2018/09/18

執筆に参加した本が出版されました

執筆に参加した本『遮音・吸音材料の開発、評価と騒音低減技術 次世代自動車・建築物・生活空間』が7月末に出版されました。
私の担当は最後の「第10章の第3節:大型施設の騒音・振動対策」「第4節:ISO3745に基づく無響室の設計法」です。

内容を以下の目次で示します。総勢45名の音響研究者・技術者による執筆で、広い分野の最先端の音響技術が示されています。
出版社は技術情報協会で、定価は80000円(税抜)です。本は建築関係が主な対象ですが、案外自動車の関係が多く割かれています。最近は自動車の制御に超音波を用いているようですが、これは今後の課題です。レーザーだけでなく超音波による空間の計測技術もできてきています。仕事のたびにこの本を脇に置いて参考にしたく思っています。



目次
第1章:音の伝搬メカニズムとヒトが音を感じるメカニズム
 第1節:音の種類、分類と定義
 第2節:吸音・遮音のメカニズムと構造の分類
 第3節:共鳴現象のメカニズム
 第4節:騒音・振動低減のための技術・材料とその適用法
第2章:人が音を近くするメカニズムと健康への影響
 第1節:聴覚のメカニズムと快・不快の感じ方
 第2節:騒音・低周波音の健康への影響
第3章:吸音材料の開発と材料特性
 第1節:均質化法による多孔質吸音材料の設計
 第2節:マイクロポーラス金属の製造とその吸音特性
 第3節:ナノファイバー系吸音材料の特性
 第4節:バイオマスを利用した吸音材料に関する研究
 第5節:かんな屑とバークによる断熱・吸音材料の開発
 第6節:3Dプリンタで作製された微細穿孔板の吸音特性評価
第4章:遮音材料の開発と材料の特性
 第1節:エッジ効果抑制による遮音壁の開発
 第2節:薄膜を利用した軽量でコンパクトな遮音技術
 第3節:木質構成パネルの遮音および曲げ性能
 第4節:建築用アスファルト系遮音材料の開発とその特性
第5章:制振・防振材料の開発と材料の特性
 第1節:制振工学の考え方とその応用技術へのアプローチ
 第2節:ポリマーを内包するクローズドセル構造金属材料の作製とその制振効果
 第3節:圧電素子を用いた振動制御、騒音制御技術
 第4節:制振LCPの開発とその制振特性
 第5節:制振材「Polaris」の開発とその特性
第6章:車両における振動・騒音の低減化技術と遮音・吸音材料、構造の適用
 第1節:自動車室内の振動不快音発生メカニズムとその制御
 第2節:高速輸送機関や流体機器から発生する空力騒音
 第3節:自動車用吸音材料の内部構造と吸音特性への影響
 第4節:自動車用防振材料、制振材料の開発と利用技術
 第5節:自動車の構造音響連成系の最適設計
 第6節:自動車用制振・吸音材への要求特性と車内音・車外音対策
 第7節:自動車の風騒音の発生メカニズムと低減技術
 第8節:自動車用遮音・防音材料の開発、その軽量化
 第9節:車両における吸音・遮音の設計と振動・騒音低減化
 第10節:気柱共鳴音レゾネータの開発と世代進化
 第11節:電気自動車走行音における「EVらしさ」「受容性」評価
 第12節:電気自動車におけるサウンドデザイン
 第13節:車内騒音伝達機構のモデル化
 第14節:吸音材が配置された自動車車室を模擬した空間の減衰音響解析
 第15節:プラズマアクチュエータを用いた翼後縁騒音の制御
第7章:建築・建造物における吸音・遮音・制振の設計
 第1節:音楽施設の音響設計
 第2節:集合住宅における騒音とその対策
 第3節:学校施設の音環境評価・音響設計法
 第4節:オフィスの音響設計
 第5節:公共空間の音響設計コンセプト
 第6節:格子状メッシュを用いた雨滴による膜衝撃音の低減
 第7節:アクティブ騒音制御技術の住宅換気口への適用
 第8節:建築設備機器の騒音・振動対策
 第9節:能動騒音制御と聴覚マスキングに基づく工場騒音の緩和
第8章:機械・産業機器における騒音対策
 第1節:モータの電磁騒音の発生メカニズム
 第2節:消音器による騒音対策
第9章:音響・音環境、遮音・吸音材料の測定、シミュレーション、評価手法
 第1節:環境騒音における騒音計測と音響環境を配慮する計測手法について
 第2節:音響管計測装置の利用方法とその測定応用技術
 第3節:吸音・遮音性能の測定方法および予測技術
 第4節:騒音、振動の予測計算と測定・分析手法
 第5節:振動レベル計の操作、振動レベルの測定・データ処理の方法
 第6節:材料開発におけるアンサンブル平均による材料の吸音特性のin-situ測定法の適用
 第7節:時間領域差分法による床振動解析
 第8節:光を用いた音場可視化装置
 第9節:室内音響特性の測定法
 第10節:音波伝搬シミュレーションの計算結果可視化手法
 第11節:音空間レンダリング技術の開発 
 第12節:面内面外変位連成系有限要素法による床衝撃音の数値解析手法の開発
第10章:騒音規制、騒音公害とその対策
 第1節:騒音公害の概要―苦情の経年変化と音源別対応策
 第2節:低周波音苦情の実例とその対応
 第3節:大型施設の騒音・振動対策
 第4節:ISO3745に基づく無響室の設計法

