2008/05/19

久良岐能楽舞台における中国伝統音楽の公演を聴いてきました

5/18(日)に横浜市久良岐能舞台で、『中国の伝統音楽』を聴いてきました。

久良岐能舞台は、能舞台が和風の木造の建物の中にあり、その中には隣接して茶室も付属しています。さらに、能舞台は畳の和室の中にあり、障子や襖で仕切られています。したがって音響空間としては響きのあまり無い空間となっています。
久良岐能舞台はこの冬改修工事を行いましたが、YABは能の音が茶室へ伝搬する音の低減を目的にした遮音対策の検討を担当いたしました。工事は、そのほか舞台の床の改修、湿気対策がされました。



演奏は、中国の伝統音楽ということで二胡と中国琵琶によるものでした。能舞台の上には赤いビロードの布が敷かれ、演奏はその上で行われました。二胡の演奏は甘建民氏、琵琶は段露晴氏です。甘建民氏は、なんとも優しそうな、そして知的な方で、また日本に留学経験があるとのことで、日本語で曲の説明をされました。今回は、最初に、中国の四川の大地震で亡くなった方、また世界中で亡くなった方の追悼の意を表す曲から始まりました。二胡は憂いを含んだ音が特徴ですが、しかしそればかりでなく、新疆ウイグル地区の民謡 牧羊女のようにヴァイオリンのような美しい感じの曲もありました。
中国琵琶は、日本の琵琶のように撥ではじいて音を出す方法ではなく、指に爪をつけ、内側から外側にはじいて音を鳴らすもので、どちらかというと日本の琴のような音の感じです。日本の琵琶の平家物語のようなもの侘しい感じとは違い、とても華やかです。曲目、はシルクロードに沿って、内モンゴルから中国を横断し、中国各地の民謡などを順に披露していただき、空間の広がりとともに日本の音楽とのつながりも感じさせてくれました。演奏終了後に甘建民さんのCDを購入し、サインをしていただきました。その際に、この舞台では演奏しやすかったかと聞いてみましたら、とてもいい空間であったとおっしゃっていました。私もこの能舞台でのコンサートを始めて聞きましたが、中国音楽の二胡、琵琶は聴きやすく、二胡の音は抑揚や強弱がはっきりして、感情が良く伝わってきており、中国琵琶の音は、華やいでとても良かったと思っています。次回の久良岐能舞台の公演は6月15日、韓国の伝統音楽で琴の演奏があります。韓国の琴は生の指で弾きますが、どんな音がするか楽しみです。

2008/05/09

第24回四国こんぴら歌舞伎大芝居を観劇しました

昨年に引き続き、今年もこんぴら歌舞伎を見ることができました。公演は4月5日~23日まであり、私が行ったのは4月の22日および23日の千秋楽です。
演目は、22日は午後の部で、夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)、供奴、23日は午前の部で双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)、太刀盗人、暫(しばらく)。役者は市川海老蔵を座長とする松竹一座です。
22日は升席で、仮花道の脇、舞台と本花道が良く見える場所でした。この劇場は花道が2本あるところが演出上とても有効で、夏祭では役者が両側の花道で会話をし、声は客席の上を飛び交います。
海老蔵演ずる侠客団七のなんと格好のいいこと、動きも早く義理から強欲な舅を殺す場面では、取っ組み合いから泥水が飛び散る激しい場面があり、観客はビニルレインコートを着て見ます。唐十郎率いる状況劇場(赤テント)を思い出すほどです。
翌日の朝は千秋楽で、舞台の前に役者たちにより餅つきが行われ、観客にふるまわれました。千秋楽は歌舞伎十八番暫です。席は本花道の脇で大変迫力がありました。海老蔵演じる鎌倉権五郎が、暫らくといいながら、私の頭の上をあの大きな袖でかすりながら登場し、悪を懲らしめ退場する際も私の耳元で六方を踏み、にらみながら、花道を通っていきました。とにかく迫力がすばらしく、『夏祭』もそうですが、現代に生きている演劇と感じました。
この「暫」は1697年初演だそうです。江戸時代が始まったばかり、歌舞伎も始まったばかりで、勢いも感じられます。


