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2022/05/28

空調および冷凍室外機の騒音対策

 

 家庭用のエアコンや業務用のエアコンは、多くの場合には室内機と室外機に分かれています。室外機には空調用の室外機と冷凍用の室外機等がありますが、いずれも騒音の大きなファンとコンプレサーが内蔵されているため、音が大きく、外に置くように作られています。業務用のものは、大きなものでは70dBAほど出るものもあります。設置場所は地面に置く場合もあり、また屋上の一部に設置する場合もあります。稼働時間は使用する時間帯だけの場合もありますが、冷凍室外機のように24時間稼働する場合もあります。また一台だけの場合もありますが、複数台または数十台の場合もあります。1台の室外機にコンプレッサーが複数台入っているものもあります。いづれにしても隣地に民家があれば何らかの騒音対策が必要となります。

騒音対策方法は防音塀を建てることが一般的です。ただこの防音塀が隣地に対して目障りの場合もあり、日照の問題も生じる場合があります。また隣りの建物が大きい場合には、上から見下ろせるようになり、遮蔽効果が少なくなる場合もあります。さらに屋上に設置しても、隣が高層マンションのような場合には、見下ろせるようなことが生じ、回折減衰が期待できないこともあります。

また室外機の位置によっては、室外機を設置した人の建物の外壁がある場合があり、敷地境界に防音塀を立てて回折減衰計算を行っても、建物からの反射音も存在し、計算通りにはいかない場合も出てくます。さらに塀で囲むと室外機が雪で埋もれてしまう場合もあります。

様々な理由で防音塀が設置困難な場合には、排気側及び給気側にサイレンサーを設置する場合が現実的です。多くの場合は特注で室外機の外部に鉄等のフレームを作り、サイレンサーをそのフレームに取り付けることになります。サイレンサーの基本的な形は消音エルボを利用したものになります。納まりやメインテナンスをよくするために、できればメーカ側でサイレンサーを用意できるといいと思っています。または室外機の発生騒音をより静かなものに改良できることがもっとも好ましいとおもいます。

また室外機が屋上に設置されるときには階下にある住戸に影響をしないように、防振ゴムや防振ばねなどで固体音対策をする必要があります。また室外機にコンプレサーが2台以上ある場合には唸り音が発生しないように回転数の大きく異なるものなどを設置するように注意が必要です。唸り音は耳で聞こえないような場合でも隣地に影響がある場合があります。 


 上の写真は三菱電機のビル用マルチエアコンの室外機のカタログの外観ですが、この形に、吸気および排気部分のサイレンサーを検討します。

 室外機の外側に鉄のフレームを組み、その上部には排気用のサイレンサーを取り付け、下部には吸気用のサイレンサーを設置します。おおよそ対策目標は10BAと考えました。吸音材はポリエステル繊維吸音材(シンセファイバー等)で厚50mmを考えています。この吸音材は防湿性能があります。

  図 断面図(下部:吸気側サイレンサー、 図 下部の平面図(吸気側サイレンサー)

   上部:排気側サイレンサー)


          
  図 断面図(上部:排気側サイレンサー) 図 上部の平面図(排気側サイレンサー)

2022/05/27

神楽坂まち舞台

 

神楽坂まち舞台 大江戸めぐり2022が、521()22日(日)にあり、出演者の柴田さんからご案内をいただき、21日の15時の公演に伺いました。

 

場所はことほぎライブと銘打って、神楽坂の赤城神社の神楽殿で行われました。下の写真のように舞台は神楽殿で、建物がありますが、観客席は折り畳み椅子を置いただけの場所で、雨が降ったら中止になります。写真は1330からの長唄とお囃子の公演でしたが、雨が降ったために観客は無しで、多分お囃子だけで練習のような感じで演奏が行われていました。


写真 赤城神社神楽殿(撮影は230分ごろ) 

15時からは雨も止んで、常磐津和英太夫連中+邦楽囃子の若獅子会は無事公演が出来ました。出し物は常磐津『勢獅子劇場花罾(きおいじしかぶきのはなかご)』といもので、読み方も難しいですが、曽我兄弟の話が織り込まれているようで、冗談の好きな歌舞伎の話だし、本当かどうかはわかりませんが、舞台裏で演じて観客がみることのないという出し物を、当日の神楽坂の観客のための歌詞を入れて公演してくれていました。舞台の上の演者たちの中には、木造劇場研究会という会で知り合った人たちがいて、鈴木英一(常磐津和英太夫)さん、柴田満(常磐津菊与志郎)さん、重藤暁(常磐津 佐知太夫)さんがいらっしゃいました。 常磐津 佐知太夫さんは、最後4年ほど前にお会いした時には、まだ大学院の学生で常磐津の演奏者ではなかったのですが、随分頑張って演奏していました。 

