2009/07/21

横浜ふね劇場の音響特性

 昨年の10月、横浜ふね劇場の屋根を持ち上げ、窓を設置する工事を行いました。それまでは、公演をする時には、停留しているときの屋根を撤去してテントを張ることとしていましたが、ふね劇場が完成して今まで一度しか公演がなく、めったにない公演のために、艀を密閉している屋根をそのままにして、その中で演劇の練習をするのは、あまりにも過酷な状態でした。
 そのため、昨年のふね劇場をつくる会の総会で、この状態を改良することが決まり、屋根を持ち上げる工事を行いました。

 屋根を持ち上げた状態での音響性能を測定し、今後の公演に役立てたいと思い、測定を行いました。また、その結果を今年のふね劇場の総会で発表いたしました。
 過去の1度の公演の時にはテントであったので残響時間は短く、500Hz帯域で0.55秒でした。
調査は二度、二度目は神奈川大学の寺尾研究室の学生と一緒に測定しました。芝居小屋の音響調査で行っている音響シミュレーションの方法です。

 残響時間測定結果を図に示しました。


 500Hz帯域では0.77秒と、テントの時と比較して、0.2秒ほど長くなっています。中高音域の残響時間が短くなっているのは、側壁に幕があり、また客席には座布団を敷いているためです。最適残響時間のグラフから考えると、空席の残響時間0.77秒は、講堂や会議室に適したものとなっており、明瞭な声の伝達に好ましい状態であることが分かります。したがって、演劇の公演には良好な状態であり、しかもテントの場合よりも初期反射音があるために、発声しやすいと思われます。また邦楽や、ガムランなどのアジアの音楽はもちろん、クラシック音楽も、残響を感じることから行いやすくなり、講演会から演劇、さまざまな分野の音楽にも公演しやすくなったと思います。
 また、このふね劇場は、大きな音を出すとふね上部の鉄板部分が振動をして音を出すことも分かりました。多少音色に鉄の色がつく場合があることになりますが、これも艀で出来たふね劇場の、欠点でなく特徴と考えることも出来るでしょう。

 屋根を持ち上げ、窓がついたことで、光と風が入るようになりました。屋根の上には断熱材も張られています。後はたくさん使うだけです。最近、横浜大桟橋の根元の象の鼻地区は、美しく、また便利に整備されました。横浜港を遊覧するふねの発着場にもなっていて、海を楽しむ事が身近になりました。大桟橋の屋上には、いつもたくさんの人たちがいて、海の風や景色を楽しんでいます。次はその近くにふね劇場を浮かべて、演劇や音楽を楽しむことができたらいいなと思います。

測定の様子。



 
 7月17日に建築学会の会館の中庭に青いテントを張って、劇団唐ゼミ公演、『恋と蒲団』がありました。その後、唐十郎氏を交えて、「劇空間再考せよ」というシンポジウムがありました。その中で、唐十朗氏から、安藤忠雄の設計した「下町唐座」は天井が高すぎる、使いにくかった、声が出しにくかったとの発言がありました。私は、赤テントの公演時に俳優が皆声をからしているのを見て、これはテントが声を反射しないためだと思っていました。当時、下町唐座を設計する段階で、私は音の検討をしていましたが、テントより確実に音は出しやすいと感じていました。しかし公演に行ってみると、なんと俳優の声の一次反射音を客席にもたらすために一番大事に考えていた側壁に幕がたれているではありませんか。おそらく練習の時に、空席のため、劇場の平面が正多角形なので、音に焦点や定在波が出来やすく困ったのかもしれません。そのとき、劇場を使う側と劇場を作る側とは、十分話し合わないといけないのではとつくづく思いました。

 今回の建築学会の会館の中庭でテントを建てる場合には、テントを透過した音は、建築会館の壁にぶつかって、再度テントの中に入ってくるために、テントだけよりも発声しやすいと思いました。また最近は、テント公演は騒音問題があり、なかなか問題になりますが、建物の中庭で行われれば騒音問題も解決し、屋外の雰囲気も楽しめるのではと思いました。