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2024/02/04

住宅の機能:親戚や近隣が家に集まれるか。

 今年(2024)の正月1日は、能登半島で輪島市付近を中心として大地震があり、多くの住宅が倒壊し、多くの人が圧死した。道路が倒壊した住宅や、がけ崩れや、断層・亀裂などで寸断され救助になかなか行けないことが続いた。県がやっと二次避難所を開設し、避難を呼びかけたが、思うように避難ができていない。124日の天声人語には『県は2次避難を呼びかけるが全体の2割程度にとどまっている。理由は様々だが、住み慣れた地を離れたくないと願う人が多い。』 『2007年に能登で起きた地震では、中略、輪島市内の高齢化率が5割超の集落で約300戸のうち、世帯流出したのは4戸だけだったという。』『家は自分が住む以外に、盆や正月に皆が集まる場所だと気づく。』 多くの家が倒壊し、多くの人命を失ったことは、建設業界にいた身として、何とかできなかったのかという思いだ。多くの古い家屋は、大きなガラス戸やふすま戸があり、開口部が多く、耐震要素はどちらかと言えば耐震壁ではなく、貫のことが多い。貫はある程度時間が経つと、しっかりと固定しているのではなく、ゆるみが出てきてしまうのではないか。または貫だけでは地震に対する耐力が不足している可能性もある。今後この解決方法について研究をしていかないといけないように思う。

 またこの天声人語の話としては、地震があって2次避難を呼びかけても全体の2割程度にとどまっているのは、住み慣れた地を離れたくはないという理由だ。家は自分が住む以外に盆や正月に皆が集まるところだとのこと。具体的に言えば正月や盆には親戚や地域の人たちが集まるところ、また親戚の人や地域の人が集まったり、さらに泊まれることなども含まれる。家の平面的な形態のことで言えば、広い居間、床が畳であれば簡単に融通が利くが、机・椅子での生活の場合には、家族の数以上に椅子の数が必要となる。また寝室も家族以外に必要なことが多い、さらにトイレや洗面についても余裕が必要な気がする。そう考えるといま旧住宅公団が開発した最小限住宅の延長線上にある集合住宅の形態では十分ではない。さらに人が集まっている場合でも、耐震的に十分満足し安全である必要もある。そうなると建設費用も今までより増大し、更には建設場所や土地取得も費用の観点から満足させる必要がある。

  昨年の統計では東京周辺の人口が増え、地方では減ってきている傾向があるようだ。したがって益々土地代が上がり、家は狭くなり、建設費も上昇することになる。道路や電車も混むようになり、災害時の被害が大きくなる可能性も増えることになる。その結果、住宅はますます狭くなり、余裕のある空間は作れなくなってしまう。また地方はますます人口が流失して、農業・漁業や林業の担い手が減ってきてしまうことになる。さらに芸能で言えば地芝居やお囃子などのお祭り、神楽などの担い手が減ってきてしまう。さらに人口が減少することで更に人口の偏在化が顕著になってくるように感じる。農業・漁業・林業および地方の芸能を必要な産業と考えると一気に現在は非常に重要な経済の転換点と考えてしまう。