 公演の内容は身近でわかりやすかったのですが、三味線の音が、あるとき震えて、フラッターエコーが生じているような気がしました。フラッターエコーとはこの場所で考えると天井と床の間で往復反射する音で、日光の東照宮の『鳴き竜』で有名です。多分天井は水平にできていて、床との往復反射が起きやすい状態になっているようです。日光の天井はむくりがあるので余計フラッターエコーが生じやすくなっています。しかも天井には竜の絵があり、意図的にフラッターエコーを作り出していましたが、この場所は公演場所なので、音響障害であるフラッターエコーを生じないように気を付ける必要があります。

 

2022/05/18

聞きづらい席(つんぼ桟敷)

 

何年か前、豊岡市出石町の芝居小屋の永楽館が復元オープンしたときに伺いましたが、その時にたまたま2階席の奥の席がよく言われている『つんぼ桟敷』だということがわかりました。しかし『つんぼ桟敷』という言葉は差別的で好ましくないし、その席で全く聞こえないということは無いので、『聞きづらい席』と言い換えることにしました。

実験は、舞台近くでどなたかに話をしていただき、1階の桟敷席や2階の桟敷席で聞いてみました。2階席の前から奥の方へ移動していたら、突然声が小さくなってしまいました。ちょうど『大向こう』と言われるところです。原因は直接音、第一次反射音(天井)が合わさって聞こえていたものが、2階席の前側にある垂れ壁の影響で天井の反射音が聴き手に来る前に遮られてしまうためです。残念ながら計測器がなかったためにデータは無いのですが、インパルス応答でも計測していれば反射音の存在がわかる可能性があります。この垂れ壁はすべての芝居小屋にあるわけではないのですが、芝居小屋特有の現象のようにとらえられていました。

今まで天井からの反射音で補強されている例として、東京文化会館の上階の席や、扇型に拡がったNHKホールの天井からの反射音は、オーケストラを聞いても強く聞こえ、よく音響設計されていると感心したものです。

また有名な第一次反射音の設計例は、1962年に竣工したBeranekが設計したニューヨークフィルハーモニックホールがあります。この設計に当たり、世界中のホールを調査して好ましいホールはどのようなものか研究して、『音楽と音響と建築』という本を執筆し、この本はベストセラーになったのですが、本命のホールは、様々な原因はあると思いますが、客席を増やすために、わずかに扇型になってしまい、客席に側方反射音が届かず、音の評判が悪く、何度か改修しています。

また1963年に竣工したベルリンフィルハーモニーホールの音響設計をしたCremerは初めてのヴィニヤード型を検討し、立ち上がりの席の側壁から第一反射音をもたらすことで、好ましい音を作り出しました。

音響設計の技術開発には、この2つのホールが大きく貢献しましたが、この技術開発には芝居小屋の垂れ壁も貢献していればよかったと思います。

2022/05/17

フードコートの騒音対策

 

フードコートにいくと、大勢の親子連れ客で大賑わいである。さらに騒音が非常に大きくうるさい。人が大勢いるから当たり前と思われるかもしれないが、これは、実は海外のショッピングモールであるIKEAやコストコではグラスウール吸音材が天井一面に使われていて、カフェやレストランでは大勢、人がいてもとても話しやすい。

日本でも、30年ほど前は、人が大勢の集まるショッピングセンターなどの天井は、岩綿吸音板が当たり前のように使用されていた。しかし、最近はショッピングモールで吸音材が使われているところをほぼ見かけなくなっている。

試しに、あるフードコートの室内騒音を計測してみると、ガヤガヤと何を言っているか聞き取れない騒音(ノイズ)で満ちており、常に75デシベル(以下図 騒音レベルグラフ)ほどある。

図 あるフードコートの騒音レベル(30秒間)

 ここで天井による騒音対策を考えてみる。

Beranekの拡散音を含む室内の距離減衰式を示す。

   LpLw+10Log101/4πr2+41-α)/(Sα)) dB

ここでLp:室内音、Lw:パワーレベル、ここでは話声のパワーレベル、

    r:音源からの距離、S:室内表面積、α:平均吸音率 

ここでは大勢の人声が音源のために、直接音成分を除き、拡散音成分だけを取り出して検討する。

LpLw+10Log104(1-α)/Sα))dB

Lwは話声のパワーレベルのため一定と考える。吸音率は仕上げ材によって表のように変化する。ここでは天井がプラスターボード、岩綿吸音板厚9mmとグラスウール32k厚50mmを比較する。さらにここでは簡易のため、音声の成分の大きい500Hzで比較する。

