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2012/10/24

横浜ボートシアターの第1回船劇場語りの会


10月14日(日)16時より、横浜ボートシアターの第1回船劇場語りの会と題した公演が第七金星丸で開催されました。私は残念ながら打ち合わせが入ってしまい、大遅刻をしてしまいましたが、最後の語り、宮沢賢治作の『水仙月の四日』だけを聞くことができました。

松本利洋のエレキギターによる伴奏で、吉岡紗矢の語りです。音楽は、語りや演技が伴うと、それらの表現空間をより後押しする役割も大きいことを感じます。昔から歌舞伎、人形浄瑠璃やオペラ、ミュージカル等には伴奏音楽がついています。横浜ボートシアターの公演にもガムランのような音楽がついていることが多いのですが、これも効果的です。

公演の後には、お茶を飲みながらの反省会が船で行われましたが、松本さんは6つの全ての語りをほぼ即興で伴奏をしたとのこと。2度とは聴けない貴重なものです。内輪の会でしたが、お客さんもかなりいらして今後の船劇場の可能性を期待します。

キンボー指揮 神奈川フィル第284回定期演奏会


10月12日(金)横浜みなとみらいホールで行われた神奈川フィル定期演奏会に、NHKホールを設計した元NHKの浅野さんと一緒に聴いてきました。

曲目はブラームスの『ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品77』後半はウエ―ベルンの『交響曲作品21』、J.シュトラウス2世の『皇帝円舞曲作品437』、ラヴェルの『ラ・ヴァルス』、今日のテーマはウイーンのようです。感動的だったのはヴァイオリン協奏曲の独奏者、韓国出身のシン・ヒョンスの演奏で、華やかで素晴らしく、拍手鳴りやみませんでした。アンコール曲は、まず自らピッチカートで伴奏を演奏し、楽団員が次々にそれを演奏し、全員が演奏したところで演奏を始める即興的で楽しい印象的な演出でした。

ウエ―ベルンの曲は、1928年ウイーンで作曲された暗い感じのものですが、それが情念になってふつふつと意思を感じるようになって行きます。『皇帝円舞曲』は華やかりしウイーンそのものです。ラヴェルの『ラ・ヴァルス』は様々な印象のワルツの曲が混ざっているちょっとイザイの無伴奏のような曲ですが、複雑で奥行きのある構成的なすばらしい曲です。

元NHKの建築家とはウイーンの建築家ハンス・ホラインと共同で、新国立劇場や東京フォーラムの設計コンペに参加したので、ウイーンも指揮者のキンボーさんもよく知っています。演奏会の後は演奏会のこと、ホールの音響のこと、キンボーさんのこと、ウイーンのことなどをつまみに一杯飲み、楽しい一晩を過ごしました。  

2012/10/22

高橋和久主演 『くれない坂の猫』



1051900、赤坂RED/THEATERで行われた『くれない坂の猫』を観ました。
赤坂RED/THEATERは、華やかなエスプラナード赤坂通りに面した赤坂グランベルホテルの地下にある劇場で、とても見やすい劇場です。そのホテルの隣は、外国人ばかりが道路まではみ出して話しながら飲んでいるロンドンやニューヨークのような雰囲気のバーがありました。

話は大阪万博の建設のころ、西向きの夕日のきれいな坂道の上にある整骨院が舞台。さえない、しかし気の良い医師がいる整骨院では、近所の人のたまり場になっています。そこへ万博の現場で働いている在日の若い労働者が、骨折したと仲間に運ばれて来ます。整骨医で働いている娘さんがその青年に恋をします。医院の周囲で西日を浴びながらゆったりしている猫に祈ると願いがかなうといううわさを信じて、彼らの未来を皆が祈ります。ユーモアとさわやかな人間性を感じた公演でした。
日本と韓国の間にも願いをかなえてくれる穏やかな『猫』が必要だと感じます。

第七金星丸主催 ダンスオムニバス『おばけ』公演



1071330 第七金星丸でのダンス公演を観ました。
タイトルの『おばけ』の意味は、大学を卒業して数年たったところで何かやってみようという人たちの集まりなので、青年が成長して『化けた』といった感じでしょうか?

5演目あり、その内3演目がダンス、1演目が演劇的ダンス、もうひとつがクセナキス作曲のドラム演奏。それぞれ質が高いものでした。演劇的ダンス『Pちゃんとボク』は自分とそれを客観的にみている自分が掛け合うほんのりとした感じのもので、舞台の下、奈落の空間も使って演出も面白かったです。最後の演目の『見えてくる』は8名がガムランの音楽に合わせて踊るもので、ちょっと幻想的です。

ふね劇場の空間は舞台と観客が一体感のある空間だということを改めて感じました。プロセニアムがないこと、舞台と観客席の床が連続していること、もちろん天井も連続しています。視覚的にも近いので演技者がよそ者でなくなります。

ふね劇場にこれほど若い人がたくさんいらしたのをはじめてみました。しかもこの日の公演は夜の部もあり、予約で満席だそうです。しかも3日間の公演でしたから、たくさんの若い人にふね劇場の魅力を知っていただけたと思います。ふね劇場も『化ける』一歩手前です。

2012/10/01

カルチェミュジコ主催 グエン・ティエン・ダオ弦楽作品コンサート



928日(金) 作曲家グエン・ティエン・ダオ(Nguyen Thien DAO)の弦楽作品のコンサートが杉並公会堂小ホールでありました。グエン・ティエン・ダオ氏は1940年ベトナムのハノイ生まれ、1953年にフランスに渡り、国立高等音楽院でメシアンに出会い、現在フランスでは有名な作曲家として活躍されているようです。チラシをいただいて急に興味をもって行くことにしました。

最初の曲は弦楽三重奏曲『梢のざわめき』、ヴァイオリン、ビオラ、チェロです。初めは細かく忙しない、しかし静かなピチカート、風の梢を揺らす葉の音、それから虫の飛んでいるような音、何か透明感のある自然を感じる音です。
次は弦楽六重奏曲1789曙、都会の通勤客の雑踏のような感じ、新しい息吹を感じました。もっとも後で調べてみると1789年はフランス革命の年、これは革命の息吹を表しているのだろうと思います。

ここで幕間。席を立つと、後ろに横浜バロック室内合奏団のバイオリニストの方がいらっしゃったので、印象的だった曲の感想を話し合いました。
後半はチェロ独奏のためのアルコ・ヴィーヴォ、弦楽四重奏曲第一番。
まず現代音楽の良くある特徴の不協和音はなく、また音は幾重にも連続していますが、ハーモニーのように音を重ねて奥行きを出すようなこともありません。こんな聞き方が正しいかどうかはわかりませんが、音や音の連続で何かを表現しているようなので、何を表現しているのか一生懸命考えながら聞いていました。音の連続はバッハの無伴奏にも近い感じがしますが、しかし振幅はより大きい。そして透明感のある風景または空間を感じます。また聴きたいと思いました。

コンサートが終わり、グエンさんは舞台に上がって演奏者を労われました。小柄で腰の低い優しそうな方でした。