ページ

2011/07/22

海の中の音

 6月2日(木)の朝日新聞に「「音→エサ」サケに訓練」という記事があった。岩手県山田町で、サケの稚魚に対して「音」に反応して餌を食べる全国初の「学習」を開始していた。震災の9日前にスタートしていたそうだ。養殖池で水中スピーカから100~200Hzの音で合図を出し、それと同時に餌を与える試みで「音が鳴れば食事」と覚えさえる訓練である。放流した後も大きく育てられるよう、湾内で音を出して1個所に集めて餌をあげると効率的だと考えられた。しかし震災の停電により、2日目後には稚魚は学習の途中で放流することになったそうだ。とても興味深い試みであり、残念である。実験に使用されていたものが、どんな音であったか分からないが、魚にとってきっと心地よい音だったに違いない。
しかし、魚にとって心地よくない音もあるようだ。鯨類学者 Norris らが1983年に発表した論文によれば、イルカやクジラなどの鯨類は、餌となる魚やイカなどの獲物を、まともに追いかけて捕るのではなく、大きな音を出して殺した後に食べているのではないかという仮説をたてた。これは、マッコウクジラの胃の中からでてきたイカには、まれにしか歯形がみあたらないことから想定したものだ。

 さらに「ダイオウイカを殺すソナーの騒音」として、ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト( 5月4日(水)18時20分配信)に掲載された記事が興味深い。

 2003年ころスペイン沖でダイオウイカの死骸が多数見つかった。その原因は船舶が発する低周波パルス音(石油・天然ガスの探査のため)ではなかったかと推測されたが、当時は証明できなかった。今回、カタルーニャ工科大学のアンドレ氏の研究チームが実験を行い、頭足類4種(イカ・タコなど)計87匹に対して、50~400ヘルツの低周波音(海軍のソナーや石油・天然ガス探査時など海洋で発生する標準的なレベルを想定)を、157~175デシベルの強さで2時間暴露させ、暴露終了直後と最大96時間後に被験動物を絶命させたとある。騒音で魚を殺害してしまうというのは驚きだ。海にも人間の活動による騒音公害が存在し、それが地上以上に深刻な可能性もあることが分かる。

 ちなみにダイオウイカとは、体長16mにもなる深海にすむ巨大イカで、海底2万マイルの映画に出てきた化け物イカを思い出させる。