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2022/05/17

フードコートの騒音対策

 

フードコートにいくと、大勢の親子連れ客で大賑わいである。さらに騒音が非常に大きくうるさい。人が大勢いるから当たり前と思われるかもしれないが、これは、実は海外のショッピングモールであるIKEAやコストコではグラスウール吸音材が天井一面に使われていて、カフェやレストランでは大勢、人がいてもとても話しやすい。

日本でも、30年ほど前は、人が大勢の集まるショッピングセンターなどの天井は、岩綿吸音板が当たり前のように使用されていた。しかし、最近はショッピングモールで吸音材が使われているところをほぼ見かけなくなっている。

試しに、あるフードコートの室内騒音を計測してみると、ガヤガヤと何を言っているか聞き取れない騒音(ノイズ)で満ちており、常に75デシベル(以下図 騒音レベルグラフ)ほどある。

図 あるフードコートの騒音レベル(30秒間)

 ここで天井による騒音対策を考えてみる。

Beranekの拡散音を含む室内の距離減衰式を示す。

   LpLw+10Log101/4πr2+41-α)/(Sα)) dB

ここでLp:室内音、Lw:パワーレベル、ここでは話声のパワーレベル、

    r:音源からの距離、S:室内表面積、α:平均吸音率 

ここでは大勢の人声が音源のために、直接音成分を除き、拡散音成分だけを取り出して検討する。

LpLw+10Log104(1-α)/Sα))dB

Lwは話声のパワーレベルのため一定と考える。吸音率は仕上げ材によって表のように変化する。ここでは天井がプラスターボード、岩綿吸音板厚9mmとグラスウール32k厚50mmを比較する。さらにここでは簡易のため、音声の成分の大きい500Hzで比較する。

表 仕上げ材の吸音率

材料名

空気層

125

250

500

1000

2000

4000

岩綿吸音板9mmPB捨て張

300

0.26

0.18

0.36

0.55

0.65

0.8

グラスウール32k厚50mm

0

0.2

0.6

0.9

0.9

0.85

0.85

石膏ボード912mm

45

0.26

0.13

0.09

0.05

0.05

0.05

Pタイル張り

0

0.01

0.02

0.02

0.02

0.03

0.04

  
  フードコートの室形状を10m×10m×CH3mと仮定して検討する。

室表面積Sは、S=(10×10)×2+10×3)×4320

床・天井の面積は10×10100

平均吸音率αはα=(100×α+110×0.1+100×0.02/320

石膏ボード厚9-12mmの吸音率0.09のとき、平均吸音率は0.069

室内音圧レベルはLpLw7.7dB

岩綿吸音板9mmの吸音率0.36のとき、平均吸音率は0.1531

室内音圧レベルはLpLw11.6dB

グラスウール32k厚50mmの吸音率0.9のとき、平均吸音率は0.322

室内音圧レベルはLpLw15.8dB 

天井が石膏ボードの時を基準とすると、岩綿吸音材の時は3.9dB、グラスウールの時は8.1dB音圧レベルが低減し、効果があることが見受けられる。 

騒音が小さくなれば、まわりで話す声も小さくなり、相乗効果で静かな空間となり快適性も大きく向上するはずである。また500Hz帯域で検討したが、より騒がしいい1000Hz帯域以上は吸音率からみると、より効果があるはずである。

なぜ天井に吸音材を使わなくなったのか気になるところである。設計をするときに、音に配慮せず、デザイン優先で使用しなくなった可能性もある。

また吸音材を使おうと思っても、メンテナンス性や、不燃材の必要、耐久性、コスト、法律などの点で見合うものが見つからないこともある。

岩綿吸音板を使用した天井が経年変化で、なんどか塗装をして、次第に吸音効果が少なくなってきている場合も見受けられる。塗装後の吸音性能は見るからにも低下しているため、岩綿吸音板を使わなくなってしまっている可能性もある。 

そこで天井面積の30%程度にグラスウールを添付することを考えてみる。たとえば幅900mmのグラスウールを天井の壁際のみに用いた場合の効果を計算する。

平均吸音率α=(32.6×0.9+67.24+30×4)×0.09+100×0.02)/3200.197

音圧レベルLpLw+10×Log4(1-0.197)/320×0.197)=Lw-12.9  dB

天井の周辺にグラスウールを用いた場合には、プラスターボードのみの天井よりも5.2dB程度、騒音の低減効果が出ており、岩綿吸音板のような効果が期待できる。天井はプラスターボードとし、天井周辺のみグラスウール厚50を貼り、改修時にグラスウールのみ取り換えることもできるように思う。