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2024/08/23

ガザ日記 アーティフ・アブー・サイフ著、中野真紀子訳 地平社刊

 .25 「砲弾が落ちるたびにホテルン体が揺れるのを感じながら、頭の中を過ぎるイメージのどれが夢で、どれが現実なのかわからなくなってきた。」

.121「このすべてが現実であり、既に死んでしまった誰かの夢ではない、、」 

.266 「ドローンは私の頭上をホバリングするのをやめない。ブンブンという音がずっと連続している。ときおり爆発音も聞こえるが、とても弱々しい。これは現実なのか、それともただの記憶か定かでなく、私は頭を振ってみる。」

これが現実であるか、死んでしまった跡のことか、、というような言葉がいくつか出てくる。

実は3年ほど前に、私は夜、脳梗塞で倒れ、病院に運ばれて手術をして、幸い何とか生き残った経験がある。しばらく入院した後、家に帰って、ある時、何かのために食器棚をあけたら、「これが現実だ、私は生きている」という実感を持った。その後も何度か似た出来事があったが、それに近い感じのことがたくさん出てくる。

この本の最初は、海で泳いで家族がくつろいでいるところから始まる。そのとき何の前触れもなく、ロッケト弾と爆発音が鳴り響くところから始まった。その後は毎日砲撃をうけ、たくさんの破壊と殺戮されたことと、遺体を片付けたり、救出したりすることがたくさん出てくる。

また破壊され、がれきになった街で、毎日食事をすることが大変で、食べ物を手に入れることがすごく困難になっていたようだ。

.187 七面鳥の肉を手に入れて、「私たちは、まだ完成していない2階の床で火を起こした。私は小麦粉に水と塩を混ぜた。ムハンマドの助けを借りて、その生地を塊に分け、焼き上げる準備を整えた。火の上に金属の一片を置くと、それは熱せられて手作りの「フォルノ(かまど)」になった。」 ガスや電気が使えなくなり、また街に食材の店が亡くなり、かまどを作り、料理をたびたびすることが出てくる。ここで登場するのはパンのことが多い。日本では必需品は米だ。

作者は作家で、パレスチナ関連の執筆も行っているようだ。

.124 「一つの民として、私たちは記憶されることを望み、自分の物語がかたられることを望んでいる。」

これが戦場の中で、なんとか生き延びながら書いた動機と思われる。ひどく生々しかったが、生きるという意志は強く感じた。