表 仕上げ材の吸音率

材料名

空気層

125

250

500

1000

2000

4000

岩綿吸音板9mmPB捨て張

300

0.26

0.18

0.36

0.55

0.65

0.8

グラスウール32k厚50mm

0

0.2

0.6

0.9

0.9

0.85

0.85

石膏ボード912mm

45

0.26

0.13

0.09

0.05

0.05

0.05

Pタイル張り

0

0.01

0.02

0.02

0.02

0.03

0.04

  
  フードコートの室形状を10m×10m×CH3mと仮定して検討する。

室表面積Sは、S=(10×10)×2+10×3)×4320

床・天井の面積は10×10100

平均吸音率αはα=(100×α+110×0.1+100×0.02/320

石膏ボード厚9-12mmの吸音率0.09のとき、平均吸音率は0.069

室内音圧レベルはLpLw7.7dB

岩綿吸音板9mmの吸音率0.36のとき、平均吸音率は0.1531

室内音圧レベルはLpLw11.6dB

グラスウール32k厚50mmの吸音率0.9のとき、平均吸音率は0.322

室内音圧レベルはLpLw15.8dB 

天井が石膏ボードの時を基準とすると、岩綿吸音材の時は3.9dB、グラスウールの時は8.1dB音圧レベルが低減し、効果があることが見受けられる。 

騒音が小さくなれば、まわりで話す声も小さくなり、相乗効果で静かな空間となり快適性も大きく向上するはずである。また500Hz帯域で検討したが、より騒がしいい1000Hz帯域以上は吸音率からみると、より効果があるはずである。

なぜ天井に吸音材を使わなくなったのか気になるところである。設計をするときに、音に配慮せず、デザイン優先で使用しなくなった可能性もある。

また吸音材を使おうと思っても、メンテナンス性や、不燃材の必要、耐久性、コスト、法律などの点で見合うものが見つからないこともある。

岩綿吸音板を使用した天井が経年変化で、なんどか塗装をして、次第に吸音効果が少なくなってきている場合も見受けられる。塗装後の吸音性能は見るからにも低下しているため、岩綿吸音板を使わなくなってしまっている可能性もある。 

そこで天井面積の30%程度にグラスウールを添付することを考えてみる。たとえば幅900mmのグラスウールを天井の壁際のみに用いた場合の効果を計算する。

平均吸音率α=(32.6×0.9+67.24+30×4)×0.09+100×0.02)/3200.197

音圧レベルLpLw+10×Log4(1-0.197)/320×0.197)=Lw-12.9  dB

天井の周辺にグラスウールを用いた場合には、プラスターボードのみの天井よりも5.2dB程度、騒音の低減効果が出ており、岩綿吸音板のような効果が期待できる。天井はプラスターボードとし、天井周辺のみグラスウール厚50を貼り、改修時にグラスウールのみ取り換えることもできるように思う。

2022/05/14

箏の曲『脆性ノスタルジア』および脆性破壊

にっぽんの芸能の『今かがやく若者たち』で紹介された箏の曲『脆性ノスタルジア』が印象的でした。作曲者は冷水乃栄流(ひやみずのえる)です。曲の意味は壊れやすいノスタルジアというような意味と思われますが、作曲者は現在東京芸術大学の大学院に在籍中で、若い人です。曲はキラキラとした美しい箏の音に、時々壊れそうな音が混ざっているような印象的な曲です。

 

この曲名の中の『脆性』という言葉には37年前の1985年、御巣鷹山日航ジャンボ機の墜落事件を思い出されます。事故の原因は、機体後部の『圧力隔壁の脆性破壊』でした。この言葉は離着陸を繰り返す中で、圧力隔壁がその都度変形し、脆性破壊を起こしたものだというものです。当時の見解で,現在ではどう解釈しているかは気になるところですが、次第に劣化する体のような感じにもとらえました。

 

  脆性ノスタルジアの作曲者がどのような感覚でこの名前を設定したか、よくわかりませんが、毎年来る御巣鷹山日航ジャンボ機墜落事件の追悼式で、この言葉を聞いたことがある可能性もあります。物理的用語が音楽の発想に影響を与えたというのはあらたな出来事ではないかと思います。 

