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2023/02/08

マンションの中の音楽練習室の防音の必要性

 音楽室の練習音はおおよそ100BAの大きさが出てしまい、一般のマンションの遮音性能は建築物の遮音性能基準と設計指針〔第二版〕によると、コンクリートの界壁はおおよそ4550BAのため、5055dBAの音が隣接する住戸に透過してしまう。建築学会編の「建築物の遮音性能基準と設計指針〔第二版〕」の一部を抜粋して掲載する。これによると外部騒音などの不規則変動音は50BAで「多少大きく聞こえる」、55BAで「大きく聞こえ少しうるさい」となる。

 表 表示尺度と住宅における生活実感との対応の例

騒音レベル

騒音等級

外部騒音

内部騒音

道路騒音などの不規則変動音

工場騒音などの定常的な騒音

自室内の機器の騒音

共用設備からの騒音

 

 

 

 

 

 

25dBA

N-25

・通常では聞こえない

・ほとんど聞こえない

・ほとんど聞こえない

非常に小さく聞こえる

30 dBA

N-30

・ほとんど聞こえない

・非常に小さく聞こえる

・非常に小さく聞こえる

・小さく聞こえる

35 dBA

N-35

・非常に小さく聞こえる

・小さく聞こえる

・小さく聞こえる

・聞こえる

40 dBA

N-40

・小さく聞こえる

・聞こえる

・聞こえる

・会話には支障なし

・多少大きく聞こえる

50 dBA

N-50

・多少大きく聞こえる

・大きく聞こえ少しうるさい

・大きく聞こえる

・通常の会話が可能

・かなり大きく聞こえる

55 dBA

N-55

・大きく聞こえ少しうるさい

・かなり大きく聞こえややうるさい

・かなり大きく聞こえる

・多少注意すれば通常の会話が可能

・非常に大きく聞こえうるさい

60 dBA

N-60

・かなり大きく聞こえややうるさい

・非常に大きく聞こえうるさい

.非常に大きく聞こえうるさい

.声を大きくすれば会話ができる

・非常に大きく聞こえかなりうるさい

 

備考

道路騒音など

工場騒音など

空調騒音、給排水管など

エレベータ、ポンプなど

引用)建築物の遮音性能基準と設計指針〔第二版〕日本建築学会編 抜粋

したがって普通のマンションでは音楽室の音は、隣戸に音が伝搬して、一般的に言えば、マンションでは防音室を作らないと、隣戸に影響を与えずには一般の音楽の練習はできないことになる。

そこで壁の遮音性能を目標Dr-70として、対策を考える。また音の伝搬は空気伝搬音と固体伝搬音の2種類があることを念頭に浮構造として対策を立てる。Dr-70とすれば、室内で100dBAの音が、隣戸で、1007030dBAとなり、外部騒音などの不規則変動音は「ほとんど聞こえない」となる。固体伝搬音の対策としては、防振ゴムで支持する浮構造を用いる。

 また音楽練習室の防音仕様としては、浮床は適度な剛性のある木製の床が好ましいと思われる。コンクリート浮床は厚さ100mmで2400N/m2(約240kg/m2)もあり、建築基準法の住宅の積載荷重制限の1800N/m2(約180kg/m2)と比較して重すぎるために用いにくい。しかし木製とすると今度は面密度が軽すぎて重量床衝撃音に対して増幅してしまう。そこで2019年に建築学会大会で報告した床仕様を音楽練習室の床仕様に配慮することが好ましく思われる。(2019年の建築学会大会の梗概集:ヘルムホルツ共鳴器を有する乾式遮音二重床の開発 集合住宅の改修への適用

また浮壁および浮天井は音楽に応じて適度に面密度を大きくし、更にボルトなどで既存の壁や天井にアンカーをとらない方法としたい。アンカーボルトを既存の壁や天井に設置すると施工時に騒音が大きくなり、周辺の住民に迷惑がかることと、当物件を販売するときにも、解体時の騒音が大きくなる。もちろん浮床のコンクリートの解体は壁や天井の遮音層より大きな騒音となると想像できる。

音楽練習室の内装材は特にマンションの場合には不燃材で仕上げることが好ましい。暖房・冷房用の室内機は、浮構造の壁の下地に設置することが好ましい。また換気扇も浮構造の中で納めたい。換気扇の入力・排気の納まりはロスナイなどを用いて暖房や冷房効率を上げることが望ましい。

音楽練習室用の内装については、人の好みや音楽に質などがあり、一概に決められない。設計段階できめていければいいように思う。


                  

                        図 音楽練習室の概略断面図