2023年7月1日(土)の16:00より、深川江戸資料館 小劇場で、歌劇「イルトロヴァトーレ」を聞きに行った。深川江戸資料館は、メインで江戸時代の江戸(多分深川)の長屋の実物大の模型があり、観客の半分は外国人が、子供を連れてきていた。中には、船宿やお店が並んでいた。私は公演より1時間ほど早めに行って、これらを見学した。
さらに小劇場は、内装が、木造の民家のような、木組を使って作られたような空間で、この江戸資料館にはふさわしい感じとなっている。舞台は幕設備となっていて、背景にはスクリーンがあり、舞台セットの代わりに、場面ごとの背景が映し出されていた。また歌の対訳のスライドもスクリーン上部に映し出されていた。客席後方で、場面ごとの背景用と、対訳用のプロジェクターが設置されていた。
収容人員はホームページによれば、客席232席とのことで、こじんまりとした劇場である。舞台も図面を大まかに読むと、間口は約12m、奥行きは約8mである。歌劇の舞台としては、俳優が数人と、グランドピアノが左手(下手)にあり、ピアノの鍵盤は客席側で、蓋は舞台の俳優側に向かって開けてある。舞台セットは石の柱が2本が両脇にあるだけなので、俳優の動きに邪魔な感じはない。ただし幕設備もスクリーンも強いて言えば吸音材なので、音が客席の方向へ向かうのはほぼ直接音だけとなってしまっている。したがってオペラの舞台としては吸音が多いため、ピアノも大きな音で、またオペラの人も大声を出して、演じる必要があったのではないか?もう少し舞台を囲うような舞台セットがあればよかったような気がするが、費用の問題があるのかもしれない。
以下に示すパンフレットにあるイル・トロヴァトーレのあらすじによれば、15世紀初頭、スペインのアラゴンのできごとで、先代の伯爵には二人の息子があり、兄は今の伯爵(ルーナ伯爵)、弟(マンリーコ)は幼い頃より行方不明で、今も捜索が続けられている。実際はジプシー女(アズチューナ)がさらったが、マンリーコはこのアズチューナを実の母と思いこむ。さらにアラゴン侯爵夫人の女官(レオノーラ)が謎の吟遊詩人(イル・トロヴァトーレ)、実はマンリーコに思いを寄せる。しかしさらにこのレオノーラにルーナ伯爵も思いを寄せている。したがって話としてはルーナ伯爵と実際の弟マンリーコは恋敵となって話が展開する。さらにジプシー女が昔の恨みを晴らすために暗躍する。
物語そのものは悲劇で終わるのだが、物語としては一瞬結婚式になりそうになったり、決闘の場面があったり、火あぶりになったり、ドラマティックな展開が面白いので、魅力的なオペラ展開となっている。
物語の時代の15世紀(1400年代)は、日本では室町時代、戦国時代に入る前、中国は明の時代が始まったばかり、イタリアではブルネレスキがフィレンツエにルネッサンス様式のマリア大聖堂を建設したころとなっているが、実際の原作はスペインのアントニオ・ガルシア・グラディスで、1836年のことのようだ。日本で言えばほぼ幕末。オペラ「イル・トロヴァトーレ」はヴェルディの作で、1853年のことである。なんでこんなドラマティックなオペラができたのだろうか?観客は大変楽しんだと思う。そのような時、世の中が安定しているといいと思うのだが。日本では江戸時代の終わりに近い時で、旧金毘羅大芝居金丸座が1835年にできている。