2022/05/11

夜の鶯 ナイチンゲール

 アルテッカしんゆりウクライナ人道支援チャリティーコンサートが5/5に新百合丘の川崎市麻生市民館大ホールでありました。主催は川崎・しんゆり芸術祭2022実行委員会で、川崎市および川崎市教育委員会が後援していました。入場料はくじで当選すれば無料で、ウクライナ支援のため観客に寄付をお願いする形なので、払っても払わなくともよいためかわかりませんが、800名が満席でした。コロナが少し納まってきた時で、一席飛ばしのようなことをせずに、座席なりに座れるようにしていました。体格好から60歳以上の人が最も多いように思いました。ただし寄付は透明のプラスチックの箱で集めていましたが、お金はたくさん集まっていました。

 

公演内容はオペラ協会と藤原歌劇団で、それぞれの歌劇団の歌手の歌う間で藤原歌劇団に所属するウクライナのオクサーナ・ステパニュックのバンドウーラの演奏と歌がありました。歌はプッチーニ作曲のラ・ボエームの中のムゼッタのワルツで、バンドウーラの演奏は3曲で、一曲は多分民謡で、更に司会者によるとナイチンゲール(夜の鶯)、さらによく聞くカッチーニのアベマリアでした。

 

中でも歌が印象的だったのはナイチンゲール(夜の鶯)で、鶯のとてもかわいい鳴き声で歌います。日本のホ・ホケキョではなく、コ、コ、と聞こえます。ウクライナではこう聞こえるのだとびっくりしました。

 

ナイチンゲールという曲には、ストラビンスキーのオペラ『ナイチンゲールの歌』というのがあります。オクサーナのナイチンゲールがストラビンスキーのナイチンゲールと元は同じ曲かどうかはよくわかりませんでしたが、似ている感じもします。ストラビンスキーはロシアで生まれていますが、その事実とは関係がなく、音楽はその時の感情とあった曲を選べば良いと思っています。



2022/05/04

白拍子と乱拍子

 

2022422日の弊社ブログ(http://yab-onkyo.blogspot.com/2022/04/blog-post_14.html)でお囃子の乱拍子を紹介している。

邦楽百科事典 音楽之友社発行 p.1037には「乱拍子:能の用語。白拍子が舞う特殊な舞事。小鼓のみで奏し、笛がときどきアシラう。《道成寺》のみに用いる。」とあり、能の道成寺のみに用いると書いてあるが、お囃子にも用いていると感じていた。共通の内容は、能は足の踏み方、お囃子は笛の音の止め方かと感じていた。このときに能の道成寺には白拍子と乱拍子という言葉があり、対になることばで、興味深いと持って調べた。

 沖本幸子著の「乱舞の中世 白拍子・乱拍子・猿楽」が見つかり、その中に「乱舞の芸能として一世を風靡した白拍子と乱拍子」とあり、「白拍子の方は、静御前や祇王など女性芸能者の芸能として完成されていき」「一方の乱拍子は乱舞の代名詞ともなり、その即興性と勇壮な足拍子を持ち味としながら、僧兵のような下級僧侶たちの延年※の芸能として花開いていく。」

白拍子とは「実は、女性芸能者ばかりが白拍子ではない。なぜなら白拍子とは、もともとはリズムの名称だったと考えられるからだ。そして、そのリズムで歌う歌謡や、その歌謡にあわせて即興的に舞う乱舞のことも白拍子といった。さらに、それが一つの見せる芸能として形を整え芸能者の舞として確立されて、その舞や舞手のことも白拍子と呼ぶようになったのだ。」

「そもそも乱拍子とは、白拍子と同じく太鼓のリズムの名称であり、そのリズムにのって歌う歌や舞う舞のことをいった。歌としては和歌くらいの短い文章に「やれことうとう」という囃子詞がつく点に特徴があり、舞としては足拍子を踏む点に特徴があった。」

Wikipedia延年(えんねん)とは、寺院において大法会の後に僧侶や稚児によって演じられた日本の芸能。

本のp.24には「中世初期、平安末期から鎌倉時代にかけては特に、社会全体が乱舞の熱狂に包まれていたといっても過言ではない。後白河院の頃から後鳥羽院の時代にかけて、12世紀後半から13世紀前半頃が白拍子・乱拍子の最盛期だ。」とある。南北朝時代、室町時代に能を集大成した観阿弥・世阿弥の100200年も前の時代だ。

 世の中は源平の戦いや鎌倉幕府が成立したころで、戦乱が多かったと思える。後白河天皇の『梁塵秘抄』や鴨長明の『方丈記』のできたころだ。

いまの舞台で狂言の表現に足踏みがあるが、乱拍子の影響か?

ちょっと飛躍しているが、ベートベンの交響曲No.5の三楽章のタタタターン、タタターターンはどうなのだろう。ピアソラのバンドネオンのような感じだったのか?和太鼓の鬼太鼓座の太鼓は?

乱拍子とは、なんだか心をわくわくさせるような言葉だ。