歌劇『カヴァレリア・ルスティカーナ』の作曲はピエトロ・マスカーニ、歌劇『道化師』の作曲はルッジェーロ・レオンカヴァッロ、これらのオペラは民衆を題材に、しかも彼女の不倫を理由に、彼氏同士が決闘などしたりして激しく幕が終わる。このような出来事は物語になりそうで、音楽も美しいが、民衆の中によくある出来事なら、落ち着いて生活が出来ない。わが生活を見てほっとする。だから物語になるので、オペラは貴族たちの物語だけではないこともわかった。
2024年4月21日(日) 14時開演、17時終演
ティアラ江東は地下鉄半蔵門線の住吉駅から歩いて、数分程度の、都立猿江恩賜公園の中にある施設で、ティアラとは「宝冠」のことのようだ。たしかに外観は円弧のガラスカーテンウオールのファッサードだからか、名前に注釈が必要だ。一般名称は江東区江東公会堂。建築設計は久米設計。建物はきれいで、舞台の機能も、客席のデザインもこなされていて、演劇関係の公演やコンサート、さらにオペラの公演も対応が出来ている。客席のデザインも舞台と客席が対向するだけでなく、二階席は桟敷席が1階席を取り囲んで、空間の一体感を盛り上げている。
客席は通常固定席1,228席(1階848席、2階380席)ではあるが、1階の前方の客席はオーケストラピットができていてオペラにも対応している。ただし1階席の客席は100席ほど少なくなっているはずだ。当日、1階席は満席であった。舞台は幕設備となっていて、いくつかの舞台装置がある。
オペラ歌手に関しては、出演者は4月20日の公演と、4月21日の公演が別グループになっており、さらにカヴァレリア・ルスティカーナと道化師の出演者も別グループになっている。演出は土師正人、指揮は諸遊耕史、オーケストラは江東オペラ管弦楽団、さらに江東オペラ合唱団、および四街道少年少女合唱団、またさらにダンサーが数名いる。総勢大人数となるが、チケット代は4000円で購入者としてはお得な値段である。
カヴァレリア・ルスティカーナの主演は末廣貴美子で、何度か見ているが、声がきれいで、しかも音量が大きく、今までで一番良かったのではないか。多分建築空間もよかったとおもう。
オーケストラはプロセニアムの客席側にあるために、響く空間の中にいて、大きな音で響く。何となくワーグナーの気持ちになった。もうすこしオーケストラの音を舞台の下などに潜り込ませて、歌手の声を響かせ目立つようにできたらと思ったが、これは現在の設計上の難しいところだ。オペラの演出上の悩ましさは、歌舞伎のように花道をつかって俳優が舞台を出て客席の中に入るようなことは、この大人数のオーケストラをさけて行う必要があり、なかなかむつかしい。また単純に言えば、観客が舞台の近くまで寄れない、と同時に俳優も観客の近くに寄れない。今後の演出上のテーマがあるように思う。