2018/09/11

2018年度日本建築学会(東北)大会に参加しました

2018年度の建築学会大会が東北大学(川内北キャンパス)で開催され、9月6日に発表しました。

4日から5日にかけて台風21号が大阪に大きな被害をもたらした後、北海道方面へ抜け、さらに6日の早朝には北海道では胆振地方で震度7の地震が起こり、大きな山崩れが発生、また発電所がブラックアウトし全道で停電が発生するという事態になり、落ち着かない中で仙台に向かいました。自然の脅威を改めて感じています。

発表内容は『川越市鶴川座の音響的復原その2 音響シミュレーションによる音響的復原の試み』と題して行いました。昨年は『川越市鶴川座の音響的復原―その1 3Dレーザースキャンデータの音響シミュレーションの応用』と題して発表いたしましたが、その続編となります。

本報告は、ベルリン工科大学のクレメンス・ビュトナー氏、東京大学生産技術研究所の助教 森下有氏、および弊社の共同研究になりますが、音響シミュレーション技術を補強するために、元東工大特任教授の清水寧氏にも加わっていただきました。
研究の目的は、前回計測した現状の空間の3Dレーザースキャンのデータや『伝統技法研究会著 旧鶴川座保存活用計画調査 報告書 平成21年(2009)3月』などを参考にして、芝居小屋当時の空間を推測して、音響的な空間を復原することが目的です。

音響的復原は音響分野では新しい技術で、ベルリン工科大学のクレメンスさんのいらっしゃる研究室(ヴァインジール教授)の主要なテーマになっています。

また発表原稿の表紙にはRAMSAの西さんが大正時代の鶴川座の雰囲気を描いた建築パースを、承諾を得て使っています。鶴川座は明治26年に川越大火があり、その後仮設で作った川越座を立て直し、明治31年に建設されました。明治32年、川上音二郎一座が演劇史上はじめての海外公演し、初めて女優の貞奴が誕生した時代です。鶴川座からも当時の新しい時代の息吹を感じます。



以下、発表原稿です。
















2018/08/31

超音波発信システムを自作した

 自動車の自動運転においては、超音波を発信して反射波で距離を計測し、何らかの制御を行っている。そのために自動車関連メーカーの無響室では超音波を計測することが必要になってきており、その検収測定を依頼された。

 しかし超音波領域(100kHz)まで計測するためにはこれまでの測定機材では不十分であり、まず「超音波発信機」および「超音波増幅器」、そして「超音波の無指向性音源」が必要となった。超音波発信機や増幅器は市販されているものもあるが、かなり高価である。さらに無指向性スピーカは市販されていない。そのため自作を試みた。

 超音波発信機は、エヌエフ回路設計ブロックという会社の、ランダムバイナリージェネレータCG-742Nというモジュールを用いた。このモジュールとホワイトノイズフィルターSR-4BLを組み合わせることで、100kHzまでのノイズジェネレータが安価にできることがわかった。しかし実際に組み立てるに当たっては、エヌエフ回路設計ブロックの技術者に大変お世話になった。
 
