横須賀市の某マンションにおいて、フェルト・カーペットから
竹タイルへの改修工事を行うにあたって床衝撃音性能を
現状維持とするための音響仕様の提案と、工事監理を行った。
このマンションでは、仕上げをフローリングに改修することは
許可されておらず、もし改修する場合でも、フェルト・カーペット並みの
床衝撃音性能が要求されている。
住民が希望する仕上げ材は、浴室の脱衣室の床によく用いられる
竹のすのこ(商品名:竹タイル)のような材料であるが、
通常それをコンクリートスラブの上に直に張った場合には軽量床衝撃音が
現状より大きくなり、管理規約に合致しないことになる。
そこで乾式浮き床を提案し、その上に竹タイルを張ることにし、
フェルト・カーペット並みの床衝撃音遮断性能を確保することを目指した。
結果、工事前のフェルト・カーペットの状態で床衝撃音データは
重量床衝撃音はLH-55、 軽量床衝撃音はLL-35であったが、
乾式浮き床工事後、重量床衝撃音はLH-45、軽量床衝撃音はLL-30と、
目標を満足しただけでなく大幅に向上した結果が得られた。
(写真)軽量床衝撃音実験
この乾式浮き床は床衝撃音対策としてだけでなく、
マンション内の防音室(ピアノ室など)にも応用ができると考えている。
乾式浮き床構造とは、コンクリートスラブの上に適当な大きさの
防振板ゴムを適当な間隔で置き、その上にパーティクルボードや
制振材などを何枚も重ね、おおよそ100kg/㎡の浮き構造を構成して
1次固有振動数の目標を15Hz以下とし、可聴域周波数の音を
遮断する仕組みとなっている。
今回の1次固有振動数の測定結果は無載荷で16.4Hzでほぼ
目標通り、測定結果はバングマシン、インパクトボール、
タッピングマシンともに31.5Hzより高い周波数帯域で床衝撃音が改善している。
仕上げ材は竹タイルの下にフェルトを敷いた場合と、
敷かない場合の実験を行ったが、敷かない場合の軽量床衝撃音は、
LL-40であった。
これはフェルト・カーペットの軽量床衝撃音遮断性能を下回るので、
今回の条件には当てはまらず使用できないが、LL-40は建築学会の
評価では『特級』の 評価が得られているので、一般的には
使用できる性能である。
今回の浮床工法で、この値を目標とした場合には、
フローリングや場合によっては石などの仕上げもできる可能性があると考える。
歩き心地もゆらゆら揺れるような感じではなく、しっかりとした踏み心地である。