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2015/12/19

東工大70周年記念講堂の天井改修設計


東工大70周年記念講堂は2年前に登録有形文化財になった。その講堂も、昨年特定天井の法律ができたために、天井の改修が検討されてきた。 
客席部分の天井については大きな意匠的な変更はないものの、舞台上の音響反射板については、大幅に改修することになった。


東工大清水寧連携教授のご紹介で、その改修設計プロジェクトに参加の機会を得た。本建物は谷口吉郎設計、音響設計は松井昌幸である。


大梁

客席
建物の概要は本ブログにも紹介している。昭和31年(1956年)竣工、東京工業大学70周年記念として、卒業生の寄付によって建設された。客席数808席、主目的は講堂だが、天井も高く、音楽ホールも意識して設計されている。舞台周りの拡散形状も特徴があるが、スリット形状による吸音構造も特徴で、しかも壁や天井は舞台に近いところから遠いところに向って次第に高い吸音率になるよう吸音構造の設計が行われている。

神奈川県立音楽堂(昭和29年1954)、旧NHKホール(昭和30年1955)、杉並公会堂(昭和32年1957)、本講堂(昭和31年1956)とともに、クラシック音楽を意識した音響設計の黎明期にあたる。

今回の改修では、谷口先生や松井先生の考え方を変更しないようにということ、もう一つは演奏者が自分の演奏音を聞き取りやすくすることに気をつけた。

そのため客席からよく見える正面の斜めにある音響反射板はそのまま維持し、客席天井の端部とその正面反射板の間にある客席からはよく見えない天井音響反射板を舞台の演奏音が舞台へ戻るように音線法による音響シミュレーション(図)を行って形状を検討した。




改修前のシミュレーション(250Hz)


改修後のシミュレーション(250Hz)