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2020/09/30

お囃子のリズムについて

毎年10月初めに行われている地元荏田町の剣神社秋の例大祭、お神輿(荏田では子供神輿)も新型コロナの影響で中止になってしまいました。やはりこの時期にこのお祭りの音を聞けないと寂しい気がします。例年のお祭りは、関係者が集まって、宵宮(前夜祭)があって、仮設舞台で祭囃子を演奏し、翌日朝から荏田の町を地区ごとに、子供たちを集めて神輿を担いでいる後ろから、お囃子を演奏しながら回ります。老人施設ではお囃子のグループが回ってくるのを入り口広場で待ってくれていて、お囃子や「ひょっとこ」や「おかめ」などの面踊りを披露します。荏田の町をほぼ全域回ると、ここがわが町という印象になります。

若林忠宏 著 『日本の伝統楽器 知られざるルーツとその魅力』という本(p.254)を読んでいましたら、「祭り囃子以外の日本音楽にビート感がない理由は?」という章に(主題の内容ではないのですが)、

「なぜ『祭り囃子』には、例外的に『テンポ感・ビート感』が持続するのか。それは、その源流にシャーマニズムがあるからに他なりません。」

と書かれていました。

 著者が世界の各地のリズムを紹介している中で、日本の祭り囃子のリズムは以下のように書かれています。実際に、荏田町のお囃子もこのようなリズムです。


お囃子(本では祭り囃子)の練習で先生が太鼓を打っている時に、たまたま親に連れられて来ていた5~6歳の子供が練習用のタイヤを叩いていると、次第に乗ってきて踊りだす勢いでタイヤを叩き始めて驚いたことがあります。

祭り囃子の「源流にはシャーマニズムがある」とされているように、たしかに体のリズムを活性化させるような不思議な力があります。祭囃子は持続する太鼓のリズムと感情を表現する篠笛と相まって祭りが盛り上がってくる原動力となります。今年はそのチャンスがないのは大変寂しいですが、コロナに負けず元気を出さねばいけません。来年のために練習を続けようと思います。

2020/09/20

音響学会秋の大会に参加『富岡製糸場 西置繭所保存修理工事 ガラスホールの音響特性』

2020年秋季研究発表会が9月9日(水)から11日(金)にありました。

当初は東北工業大学八木山キャンパスで行われる予定でしたが、新型コロナのために初めてオンラインで開催されることになりました。

講演申し込み6月12日、原稿提出は7月14日でしたが、それから間もなく音響学会からオンライン(Zoom)開催の詳細が届きました。



私の発表は、初日の建築音響部門の最初の発表で少し進行が手間取りました。発表が始まる時間に待機していましたが、開始の指示がなく、こちらから確認をして1~2分遅れてスタートすることになり少し慌てました。多少早口で話したのですが、時間を調整してくれていたようで持ち時間12分間のうち2分残して終了しましたが、無事に発表を終えることができました。オンラインだと顔を見て始められないために、なかなか難しいところもありました。

聴衆は100名ほどと、多くの方に見ていただくことができました。ただ画面の並んでいる参加者のお名前を見ると、知らないお名前も多く(顔を見れば知っている人もいらっしゃるかもしれませんが)、反応もわからないのは不安なところでもあります。

発表のタイトルは『富岡製糸場 西置繭所保存修理工事 ガラスホールの音響特性』でした。

富岡製糸場は、明治5年(1872年)に明治政府が日本の近代化のために設立した模範器械製糸場で、敷地内には多数の歴史的建造物があり、国宝も3棟含まれます。建造物の多くは老朽化が進み保存修理と耐震補強が必要となりました。
国宝の1棟、西置繭所の保存整備工事を行うにあたり、施設を有効に保存活用するために、建物内部に耐震補強の鉄骨フレームを組み、建物内部を見学できるガラス張りのホールが誕生しました。
その音響設計の部分を弊社で担当いたしました。

耐震補強のために鉄骨の柱を内部に建てて、建物を耐震補強するのですが、その細い柱を捕捉するために、その柱に張ったガラスも耐震要素として設計されています。
そのガラスで囲まれた空間が建物内部を見学できる博物館のような空間で、内部では講演や演劇・コンサートもできる空間になっています。
また内部を空調しても歴史的建造物の建物内部を空調の空気で傷めないようにもなっています。

一般的に考えるとガラス張りのホールは、お風呂のように残響が響いてしまうのではと思われがちですが、幸い天井が低いため、人が吸音材となると残響的にはちょうどよい空間になりました。

音響設計側で検討したことは、一部の壁に吸音材を張るなどではなく、いかに拡散できる壁を作るかということでした。詳細は発表資料を下に掲載いたします。

発表後の質疑の際にはまず座長から質問があり、なぜ残響時間の分析を一般的に行っているT-30で行わなかったのですかというものでした。
測定当日は雨が降っており、隙間からノイズがあったためと答えたのですが、さらに付け加えるならば63Hzまで分析しているためT-20で分析する必要があったと答えればよかったと思っています。
もう一つは、文化財の工事で何か苦労したことはないかというものでした。正確には音響設計は与えられた条件を大きく変更するものではなかったので、意匠や構造の担当者の苦労とは大きく違いがありましたが、ガラスを覆い隠すカーテンなどで調整することはしないということが最初のテーマでした。

音響学会の発表は終了しましたが、まだコロナの影響でなかなかこのガラスホールで演奏会も開けていないのではと思います。私は音響測定の際に篠笛を吹いてみましたが、気持ちよく響いていました。また音声も聞きやすい状態で聞こえました。よく響き、よく聞こえる珍しいいホールと感じています。

以下は発表時パワーポイントです。