2011/02/14

「○の音場を楽しむ会」というコンサート

1月7日のブログでご紹介した球形ピアノ室の施主でありピアニストの山本玲さんが、2月11日(金祝)にコンサートを計画され、このプロジェクトに参加された建築家の大野さん、建設会社川島組の皆さん、音響技術を担当した私をご招待くださり、20名ほどが集まって開催されました。

コンサートは「○の音場を楽しむ会」という名前でしたが、とにかく皆さん同様、ピアノが入ってどんな音になるのか気になっていましたので、不安半分楽しみ半分で参加しました。
音響技術者には、球形や立方体は音響障害があるために避けるべき形という観念があります。その先駆的建物は、1871年(明治4年)にロンドンにできた、平面的には楕円形で天井はガラス製のドーム型のロイヤルアルバートホールです。フラッターエコーなどの音響障害により、音響学に貢献した有名な建物です。もちろん英国国歌を演奏する場所、またビートルズなどのコンサートが行われたホールとしても有名です。またその前年1870年(明治3年)には、世界で最も美しい響きといわれているウイーンムジークフェラインザールができています。今回のこの球形のピアノ室もちょっとおおげさですが歴史的な出来事のように感じます。

音場の確認という意味で、設計の大野さんが激しい曲と静かな穏やかな2種類の曲の演奏を山本さんにお願いしたとのことで、ショパンの「革命」、と辻井伸行の「川のささやき」が演奏されました。さらにピアノの蓋を開けたり、閉めたりして演奏することも試してみました。蓋を開けたほうが大きな音になりますが、音の大きな力強い「革命」でも音は割れたりせず、また一つ一つの音がきれいに聞こえていました。さらにいえば、音の一つ一つが自己主張していて、音響技術の言葉ではありませんが華やいで聞こえます。「川のささやき」も、さざ波が次から次へと岸辺に押し寄せているような情景が浮かぶきれいな曲です。竣工当初はこのような高い音はキンキンひびいて耳をふさぐような感じだったようですが、調律師にハンマーを調節していただいたおかげで、きれいな音になっていました。
このような挑戦的なプロジェクトに参加できて本当によかったと思います。設計の大野さんのデザインコンセプトが一貫していたことが、いい空間ができた原因と感じています。

撮影:川島組 大畑さん

私は横浜から車で行ったのですが、横浜は朝から結構激しい雪で、御殿場を抜けるまで雪が続いておりました。天気予報では、夜までには神奈川西部は積雪15cmと言っていましたし、次の日も雪の予報でしたので、どうなるかと心配しながらでしたが、音が良かったので安心し、また帰りも御殿場あたりでは雪は降っていましたが、積雪はなく気持ちよく帰りました。

これより少し前の2月6日(日)に、ACT環境計画が主催するアントラクトで、小川典子のピアノコンサートがありました。曲目はベートーベンのピアノ・ソナタ第30番、31番、32番を休憩なしに集中して聞くコンサートでした。アントラクトのホールは住宅の居間空間で、2層吹き抜けていますが、コンサートホールとは大きさが違います。力強い音は大変力強く、柔らかい音は柔らかく、明確に聞こえてきます。音楽家は神経を使って大変でしょうが、素晴らしい力の入った演奏で感激しました。

この二つの空間は、大きさはどちらも大きくは違いがありませんが、音の雰囲気は多少違いがあるように思いました。アントラクトの空間は、平行の面を極力なくして、響きを作りました。したがって素直な感じです。球形のピアノ室は、場所によって多少違いがあるかもしれませんが、個性的で、華やかな感じがしました。設計の大野さんは大聖堂をイメージして設計したとおっしゃっていましたが、その様にちょっとキラキラした感じがあります。
しかしいずれの空間も音楽家と非常に近くで聞くことができ、音量感や臨場感が素晴らしく、大きなコンサートホールとは全く違うこのような空間での体験は、なかなか得難いものだと思っています。

山本さんが、「革命」の曲はショパンが、ロシアによるワルシャワ侵攻に抗議して作曲したと説明されていました。またコンサート当日の2月11日は民衆革命によってエジプトのムバラク政権が崩壊したことでも記念的な日になりました。このピアノ室にたくさんの人がいらして音楽を楽しんで行っていただけるようにと願っています。

このコンサートの会の模様は、山本さんの「感性をはぐくむピアノ教室≪sfera-musica≫」のブログ、および川島組さんのブログ建築家大野さんのブログにも紹介されています。