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2022/01/20

トンガ諸島の火山による津波の伝搬

 2022年1月15日に起こったトンガ諸島のフンガ・トンガ フンガ・ハーパイの海底火山爆発による津波が当初予測していた時間より早まり、しかも気象庁が津波による被害は少ないと予想していたにもかかわらず、夜間12時頃緊急津波注意報の警報(発信元は神奈川県)が枕もとの携帯電話から鳴った。

1月17日(月)の朝日新聞の朝刊には以下のように書かれていた。

「この若干の海面変動があると同庁が想定していたのは、父島(東京都小笠原村)では午後10時半ごろだった。しかし、予想より2時間半早い午後八時ごろから各地で潮位の変化が観測され始めた。16日午前0時前にはついに鹿児島県奄美市では1メートルを超え、午前0時15分に警報、注意報の発令に踏み切った」。

「気象庁は今回、潮位変化が観測されたのとほぼ同じタイミングで噴火の衝撃波が通過し、各地で2ヘクトパスカルほど気圧の上昇がみられたことを明らかにした。」

「潮位変化との関連は不明としつつ、宮岡企画官は「私たちは今までこうした現象を理解していない」と困惑を隠さなかつた。」

噴火の規模は1991年のフィリピンのピナトッボ山による規模とほぼ同じではないかともいわれている。また昨年8月の福徳岡ノ場の海底火山による噴火時のような軽石の被害も予想されている。

津波の伝搬速度は計算上約200m/sである。音波の伝搬速度は約340m/sである。この速度の1.7倍の違いも影響をしている可能性がある。火山の爆発の音はオーストラリアでもアラスカでも聞こえた。身近な人でも、この爆発の音を夜8時半前後頃に、軽い衝撃波として感じたという。さらに地球の空気の空間が劇場のように閉空間と見なされ、衝撃波が何度も繰り返し通過する可能性もある。今回の現象は新しいこととして整理する必要がある。

トンガでの火山噴火による衝撃波か 日本各地で急激な気圧変化 というニュース

夜8時半前後に気圧の変化が起こっていることがわかる。

※トンガから日本までの距離が約8000Km、したがって音速では23529/3600≒6.5時間、一般の津波では40000/3600≒11.1時間となり、4.6時間の差となる。地球一周(40075km)では音速は40075km/340*1000/3600≒32.7時間となる。

日本では幸いにも人的被害はない状態であるが、トンガの状況が気になるところである。


音の問題で、今まで判断に悩んだことがある例をいくつかご紹介する。

  • 10年ほど前に木造劇場研究会で、コンサートホールで舞台の音が床を振動として伝わって聞こえるのか、空気を伝搬して聞こえるのかが話題になったことがある。たしかにコンサートの音が床を振動しているのを感じることがある。しかし床を伝搬するスピードは固体伝搬音であるから約3500m/sで、空気の伝搬スピードは約340m/sであるために音源から観客席まで例えば20mを進むために固体伝搬音は0.0057秒、空気伝搬音は0.058秒、と固体伝搬音の伝搬する到達音の違いは0.053秒となる。0.053秒(53ms)の違いはエコーを感じる時間差となり、固体伝搬音が大きい場合にはエコーが聞こえることになる。したがって多くの場合には固体伝搬音の音への影響は少ないと考えられる。
  • 稼動するファンの騒音対策のためファンの周辺に壁を立てたことがある。しかし周辺の音の低減は得られなかった。これはファンが直接床に固定されているためであった。これは固体伝搬音の影響が大きい場合であった。
  • また、ある工場に隣接する民家で茶碗の水や仏壇の扉が振動するクレームがあった。調査したところ工場の超低周波音は大きいが床の振動は小さいことがわかった。原因は外壁に固定されている配管が振動し、大きな外壁を振動させ、そこから超低周波音が発生しているためと考えられた。
  • あるマンションでは、上階の人が何らかの方法で仏壇の壁を振動させているとクレームがあった。そこへは結局行かなかったが、何回か電話をしているうちに、このマンションは超高層で、しかも海岸沿いに建つ吹きさらしのマンションであることがわかった。結局このマンションは風で建物が微振動をし、仏壇の壁をゆすっていることがわかった。これは原因がわかればそのまま理解をしていただくしかなかった。
  • 新しいスーパーができて、隣地に立つマンションからスーパーの室外機の騒音のクレームが来た。調べてみると、室外機のON、OFFによる違いがないことが分かった。結局マンションの中の騒音は既存のトランスの微弱な駆動音であることが分かった。

後半の問題は、まだ騒音の技術が1900年のセイビンの室内音響から始まってまだ新しく一般化されていないためと考えられるが、前半の津波の話ともども現在進行形の最先端の話である。

2022/01/05

横浜ボートシアターの遠藤啄郎さんの言葉「この世界は全て図形なのだということがわかった」

横浜ボートシアターの代表の遠藤さんが2020.2.7に亡くなられ、後に開かれたしのぶ会でいただいた書面によると遠藤さんが亡くなる前の臨死体験で、「この世界は全て図形なのだとわかった。自分にこだわっても仕方がない。その有様を見てさっぱりした。」とおっしゃり、目をキラキラとさせていたとのこと。

遠藤さんは舞台では「小栗判官照手姫」の中で仮面を多用し、説教「愛護の若」より「恋に狂いて」では紙の人形に囲まれていたこともあるので、仮面や人形などを思い浮かべるならわかります。

なぜ「この世界は全て図形なのだということがわかった」とおっしゃったのかずっと気になっていました。

最近思い出したことですが、東京工業大学すずかけ台校舎の建築学科の建物の入り口にいくつか記されている偉人の言葉のうち、ルイス・カーンの「I always start with squares no matter what the problem is.」という言葉があります。

正確には忘れてしまったために1月4日に外壁を撮ってきました。それは多分 「どんな問題でも私はいつも四角から始める」 という意味だと思います。

この話と横浜ボートシアターの遠藤さんの言葉は似ていませんか?遠藤さんの作品、小栗判官照手姫も愛護の若も物語は複雑ですし、ルイス・カーンのソーク生物学研究所やキンベル美術館も美しくかつ複雑ですが、もとは多分単純な図形からできているのではないかと思い始めています。

 

2022.01.04 15:00頃 東京工業大学の建築学科の校舎外観、
ほぼ中央上部にルイス・カーンの言葉が彫りこまれている。

外壁にあるルイス・カーンの言葉

音で言えばすべての波は正弦波から組み合わせることができるというフーリエ変換がその代表例かもしれません。現在は高速フーリエ変換(FFT)を用いて、周波数分析が即座にできて技術を前に進めることができます。

遠藤さんの世界は図形からできているも、ルイス・カーンの四角から始まるも、フーリエのすべての波形は正弦波からできているのもその後の作者自身の成果品が素晴らしいためになるほどと思えますが、それをまねすることは簡単ではないです。

とくに図形から「小栗判官」を生み出すのは大変なことです。願わくば遠藤さんにまたお会いして、遠藤さんの演劇を見てみたいと思います。