 増幅器は、一般的なものはオーディオが目的であるため、せいぜい20kHzまでが対象で、100kHz まで増幅できるアンプはほとんどない。しかし今はハイレゾ対応のものがでてきており、今回は共立電子産業のアンプキットWP-AMP7294STを、電源トランス及びケースを含めて買って組み立てた。ステレオで出力40Wのもので、20Hz~100kHzまで増幅できるものである。この組み立ても案外難しく、共立電子産業の技術者のお世話になった。

 スピーカは、パイオニア製カーオーディオ用のリボン型スーパーツイータ(TS-ST910)で、7000Hz以上のハイパスフィルターがついてステレオで売られている。このツイーターを無指向性に加工することにした。まず台を除いて作成したべニア製の箱の中に2台並べて入れ、上部に20mmの孔を開けて、開口部上に邪魔板を設置して超音波無指向性音源とした。再生周波数帯域は7000Hz~100000 Hzである。定格出力は50W。再生音圧レベルは90dBである。

 実際に音を出して周波数帯域が100kHz まで出力していることを確認した。また無響室の検収も無事に終了した。

 今回問い合わせしたモジュールやキットのメーカーの方々は非常に知識があり丁寧で、商品にどのような機能があり、どのような部品と組み合わせればよいかなどの指導が的確で、こちらも知識を得られ大変すばらしい経験となった。

左からホワイトノイズジェネレータ、アンプ、無指向性超音波スピーカ

2018/08/09

荏田地区納涼夏祭り大会にお囃子で参加

地元の荏田地区の納涼夏祭りにお囃子として参加しました。当初は7月28日(土曜日)に開催予定でしたが台風12号が接近し、翌29日の日曜日に延期されました。場所は赤田西遊水池です。当日は台風一過で朝から良い天気で、お囃子組は2時から設営の準備をし、トラックの荷台を舞台として、4時から本番が始まりました。舞台に立つと太陽の強いこと、演奏を始めるとくらくらする感じで、目に汗も入って、大変でした。屋外なので音が消え行ってしまい、音を力強く出さねばいけません。しかしやはり遠くまでは伝搬しない感じです。まだまだ練習が必要です。

その他の出し物は、小学校の生徒によるソーラン節ダンス、宗とも子さん(ソプラノ)の歌で主にミュージカルの曲、またおそらくブラジル人による本場サンバダンス、中学校の生徒による吹奏楽でした。7時半ごろから盆踊り、そして花火と盛りだくさん、屋台もたくさん出ていて、かなり楽しみました。



2018/07/27

杉山スタジオオープン

2018年7月7日(日)に杉山スタジオのオープニングパーティが行われました。場所は渋谷のセルリアンホテルや大和田ホールの近くにあるマンションの1階にある、グランドピアノを2台設置した音楽スタジオです。
当日は杉山先生のたくさんの教え子や同僚の方がいらして、皆さんピアノを弾いて楽しまれていて、こちらは素晴らしい演奏をたくさん聴くことができて大変楽しい時間を過ごすことができました。

オープニングパーティ

スタジオの正式な名称は杉山ムジーク・アカデミー渋谷スタジオです。建て主は杉山哲雄先生、元横浜国立大学の音楽の先生です。建築設計は有限会社濱口建築・デザイン工房の濱口オサミ氏。床は檜の無垢材、壁・天井は赤松で仕上がった柔らかな雰囲気の木質空間となっています。弊社は濱口氏の設計に音響の観点からお手伝いをさせていただきました。

スタジオの大きさは、基本的には約5.8m、8.0m、天井高さ2.5mの矩形の部屋です。長手の壁はそれぞれ水平方向に約1/20の傾きを持つジグザグの壁とし、入り口側の壁のみ下見板形状として、フラッターエコーを防止しています。下見板形状により、平行壁面間の角度が一部上向きとなり、水平方向に音が回遊することも防ぎます。天井は2.5mほどで反射音が強いために、吸音材シンセファイバーを着脱可能な状態に設置して、天井だけで音響調整を行う方法としました。音は主に水平方向に広がり、音に包まれるような空間を目指して音響設計いたしました。

またピアノの演奏音が隣戸にできるだけ影響が無いように、浮構造による遮音対策を行っています。ピアノの音は室内で100dBAと想定。浮構造にすることで隣接の部屋では、おおよそ65dBA低減できると考えています。場合によってはグランドピアノの音は100dBAよりさらに大きい場合があるので、注意が必要です。

