。最近行っている芝居小屋の音響空間の研究の延長のような感じで、興味をもって聞きました。