仮花道


餅つきの様子


木戸口


本花道

先日、5/ 5(月)にショスタコービッチ作曲のオペラ『ムチェンスク郡のマクベス夫人』の東京歌劇団による公演を、サンパール荒川で観ました。1932年作曲のもので、筋は『夏祭』と若干似ているところがあり、主人公の女性が、義理の父と夫を殺し、不倫の果てに不倫相手の浮気相手を道連れに自殺してしまうといった激しいものですが、人間の生を感じさせる勢いのある演劇です。ロシア革命直後の雰囲気を感じさせるものですが、ソビエト共産党に批判され終了してしまったものです。オペラと歌舞伎は発生時期がほぼ1600年と同じで、物語の作り方にもまた共通点があるような気がします。

市川団十郎と海老蔵は、昨年パリオペラ座で公演をした際に、客席が遠かったと感想を述べていました。やはりオペラ劇場はオーケストラピットがあるために、客席と舞台を隔ててしまい、距離感が生まれます。歌舞伎のように楽団は舞台両脇に半分隠れて演奏したらいいのではないでしょうか。5日のオペラは、吹奏楽器だけは観客席の両脇で演奏しており、それだけでも臨場感が出てきます。舞台と観客席の一体感という観点から見ると、江戸時代の芝居小屋は相当レベルの高いものだと感じられ、それは現代の劇場にも活かせるのではと思います。

翌日24日は、瀬戸内海の直島に行き、安藤忠雄の地中美術館を見てきました。美術館のチケットセンターでは、「美術館は静けさを表現するため、響くように設計されているので、音を出さないようにしてください」といわれました。たしかに美術館に入ると洞窟のように響き、小さな足音や声を意識させ、自然の中の波の音や木の葉のすれる音などのようにざわざわとしたような感じを受けました。静けさの表現もこのような方法も一理あると思いました。この美術館は安藤忠雄の傑作だと感じました。近くにはベネッセハウスミュージアムがあります。ここは小さく窓が開いていたので、鶯の声が気持ちよく館内に響いていました。

2008/03/07

川越鶴川座復原にむけJATET木造劇場研究会が川越で開催

2月24日(日)、JATET木造劇場研究会が、JATETメンバー、川越蔵の会、近隣住民の方々を交えて川越で行われました。

現在は使用されずに廃れている鶴川座の現状見学と、その復原のための調査をされている伝統技法研究会の大平さんと文化財建造物保存技術協会の賀古さんより、調査の途中報告がされました。


       鶴川座内観


       スクリーン

以前、映画館のために改装が施されていますが、その仕上げの裏には、江戸時代からの伝統的な様式を持つ芝居小屋の様子が伺われるようです。このような劇場は関東では此処しかなくなっているようで、大変価値があるように思いました。鶴川座は映画館の時代の意匠に復原する方法と、芝居小屋に戻す方向と二通りがあるようですが、江戸時代の雰囲気を持つ芝居小屋は現在ほとんど無く、鶴川座の存在が非常に貴重であり、また、その芝居小屋の音響的な空間が日本の伝統的な歌舞伎などの芸能文化の音響的な特徴を育てたのではないかという研究を実証する意味で、さらに貴重なものだと感じています。創建当時のままに復元が出来ればすばらしいことだと思っています。
復原できた暁には、歌舞伎などの伝統芸能だけでなく、様々なジャンルの芸能、現代演劇や音楽などが活発に公演され、街興しに大きく役に立つと良いと思います。江戸時代の様式を持つ歌舞伎劇場は、舞台と客席が一体となっており、現代演劇にも適した最も新しい現代の劇場であることがわかってきてきます。

研究会では、復原にあたっての法律的な問題や、どのような過程で、どのように復原するか、復原後どのように維持活用したらよいか活発な議論がされました。
音響的には、現在の屋根が鉄板葺であるために、雨音が大きく(24日当日も風が強く、屋根があおられて大きな音を出していました)、復原にあたっては注意すべきことです。また、芝居小屋の両隣が民家であり、劇場で大きな音を出すためには、何か対策が必要だと思われます。