ピアノ室などの音楽室は防音のため浮構造を用い、しかも床の浮構造は一般的にはコンクリート浮床とします。しかし今回はコンクリートが使えないために木製としています。その場合には、床下空間の空気層の共振周波数が可聴域にあるため遮音性能を低下させてしまうため、ヘルムホルツ共鳴器を内蔵する床を採用しています。この工法はUR都市機構と7~8年間共同で開発してきたものですが、まだ実験室での施工しかなく、今回は初めての実施物件です。基本的には床に空洞部を設け、床下空気層の共振周波数に合わせて動吸振的に、ヘルムホルツ共鳴器を構成して床下空気層の共振を低下させ、振動伝達率を低減する手法です。
 
天井の浮構造はスラブから吊らず、天井の荷重は壁に持たせる構造となっています。吊り防振ゴムを用いるより遮音性能は向上し、工事時、あと施工アンカーの穿孔騒音の問題もなくなります。またあと施工アンカーの施工不良による天井落下の不安もなくなります。

また音響性能に直接関係ありませんが、外壁に設置されている150φの換気口から外気が直接室内に取り込まれた場合、とくに夏の暑い雨の時などに室内が冷房で冷やされていると、湿度100%の空気が室内に取り込まれ湿度が上がってしまうため、多少熱交換ができる換気システムを窓際に設置しました。径30mmのパイプ10本を換気口から分岐して、細い管を通すことで、温度調整と湿度調整を行うこととしました。パイプオルガンのような設計および施工は設計者ご自身です。

換気システム

吸音材の効果は、500Hzの残響時間が天井の吸音材無しで1.30秒、吸音材を設置すると0.97秒と変化して、はっきりと効果がみられています。また音声明瞭性や音楽の明瞭性からも吸音材が効果的なことが分析されています。さらに、もう少し吸音材を追加した方がよいということになり、0.5m角の吸音材をあと更に10枚追加してほぼ天井全面に設置することになったようです。また、カーテンも吸音効果のあるビロードのカーテンを設置するなどの検討をするとのこと。

今後の杉山スタジオのご発展を祈念しております。

2017/12/20

「道成寺の鐘」状の風力発電機

能楽に『道成寺』という話があります。裏切って鐘の中に逃げた男性を清姫は蛇になって嫉妬の炎で焼き殺し、さらに後世に鐘を再興する際にも怨霊となって現れて鐘を引き落としてしまう話です。以前、某能楽堂を見学させていただいたときに、楽屋に道成寺(能)の大道具の鐘が置かれていました。単なる紙でできた張りぼての大道具ではなく、鉄のフレームに布が貼られているもので非常に重量があり、物語を思わせる緊迫感が漂っていました。鐘の端部は布が巻きつかれていてクッションの役目をしています。

物語とは全く違う方向性からですが、その部分に注目して、この形状で風力発電機のアイディアが生まれ、ずっと考えています。すなわち鐘とその上に接続した棒で共振系を構成します。風で振動しやすいように設計します。

全体の構成は、長さ20mほどのプラスチック製の柔らかな筒、鐘状のフレーム、その下端にはリング状の発電機、そこには上下2段のコイルリングがあり、リングの中で逆方向に進む120度に固定された3個の磁石でできています。

風の左右の圧力を効率的に回転エネルギーに変換する必要があります。そこで柔軟性のあるパイプに当たった風を衝撃的にとらえ、下部の鐘を固有振動数で振動している状態に合わせて、しなることで位相を遅らせて加振させます。鐘が前後左右に規則的に振動することで2リングの磁石を逆方向に回転させ、発電します。逆方向に回転させるのは鐘が回転しないようにするためです。

普通の風車による風力発電機のように発電機が100m上空にあるのではなく、一番下部にあるためにメンテナンスも容易であり、また雷にも強いはずです。まだ単なるアイディアですが、いつか実現ができるといいと思っています。
用途は主に農村の施設などを想定し、あまり水田や畑に影を落とさず、大きな機械ではないので、場所も取らず、どこにでも設置できるように考えています。
一緒に研究してみたいと思われた方がいらっしゃいましたら、ぜひ声をかけてください。

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