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2024/03/25

「52ヘルツのクジラたち」を読んで

 著 町田そのこ、52ヘルツのクジラたち、中央公論新社

川和小学校のコミュニティハウスで、音響技術者が喜びそうな名前の本があって借りた。ただし音響技術者にとっては、JISの基準がオクターブバンドで言えば、63Hzから始まって4000Hzまでが評価の対象で、52Hz(ヘルツ)は63Hzのバンドに入る低い周波数である。しかも感度が高い周波数より、床衝撃音を除いて比較的騒音対策の対象になりにくい。

しかしこの本は、p.71に「52ヘルツのクジラ」の意味を書いている。「普通のクジラと声の高さが-周波数って言うんだけどね、その周波数が全く違うんだって。クジラもいろいろな種類がいるけど、どれもだいたい10から39ヘルツっていう高さで歌うんだって。でもこのクジラの歌声は52ヘルツ。あまりの高音だから、他のクジラたちには聞こえないんだ。」 とにかく騒音問題を扱っているのではなかった。一般の音響技術者であれば、うるさいので何とかしなければと思うのだけれど、この本では、歌っている52ヘルツの音が他人に聞こえないことが問題なんだということがテーマなのだ。

主人公は再婚した義父や母にいじめられ、たまたま雨の中であった少年もやはり親にいじめられ、お互いに、いいことも暴力的な悪いことも死に直面するようなこともありながら、様々な出来事があり、最終的にはお互い助け合いながら生きていこうという結論。話はとても展開が早く、映像的で、最後まで一気に読んでしまった。

話はとても現代的なテーマで、この意志や気持ちが伝わらないことは、より敷衍的にも展開でき、お互いに助け合っていかなければということがメッセージだとも感じた。