5月6日土曜日に、清水さんと東京フォーラムのAホールでラ・フォル・ジュルネ東京のコンサートに行ってきました。清水さんは元東京工業大学の連繋教授で、元ヤマハの技術研究所で、前回のブログの「室内音響の歴史と変遷 ―ホールにおける「残響」の歴史―」というテーマに登場してきた方です。ここ東京フォーラムのホールAの音響設計も担当されていました。
ラ・フォル・ジュルネの今回のテーマの「ベートーヴェンは、実は2020年に企画していたが、新型コロナ禍のために、2020年から2021年、2022年と3年間も断念せざるを得ず、やっと4年ぶりに開催ができたようです。
音楽のテーマはについて、パンフレットの中に、べートーヴェンの作品は「ヒューマニズムにあふれ、人間愛と思いやりを今もなお人々の心に届けるという意味においても音楽史上唯一無二の存在です。」とパンフレットに書かれています。
待ち合わせの約束の時間にはまだ早かったので、東京フォーラムの中庭でサックスのカルテットが演奏をしていたのを聞いてみました。中庭で、しかも音の大きなサックスのために電気音響はひょっとして不要かとも思いましたが、電気音響も使って演奏していました。この場所で結局清水さんと会って、ホールAに行きましたが、ホールAは5000名も入るホールなので、お客さんが入場するだけでも時間がかかるようです。日本のホールとしては最大のホールです。舞台間口は30mほど、その他にさらに横に広がっていて、多分客席間口は60mほど、我々の席は舞台からやはり60mほど、2階席後ろは100mほどになりそうです。したがって間口の側壁から反射音があるとしたら、100ms以上は遅れてきそうで、そのままではエコーになってしまいます。したがってプロセニアムや側壁の様々なところにスピーカが設置してあり、残響音を付加しているようです。
演奏の音楽は、やはり舞台の楽器を音源に拡がってきている感じがよくわかりました。側方の反射音による音に包まれた感じは得られていない。ただエコーなどの音は多分スピーカが補助をしている関係から不自然な感じではなく、規模の大きなホールで聴いている感じです。ひょっとしてギリシャの野外劇場もこんな音かもしれないと想像してみました。私もホラインと東京フォーラムの設計コンペに参加して、この5000名のAホールはギリシャ劇場の扇型のほぼ1階席でできている形にしました。この形は、側方反射音はありませんが、天井からと、ところどころから反射音が来るような感じにできるかもしれないと思っていました。この設計コンペには元NHKの浅野さんも参加していました。できていたらどんな音になっていたか気になるところです。いろいろ思い出しました。
ラ・フォル・ジュルネとは熱狂の日というような意味だそうですが、東京フォーラムの中庭でも、またその外の場所でも演奏があったようだし、東京フォーラムの建物の多くの場所で演奏があるようです。たしかに熱狂の日にふさわしい趣向です。テレビの番組でブラジルのサンバの特集があり、サンバの女王がサンバは抵抗(の象徴)だというようなことを言っていた。もともとは黒人が奴隷で生活していた時に、1年に一回サンバを踊れる習慣ができたようです。そういうような熱狂的なものが日本にあるかは正確にはわかりませんが、収穫後の秋のお祭りもちょっとそれに相当しているように思いました。熱狂の日と呼べるように、我々が演奏するお囃子もクラシック音楽で言えばベートーヴェンのような音楽を代表するようなものと思うようになった。