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2014/06/30

幼稚園・保育園の騒音対策

 騒音制御工学会の会誌、騒音制御Vol.38 No.3 2014.6に、「保育空間の音響的現状」というテーマで、船場ひさお氏が記事を書いている。

 児童福祉法が昭和22年に制定され、昭和23年に児童福祉施設最低基準が制定され、今日の保育所制度の基礎ができたが、
「保育環境とくに音環境については「子どもはうるさいのが当たり前」という思い込みのもと、対策らしい対策が取られる事がなく、何十年もの歳月が経ってしまったと言わざるを得ない」
とあり、音環境についてはなおざりにされていたことがわかる。

 そして、実際の保育園の音環境の改善を実験した結果が報告されている。
 最初は、「床はフローリング、天井は化粧石膏ボード仕上げであり、フロア全体に子供の声が響いている状態」だったという。
そこで、天井に吸音フィルム※をハンモック風に吊り下げ、残響時間を1kHz帯域で1.0秒以上から0.8秒程度に、0.25秒短くなったとのこと。

 環境騒音が顕著に下がった結果は得られなかったそうであるが、保育士の方へのアンケートでは、対策によって、話しやすさや聞きやすさ、子供の寝つきなどに効果があった様子がうかがえる。
 この保育園ではさらに音環境を改善するための検討を加えているとのこと。やはり音環境というものは、改善の必要がある対象として意識をすることが重要と思われる。

 私も以前、保育園の音響調査を行ったことがある。
 その時の調査では、吸音材のない室内の園児の声は、連続して100dBほどあり、異様な騒々しさとなっていた。子供たちも保育士の方々も、音声が明瞭に伝達できないために、より一層大声になってしまうという状態であった。子供の成長にいい影響があるとは思えない。とにかく設計の段階で吸音材(一般的には岩綿吸音板やグラスウール化粧板など)を天井などに使う必要がある。
※有孔ダイノックフィルムにグラスクロスを積層した製品(3MTMダイノックTM吸音フィルムG 不燃認定)。

 幼稚園は建築基準法における「学校等」に含まれる。したがって内装制限の規制から除外される。そのため内装に木材も使用可能であり、例えば吸音材としてポリエステル繊維吸音板なども使用できる。ポリエスエル繊維吸音板はグラスウールと異なり、チクチクする繊維は無く、布団の綿と同じような柔らかな材料のために、子供の空間では使いやすい。

 また保育園は、幼稚園とは似た施設であるが児童福祉施設に相当するために、特殊建築物となり、内装制限が発生し、耐火建築物では3階以上で合計300m2以上、準耐火建築物では2階で300m2以上、木造などでは床面積200m2以上に内装制限がある。それ以下であれば、木材でも、またポリエステル繊維吸音板も用いることができる。現状の改善のために、建築基準法上の「壁の仕上げ」ではなく、吸音材を壁に掛ける「絵画」のように扱い、音対策をすることも考えられる。
参考例として、弊社の設計したトライビートスタジオの写真。