乱拍子とは拍子が乱れると書きますが、あまり使われない言葉です。能の演目の道成寺にはシテの白拍子がところどころで思い出したようになる小鼓の音に合わせて白拍子の足をすばやく動かす動作のことを指して言うようです。鐘の中で蛇に変わる前の緊張を感じます。
実は荏田のお囃子にも破矢(はや)の章で、しずみと乱拍子という章が挿入されます。なんで乱拍子かはよく理解されていませんが、お囃子の乱拍子の部分には「たらりらら、たらりらら、たらりら たらりら たらりらら、たらりらら たらりらら、たらりら たらりら たらりらら 」と吹く部分があります。らは指を笛の孔から跳ねず、離さないように音を止めて演奏する方法です。勝手な音程の表現で、また勝手な表現の解釈で理解しにくいですが、ちょうど一歩ずつ階段を上っている足を表現しているように感じます。
破矢のあとには鎌倉、国固め、四丁目、そして前に戻って破矢になります。その中で乱拍子はまるで能の乱拍子のように一歩ずつ歩んだのちに蛇に変わるぞという緊張感を表現しているように思います。お囃子には別の部分で獅子舞も登場するし、乱拍子は意味が分かれば魅力的な言葉です。