4月頃、上野駅で横浜ボートシアターの仮面など小道具を作成している関野さんにばったり会い、その時に、劇団ひまわりの「アンネ」のチラシをいただきました。関野さんはこのアンネ公演の衣装を担当されており、浅草に衣装を買いに行かれた帰りとのことでした。
しばらく前の話になりますが、この公演を5月12日に観に行ってきました。ちょうど大震災から2カ月の頃です。
会場は、劇団所有の稽古場兼ホールのシアター代官山、劇団ひまわり60周年記念公演です。演出は山下晃彦で、元横浜ボートシアターの小栗などを演じた俳優であり、今は演出家として活躍されています。
舞台の始まりでは、劇場が暗くなり、どこからともなく明るい笑い声が聞こえてきます。次第に大きな声になって何人かの妖精が明るい笑い声を発しながら客席後方から登場します。これから始まる悲劇をより浮き立たせるかのように。
物語は、ユダヤ人であるアンネの家族がナチスから逃れ、街の中の事務所の屋根裏に隠れるところから始まります。外部の暴力的な状態とは対照的に、隠れ家では同居者との日常的な小さないさかいや、15歳の若いアンネがスターになる夢を描く場面、そして自分が死んでも命が続くようにと日記を書きつづる日々が描かれ、その日常と悲劇とのギャップが身につまされます。
アンネは1945年第二次世界大戦がまさに終わろうとしている3月に強制収容所の中でチフスにより亡くなってしまいましたが、その翌月の4月にヒトラーは自殺、ドイツは5月無条件降伏をしています。
この公演では、最初の妖精の登場の仕方、コロス(古代ギリシャ劇の合唱団)が出てきたり、また人々の心の模様をガムランの音楽で表現するなど、横浜ボートシアターのDNAを感じます。妖精は、アンネの心を表現する役割を果たしており、最後にも登場して彼女の夢や希望が今も我々の心に残っていることを感じさせました。