日時;2025年10月2日(木)午後6時30分から
場所:銀座王子ホール 座席数約300席、シューボックスタイプ
曲目:ソナタ第一番、ソナタ第4番、ソナタ第7番、ソナタ第14番「月光」 アンコール曲
演奏は杉山哲雄。主催:杉山ムジーク・アカデミー
このコンサートは建築家の濱口オサミさんに紹介された。以前渋谷で、杉山さんのピアノの練習スタジオの設計に音響設計の立場からかかわったことがある。設計は(有)濱口建築・デザイン工房、建物は渋谷にある大きな集合住宅の一階で、この住戸部分は、台所とトイレを残し、あとは1室を浮構造にして、遮音対策をした。この浮構造は、床は木造のヘルムホルツ床を用いている。
杉山さんのプロフィールを見るとわかるが、伊勢市出身で、濱口さんと同郷となる。濱口さんは私と東工大の同期なので、多分杉山さんも似たような年だと思われるが、ものすごく元気だ。プログラムのチラシの後ろ側には2026年、2027年の予定まで書かれている・
しかも演奏は楽譜を見ないで力強く演奏している。杉山さんのプロフィールには、バッハ、モーツァルト、ベートーベンのリサイタルで、古典調律を用いたとある。この古典調律は何を意味しているか正確には解らないが、純正律を中心とした音律のことではないかと思う。モーツアルト、ベートーベンの時代はこの純正律を用いることによってきれいなハーモニーができるようになった。ただ現在は平均律という音律になり、正確には純正率より美しい響きではない。チラシには「ベート-ベン没後200年(2027年)に完結するベート-ベン全ソナタの連続演奏会は、ベート-ベンの創作の本質に光をあてるものである。」 と書いてある。気合が入っている。しかもいずれの曲も力に入った演奏だった。この曲の最後の曲はソナタ第14番“月光”で、月の光が水面に反射してキラキラしている印象があるが、この曲は作曲した当時から人気のあった曲だとある。このような主観的に表現が出来る曲はいいが、コンサートのチラシは、ピアノの演奏の技術的な説明が多く、例えばソナタ第一番では、「全曲を統一する6度の音程や下向音型を含んで、上昇する音の波の引き締まった音楽の表情を見せ、冒頭の動機の反行形よる第二の主題による第二主題も無駄がない。」 とあってなかなか曲の技巧的な説明は分かるが、曲の雰囲気は私には伝わってこない。第4楽章プレスティッショモの説明で、「第一主題の和音は、「闘争」を感じさせ、独創性がある。和声の微妙な変化が美しい経過部をへて、穏やかな第二主題がなだらかな地平線を思わせる。」 やはりベートーベンの曲は言葉で表すことが難しいことがわかる。ただ感情的な動きによって、強い意志を感じさせる美しい曲だった。やはりベートーベン創作の本質に迫るには、最期の2027年6月まで聞く必要がありそうである。