日時:2025年9月21日(日)4:00公演
場所:横浜市磯子区民文化センター 杉田劇場 300席、可動音響反射板設置状態、席は自由席だったので、前半は上手桟敷席、後半は最前列に座ってみた。ここの劇場は響きが豊かで、半分より後ろの席の方が響きがよいと考えてのことだろうか、そこで前の席は空いていて、席を替わることが出来た。この劇場は20年以上前に私が音響設計の観点から設計に関与していた。可動音響反射板を備えていて、可動音響反射板設置状態では、できる限りクラシック音楽に好ましい状態になるように残響をできるだけ伸ばし、幕設備にしたときには、客席はそのままで、幕設備の吸音によって、芝居にとって好ましい状態にしたつもりであった。今回のジル・アパップの公演では、音響反射板設置状態だったので、響きを多く感じることが出来た。特に高い音の多いヴァイオリンは、いい響きだ。またギターは音が小さいので、最前列でもいい音が聞こえることを確認した。これがある芝居になった時には、舞台に天井も含む、大きな部屋を舞台装置としたため、コンサートの時の様に残響が長くなってしまい、声が明瞭に聴こえないときがあった。この劇場の名前が杉田劇場という名で、劇場を主に設計しているような印象があるが、本当はコンサートに対してできるだけ残響を長くした設計をしている劇場だ。その時には演劇団体にこのいきさつについてメールをしたことを覚えている。舞台を囲うような舞台装置はできれば板材でなく、音が吸音できる布のようなものでつくれればいいのだがと、話した。
出演者:ジル・アパップ(ヴァイオリン)、高木洋子(ピアノ)、カンパ―ニア(ギターアンサンブル)、柴田杏里(ギター)
プログラム:曲目はプラグラムに示してあるが、実際にはその前後に追加の公演があった。
ジル・アパップの演奏スタイルとギターやピアノの演奏スタイルは大きく違い、ジル・アパップは歩き回りながら演奏し、一緒に演奏している人に対して身近な感じで挨拶しながら演奏する。楽譜も一切見ない。しかも見るからに楽しそうに演奏する。ギターのアンサンブルの人たちやピアニストの高木さんにもあいさつしながら演奏する。ギターの柴田さんの時には、二人とも椅子に座って演奏していたが、ジル・アパップは体を動かしながら、柴田さんは楽譜を一生懸命見ながら演奏していた。コンサートのタイトルに、「ジル・アパップ その笑顔は偏西風にのってやってきた。」とあるが、確かにこれが音楽だと言わんばかりの雰囲気だった。スペインでフラメンコを踊るときのギター演奏は、今回のような真剣な表情ではなく、もっと楽し気なリズムを大事にした雰囲気のように思う。次回はフラメンコダンスを伴ったギター演奏が聞きたい。その時にはジル・アパップもヴァイオリンで参加できれば素晴らしい。実は弊社に10年近く前に、スペインから来たアントニオ・サンチェス・パレホという音響技術者がいた。彼は時々フラメンコの公演を新宿や日暮里で見ていたようだ。私も双方に行ったことがある。ある時両親が来て、日暮里のフラメンコの公演を見に行った。そうしたら初めてなのに、お母さん、カルメンさんという名前だったが、フラメンコの踊りに参加し始めた。何ということは無い、まったく溶け込んでしまった。楽しむと言うことはこのことだと実感した。