ページ

2013/04/30

丸山純子氏による『はなおくり-第七金星丸 2013』

BankArt Under35/2012がBankArt StudioNYKで2013年3月22日から4月14日(日)まで開かれ、最終日に行ってきました。目的は艀・横浜ボートシアター第七金星丸の屋根をキャンバスにした丸山純子氏による『はなおくり-第七金星丸 2013』です。

艀の約8m×30mの屋根いっぱいをキャンバスに粉石鹸絵具で花の絵を描き、その後雨が降って次第に消えていく様子を写真で撮影したものです。実際に描いたものを写真でなく見てみたいと思いましたが、移ろいゆくものの愛おしさが表現されていて、また形の定まらない波に浮かぶ船劇場の屋根に描かれたことにも感じるところがあります。

雨で消えてゆく花も、ふねの中で行われている形のない演劇・音楽、双方とも愛しく、記憶の中にしか残らないものです。良い記憶を積み重ねて生きたいと思います。


丸山純子展カタログより
(発行 BankART 1929)

2013/04/11

ヴィトルド・ルトスワフスキ生誕100周年記念コンサートと杉原玄一郎オーボエリサイタル Epitaph


3月25日(月)、紀尾井ホールで開かれたコンサートに行ってきました。ポーランド広報文化センターの主催です。曲目はルトスワフスキの「弦楽四重奏曲」、ショスタコーヴィッチ「弦楽四重奏曲第8番ハ短調」、マルコヴィチ「弦楽四重奏曲第3番」、シマノフスキ「弦楽四重奏曲第2番」で、20世紀ならびに21世紀に作曲された曲です。

演奏はルトスワフスキ・カルテットで、ルトスワフスキの名を冠した弦楽四重奏団です。
第二ヴァイオリン担当のマルコヴィチは作曲家(30代前半)でもあります。

ルトスワフスキは1913年1月25日生まれで、今年で生誕100周年、1994年に亡くなっているので、つい最近まで活躍されていた作曲家です。ポーランドに生まれ、1931~33にはワルシャワ大学で数学を学び、1932年にはワルシャワ音楽院に入学して、1936年に卒業。1939年大戦勃発ですから苦難の青春の時代を想像します。

曲目は現代音楽ですが、構えて聴かないといけないようなものではなく、ショスタコーヴィッチも含めて、柔らかい音が中心でした。いずれもいろいろなことを想像しながら、何を伝えたいかなどを思いながら聞きました。
曲目ルトスワフスキの弦楽四重奏曲は、勝手に想像するに、地球に生命が誕生して、それが滅びて、またそれが繰り返されているようなことを感じ、生命に対する愛おしさを感じます。



3月30日(土)、杉原玄一郎氏のデビューリサイタルがトッパンホールで開かれました。
杉原氏はボストン留学時代に、指揮者で友人のキンボー・イシイ・エトー氏の友人だったために、日本でのキンボーのコンサートでよくお会いしていました。

リサイタルは、ルトスワフスキの作曲した曲名の「Epitaphエピタフ」と名付けられていました。演奏曲目はバッハの「ソナタ変奏曲変ホ長調BWV1031」、プーランクの「オーボエ・ソナタ」、ルトスワフスキの「オーボエとピアノのための墓碑銘(エピタフ)」1979年作曲、シルヴェストリーニの「オーボエのための6つの練習曲」より第一番、スクリャーピンの「ロマンス」、クララ・シューマンの「3つのロマンス作品22」、ほかアンコール曲数曲。杉原玄一郎はミシガン大学で分子生物学を学んだ後、ニューイングランド音楽院に入り直したとのこと。ちょっとルトスワフスキに似ています。

トッパンホールは満席で演奏も次第に乗ってきて、エピタフの難曲を自信をもった力強いオーボエの音で演奏されていました。また聴きに行きたく思っています。

JATET FORUM2012-13


「東日本大震災による劇場・ホール被災調査報告―劇場・ホールにおける防災・安全・技術(その2)-」と題して、3月27日(水)座・高円寺劇場の地下2階のホールで開かれました。
開場から満席で、大震災による劇場の被害また復興についての関心の高さを感じます。

劇場・ホールにおける震災対応に関する調査アンケートでは、全国の劇場など2247館に発送して1024館から回答が有り、回収率は46%と非常に高い結果となったそうです。特に被災4県(岩手、宮城、福島、茨城)の配布数162館のうち、93館から回答があり、回収率は57%であったとのこと。建物・設備の被害状況では、768館(75%)が特に被害はなかったが、527館は何らかの被害があったという結果となりました。被害の内容は、「内外壁・床の亀裂・破損」、「客席天井の落下」、「外構被害」、「ガラスの破損」、次に「給排水管の破損・ズレ」、「空調換気ダクトの落下」、「機械設備の破損」、「舞台設備(機構・照明・音響)の被害」などです。

中でも注目されていたのは、ミューザ川崎シンフォニーホールの天井落下とその復旧についての報告でした。天井は音響効果のために、FGボード厚8㎜のボードが5枚重ねられて構成されていました。FGボード8mmは13.6kg/m2あり、5枚では68kg/m2になります。地震発生時は、幸いにもホールでイベントは行われていませんでしたが、オルガニストの松居直美さんが練習をされていたそうで、地震直後に脱出して無事だったとのことです。天井の落下原因は、吊ボルトの先端のフック状の金物が変形し、脱落したことによって落下したと結論付けられたとのこと。今回の改修で天井裏に2段に大きな構造体を設置して、それから吊ボルトで天井下地をボックス型の金具で固定する方法としているとのこと。天井には2000galの加速度が入力すると想定して安全を確認しているようです。身が引き締まる思いで報告を聞いていました。