2008/03/03

マテリアル・デザイン2008に記事が掲載されました



ディテール別冊
『マテリアル・デザイン2008』
建築の素材・材料チェックリスト

2月末に彰国社より発刊されました上記雑誌に、
YABが、株式会社ACT環境計画の小林洋子氏、林秀樹氏と共同執筆した記事が掲載されました。

機能材編のうち、「吸音・遮音材」について事例も交えてご紹介しています。

2008/02/13

長岡リリックホールの見学

2/6新潟の長岡で騒音対策の仕事があり、翌日は出発まで時間があったため朝9時前から、長岡リリックホールの見学に向かいました。
長岡リリックホールは、地域住民が集まる大きな文化施設ですが、長岡の市街地ではなく、信濃川を渡って市街地から数キロ離れた場所に存在します。

雪の信濃川を見ようと激しく降る雪の中徒歩で向かいました。商店街は昔で言えば雁木があるために、傘の必要はありません。まだ朝が早いためにどこもシャッターが閉まっていましたが、前日の夜は賑わっており、活気ある商店街といった感じがしました。空店舗もボランティアの事務所となっていたり、長岡空襲の展示室になったりしています。

商店街を抜けると、雁木が無くなり、歩道の脇からは融雪装置の水が噴水のように噴出していて非常に歩きにくくなります。3kmほど歩いたところで、信濃川を渡る長さ1km近い橋(大手大橋)がありました。





景色はいいのですが、やはり歩道の噴水と車が雪水をはねるのを避けながら歩くのは大変で、ほかに歩く人は見かけませんでした。

橋を超えたところには、地方のバイパス沿いによくある風景が現れました。大型ショッピングセンター、ファミリーレストラン、巨大な看板だらけの道路。これらは、旧市街地を壊していく直接的な原因となるものです。





ショッピングセンターの角を右にまがり、川と平行の道をさらに約2km歩くと、長岡リリックホールの背面に出ました。屋根の曲面が雪の景色と良く合い、とてもきれいです。





10時を多少過ぎており、事務所に寄ってみると、ホールの中を案内していただけることになりました。
コンサートホールはピアノの調整中でした。壁はワインレッドのビロードのような布で出来ており、ヨーロッパの音楽の楽しい雰囲気が伝わってきます。



2月のスケジュールもかなり埋まっていました。劇場の方は、壁は黒、舞台も黒で、現代演劇空間といった感じです。長岡リリックホールに隣接して、県立美術館もあります。とてもきれいな公園の中にあるために、美しい建物が映えていました。
帰りは、タクシーを呼んで帰りましたが、ホテルまで1600円ぐらいと、ちょっと中心市街地からは遠く、市街地のにぎわいに貢献するようにはできていません。

最近、江戸の芝居小屋について書かれている『大いなる小屋』(服部幸雄 著)を読みました。江戸三座は、江戸中心からは離れ、当時では辺鄙な浅草猿若町に在りました。劇場へは屋形船などで渡り、周辺の猥雑な雰囲気の異界空間も含め、芝居を見に来るお客さんを楽しませていたようです。江戸の芝居小屋は、封建社会に生まれた夢空間でしたが、現代の劇場やホールが、現代社会のひずみを融解する異界空間となれるか期待されます。

現代は格差社会とよく言われますが、その原因は、基幹の産業が縮小しているために、首都圏に労働人口を吸収できるサービス産業が縮小し、労働人口が供給過剰になってきていることではないかと思います。戦後は地方から大都市に労働人口が移動しました。今度は地方に生産を伴う産業すなわち、農業や漁業や製造業を活性化させることが最も重要で、そうならないと豊かに生きられない社会になっていると感じています。さらに地方独特の食文化と芸能文化が、地方の魅力とコミュニティを形作る重要な要素になります。
長岡の製造業の皆様頑張ってください!

