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2011/07/25

京都会館の改修計画案

 京都市右京区岡崎地区にある京都会館の改修計画が話題になっている。開館して約50年、確かに大規模改修時期ではあるが、改修の内容が世界水準のオペラハウスにしようというものだからその賛否が話題になっている。当初はコンサート専用ホールとして設計され、工事途中で多目的ホールに変更をしたため、舞台の上にはフライズ空間はない。したがってそのままではフライズを必要とするオペラハウスはできない。フライズを改修して作ろうとすると周辺地域の都市計画法の高さ制限を撤廃しなければならず、街づくりに大きな変更を伴うことになる。しかも隣の町、大津にはびわ湖ホールがオペラハウスとして存在している。本当に京都にオペラハウスが必要なのであろうか。

 実は京都会館と東京文化会館は同じ1958年(昭和33年)の着工で、竣工は、京都会館は1960年(昭和35年)3月、東京文化会館は1961年(昭和36年)3月である。設計期間は同時期で、設計者は前川國男、外観も相当似た感じの建物である。しかしその後の運命は大分違う。1995年にはコンサート専用の京都コンサートホールができて、京都交響楽団の根拠地が京都会館からコンサートホールに移動してしまい、会館の主目的がなくなってしまった。京都会館側からみれば、京都コンサートホールをつくらず、京都会館をコンサートホール用に改修すべきだったかもしれない。東京文化会館は、東京都芸術劇場やサントリーホールができてからはコンサートが少なくなったとはいえ、オペラの上演も盛んだ。また1998年の大改修では、音響反射板の格納方法を除き、新築時の状態に復原され、ますます公演が盛んにおこなわれ、施設の評価も高い。

 京都会館を、もし世界最高水準のオペラを上演するホールとするためには、フライズも含め大規模に改修しないとオペラハウスは成立せず、原型が無くなってしまう。またオペラハウスに改築できたところで、びわ湖ホールと競合し、しかも維持費がかかるために、どの程度上演できるか心配も残る。

 京都コンサートホールが存在する今となっては、京都会館の存在意義が少なくなってしまっている。それであるならば、歌舞伎の発祥の地である京都の京都会館を、日本の芸能を目的とする劇場としたらどうであろうか?桟敷席や花道を作り、歌舞伎が上演できるような舞台・客席空間としたらどうだろうか。大きなフライズも必要がない。南座と補完しながら、日本の伝統芸能を発展させる場所となるであろう。桟敷席の作り方は、弊社が関わった清瀬けやきホールの様な桟敷席の方法も提案できる。現在のような6角形の平面プランの場合には、壁から得られる初期反射音が客席に反射して来ないために、舞台からの直接音を補強することが難しいが、一段高い桟敷席をつくることで、側壁ができ、初期の側方反射音をもたらすことができると考える。