ヘルムホルツ共鳴器は、空洞部と頸部から成るツボのような形をしており、頸部の空気と空洞部の空気の共振によってエネルギーを消費する。そのため、現在では主に消音器として使用される。
聞き慣れたヘルムホルツという単語の扇風機に興味をもった。
音響技術者にとっては、ヘルムホルツの共鳴器は、有孔板やスリットによる吸音構造で良く知られている。また自動車のマフラーなどにも応用されている。
弊社では、ヘルムホルツ共鳴器を応用した高性能遮音二重床の実用化を目指して開発している。床下にヘルムホルツ共鳴器を仕込んだものである。
日本建築学会環境系論文集 V0l.79 No.698(2014年4月)に掲載されました
2013年建築学会北海道大会で発表しました
日本建築学会大会(東海)に参加してきました(2012年9月)
実はヘルムホルツ共鳴器の技術は古く、1862年(明治元年の6年前)に発表されている。ヘルムホルツはドイツの医学者で、「On the Sensations of Tone」という本を表して、ヘルムホルツ共鳴器の原理を紹介した。本の裏表紙には「ON THE SENSATIONS OF TONE as a physiological basis for the THEORY OF MUSIC」 ただしAlexander J. Ellisによる英文訳本による。
訳すと「音楽理論のための、生理学的根拠に基づいた音律の感覚について」といった内容になる。
序には肉体的な又は生理学的な音響学と音楽科学または審美学の境界で関連付ける試みと書かれている。
共鳴器については本書のかなりはじめの方に示されており、壺の様な形や筒の様な形のものが示されている。
その後、弦楽器の音律や、管楽器の音律や声、耳の生理学的構造、調和の妨害、ビート(うなり)、ハーモニー音楽、ペルシャやアラブの音楽の構造などについても書かれている。その最後の付属のⅡに問題の共鳴器の理論が示されている。
ヘルムホルツが共鳴器を開発した目的は楽器のチューニングのためであった。その共鳴器は下記の図のような形をしており、ドレミファに対応したサイズの違う共鳴器を作成し、チューニングの際にはaの開口部を空間にbの開口部を耳に差し込んで、楽器の音を聞いて、共鳴した時の周波数を確認していた。
On the Sensations of Toneより |
そのころ、ウィーンフィル(1842年)やベルリンフィル(1882年)、ロイヤル・コンセルトヘボー管弦楽団(1888年)などのオーケストラが結成され、ウィーン楽友協会ホール(1870年)、ウィーン国立歌劇場(1869年)などの有名なコンサートホールが開館している。大オーケストラのたくさんの楽器を同じ音律に調整する必要に迫られたのではないかと感じる。
詳しくは翻訳しないと理解できないが、東川清一著 「音律論 ソルミゼ―ションの探求」をみると美しい和音を目的に開発された純正律から、利便性を求めた平均律への移行過程で、ヘルムホルツは平均律の和音の問題点に警鐘を鳴らしているようである。