2008/01/07

神奈川大学管弦楽団、吹奏楽部の年末年始の定期コンサート

新年、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

2007年最後の聞き収めコンサートは12月27日に鎌倉芸術館で行われた、神奈川大学管弦楽団の第52回定期演奏会でした。そして2008年1月4日にみなとみらいホールで行われた神奈川大学吹奏楽部の第43回定期演奏会で幕が開きました。両方ともにすばらしい演奏でした。
管弦楽団の曲目は、ベートーベンの「エグモント」序曲、チャイコフスキーのバレエ組曲「くるみ割り人形」、ドヴォルジャークの「交響曲第8番」ト長調作品88です。特にくるみ割り人形の後半は、Ⅲ 花の円舞曲は華やいでいて、もう一度聴きたいくらいすばらしかったです。鎌倉芸術館はホールの響きも良かったですが、中庭の竹がとても印象的でした。

神大の吹奏楽部は、昨年2007年度吹奏楽全国大会で金賞となった実力です。過去に21回も金賞をとっており、これは大学では全国一位だそうです。
曲目はリヒャルト・シュトラウスの「ウィーン市祝典曲」、交響詩「ドン・ファン」作品20、松尾祐孝の「ナジムアラビーノ」、三善晃の「交響三章」より第3楽章、真島 俊夫の「鳳凰が舞う-印象、京都石庭 金閣寺」、この中には全国大会で演奏した曲が入っています。
幕間の後は、サキソフォンの須川展也の客演で、石毛里佳の「Muta in Concerto」、真島俊夫の「シーガル」、ララの「グラナダ」、エルガーの行進曲「威風堂々」 第一番作品39、アンコールで、「カバレリアルスティカーナ」、ヨハンシュトラウスの「雷鳴と稲妻」、美空ひばりメドレー、「星条旗よ永遠なれ」でした。須川展也のサキソフォンの透き通るような音色と神奈川大学の学生との音の掛け合いもすばらしかったです。またMuta in Concertoの作曲者の石毛さんがピアノを演奏されましたが、難しいので緊張したとおっしゃっていました。ソロの部分とオーケストラの旋律が螺旋のようにずれていて立体的な動きになっているためです。石毛さんは学生時代、須川展也に吹奏楽を指導を受けていたそうで、若い作曲者で可能性を感じました。すばらしいコンサートで、音楽大学でない総合大学の学生が、よく学問と音楽を両立させているとそれも感心した次第です。

2007/12/25

小田急相模原駅文化交流プラザ(おださがプラザ)オープン

小田急相模原駅文化交流プラザ(おださがプラザ)が、12月2日にオープンしました。弊社は当施設の音響設計を担当いたしました。
この施設は同日オープンした小田急相模原駅直結の商業施設『Rac-AL odasaga(ラクアル・オダサガ)』内にあり、交通がとても便利で、またスーパーマーケットを含む商業施設と高層集合住宅との複合施設となっており、人が集まりやすい施設です。さらにこの施設の特徴は、多目的ルームで音楽の練習や演奏会、演劇などの公演が出来るように、防音のための浮き構造を採用したことです。これによって90デシベルほどの音を出すクラシック音楽、軽音楽や歌の練習でも、隣接したミーティングルームや階下の店舗などに音の影響がでないようになっています(ただし、ロック系軽音楽などの場合は100デシベルを超えるような音圧レベルとなるため、会議室や階下の店舗に多少影響が出る場合も考えられます)。
この多目的ルームは、12.5m×19.5m、約240平米というかなりの広さがあり、ギャラリーや講演会、また合唱や演奏会、多人数の音楽の練習、演劇の練習、社交ダンス、ハワイアンダンス、エアロビクス、カラオケなど様々な用途に活用することができます。少人数での利用の場合は、2つの可動遮音間仕切りで3室に仕切れるようになっています。可動間仕切りのうちひとつは遮音性能の高いものを使用しています。
竣工後の測定では、残響時間は室全体では0.8~1.0秒程度、3室に分割した場合には0.6~~0.7秒程度となっています。室用途が講演からクラシック音楽までを対象としているので、響き具合については声の明瞭性と音楽のための響きを考慮したバランスの取れたものとなっています。オープン以来、たくさんの方にご利用いただいているようです。

設計:パシフィックコンサルタンツ株式会社
文化施設の内装設計:フレームデザイン株式会社 
施工:安藤・藤木・小田急・櫻内建設共同企業体

多目的ルーム