横浜ボートシアターの代表の遠藤さんが2020.2.7に亡くなられ、後に開かれたしのぶ会でいただいた書面によると遠藤さんが亡くなる前の臨死体験で、「この世界は全て図形なのだとわかった。自分にこだわっても仕方がない。その有様を見てさっぱりした。」とおっしゃり、目をキラキラとさせていたとのこと。
遠藤さんは舞台では「小栗判官照手姫」の中で仮面を多用し、説教「愛護の若」より「恋に狂いて」では紙の人形に囲まれていたこともあるので、仮面や人形などを思い浮かべるならわかります。
なぜ「この世界は全て図形なのだということがわかった」とおっしゃったのかずっと気になっていました。
最近思い出したことですが、東京工業大学すずかけ台校舎の建築学科の建物の入り口にいくつか記されている偉人の言葉のうち、ルイス・カーンの「I always start with squares no matter what the problem is.」という言葉があります。
正確には忘れてしまったために1月4日に外壁を撮ってきました。それは多分 「どんな問題でも私はいつも四角から始める」 という意味だと思います。
この話と横浜ボートシアターの遠藤さんの言葉は似ていませんか?遠藤さんの作品、小栗判官照手姫も愛護の若も物語は複雑ですし、ルイス・カーンのソーク生物学研究所やキンベル美術館も美しくかつ複雑ですが、もとは多分単純な図形からできているのではないかと思い始めています。
音で言えばすべての波は正弦波から組み合わせることができるというフーリエ変換がその代表例かもしれません。現在は高速フーリエ変換(FFT)を用いて、周波数分析が即座にできて技術を前に進めることができます。
遠藤さんの世界は図形からできているも、ルイス・カーンの四角から始まるも、フーリエのすべての波形は正弦波からできているのもその後の作者自身の成果品が素晴らしいためになるほどと思えますが、それをまねすることは簡単ではないです。
とくに図形から「小栗判官」を生み出すのは大変なことです。願わくば遠藤さんにまたお会いして、遠藤さんの演劇を見てみたいと思います。