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2022/06/20

振動で感じるコンサート

 何年か前に聴覚障碍者の学生が来て、卒業論文で、舞台のダンスを音ではなく、振動を感じて楽しめる劇場を作りたいとのこと。こちらでは具体的な提案はできなかったが、言っていることはよくわかった。要するに舞台でダンスをしている姿を見て、音楽を振動で床や椅子に伝えて体で感じるというものだと思う。

振動を伝搬する媒体は躯体でなく、空気と思われる。躯体を木とすると35004500/s、コンクリートとすると約3000m/s、空気の伝搬速度を15Cとすると340/sとなり、伝搬速度に速さの違いがある。

音源から例えば20m離れているとすると、空気では20/340m/s0.058s=58ms、木では20/4000m/s0.005s=5ms、コンクリートでは20/3000m/s0.0066s=6.6msと伝搬時間が異なる。5ms程度ではほとんど同時に聞こえるが、50ms離れるとエコーとしても感じられる時間差となる。もし躯体を振動で伝搬する音が空気を伝搬する音と同程度の大きさである場合には、空気による残響だけでなく、エコーを伴った躯体を含めた残響音になってしまう。

 実際には躯体を伝搬する音のエネルギーは小さいと見え、躯体を伝搬する音は聞こえない。我々が感じる振動は空気を伝搬する音が床や椅子に伝搬して感じるものと思われる。ただし空気から伝搬して振動する大きさは実際には小さなもので、聴覚障碍者がこれを感じて楽しむことにはかなり不足していると思われる。

 そこで客席の中に、聴覚障碍者のためのスペースを、地震用起振機のようなシステムで、床が振動するようにした場合を考えてみる。システムとしては障碍者のスペースで、マイクで音圧を拾い、振動加速度に変換して、床を振動させる方法が考えられる。

まず耳の感度は、図1に示すように音圧レベルと周波数と音の大きさによって異なっている。1000Hzを基準に考えると、それより低い周波数では感度が鈍くなり、1000Hzより高い周波数ではわずかに感度が上がり、10Hz付近でまた感度が鈍くなるような特性である。これをフレッチャーマンソンの曲線と呼ぶ。しかしこのままでは複雑なために、騒音計ではA特性で表していて、図2で示すように1kHzを基準に、500Hz以下は低音域になるに従って、感度が落ちてきている。また1Hzから5kHzまではわずかに上回っていて、感度がよくなっている。骨伝導による特性も同様の特性である。これに反して振動レベルの特性は、図3に示すように、振動加速度レベルで、鉛直特性では4Hzから8Hzまでは感度が最もよく、それ以上の周波数ではオクターブ6dB低減している。ただし公害用振動計の振動レベルの特性は100Hzまでしか表されていない。

ある劇場の客席部分の音圧レベルの特性を聴覚障碍者のスペースで、適正な特性の振動加速度レベルに変化する必要がある。式1では音圧レベルLpを、壁面ないし床面の振動加速度レベルLaに変換する式を以下に示す。 

LaLp10×Logk+20×Logf-10×LogS/A)-36 (dB  1 

ただしLa:加速度レベル(実測データ)、Lp:音圧レベル、k:放射係数(125Hz以上はk=1、63Hz以下は多少小さくなるが、安全のため、すべて1とすると10×Logk=0)、f:周波数(Hz)、Sは放射面積、A:吸音力となる。 

1によれば音圧レベルと加速度レベルの関係は、音圧レベルに主に周波数の2乗の対数を加える、実数で言えば周波数の2乗を音圧に掛けることになる。物理的にはこのようにすればいいが、実際の音圧レベルの感覚特性と、振動加速度レベルの感覚特性を少なくとも1000Hzまで合わせるための、実験が必要と思われる。

さらにこの振動台を稼動させるための機構が必要である。実際の地震のための振動台は油圧で稼働させているが、より高い周波数を稼動させるためには、多分その他の機構が必要となる。

振動で感じるホールの実現には、まだまだ実験が必要だと思われる。


     図1. 耳に聞こえる音の周波数と音圧レベルの範囲及び音の大きさの等感曲線

※引用 公害防止の技術と法規 編集委員会編 公害防止の技術と法規 騒音編

                    図2. 騒音計の周波数補正特性

  ※引用 公害防止の技術と法規 編集委員会編 公害防止の技術と法規 騒音編


             図3. 振動レベルの基本的レスポンス

※引用 公害防止の技術と法規 編集委員会編 公害防止の技術と法規 振動編


 

2022/06/16

横浜ボートシアター主催、船劇場JAZZライブ撮影会

 

船劇場JAZZライブ撮影会が614() 雨の中、夜の730からありました。出演者は遠藤律子(ピアノ、今回はエレクトーン)、山口彰(ウッドベース)、藤井学(ドラムス)、曲目はバッハのG線上のアリア、シューベルトのセレナーデ、スメタナの売られた花嫁、ガーシュイン?の曲、他、いずれもこの曲を基にJAZZのリズムに変えて即興的に演奏されたものです。

次は横浜ボートシアターの松本さんの太鼓のリズムに合わせた奥本さんの仮面の踊り、次は松本さんのアコースティックギターに合わせた吉岡さんの歌、 次はこの三名と遠藤律子トリオの演奏で、遠藤琢郎さん作詞の「死んだ人は死んでいない」という歌を演奏しました。遠藤さんは亡くなって残念でしたが、今も船劇場の、この活動が継続していることを考えると確かに死んでいないといってもいいかもしれません。

お客さんは20代、30代の人がほとんどですが、70歳代もいて、懐かしい人たちにもお会いしました。

いつもは演劇をしている吉岡さんの歌はびっくりするほど声が出ていました。ここは演劇の試演会をする場所ですが、コンサートでも楽器そのものが響くウッドベースはもちろん、ほとんど自らはあまり響かないアコースティックギターがよく響いていました。演劇をやるときには幕設備や舞台装置がありますが、今回はむき出しの鉄板の壁とベニア板の床と野地板の天井で、幕類や大道具が一切ない状態のために、よく響く状態となっています。クラシック音楽も含めて、さまざまな音楽の可能性のある空間だと思いました。

2022/06/15

ガムラングループ・ランバンサリのコンサート

612日日曜日 15時より、日暮里サニーホールでガムラングループ・ランバンサリのコンサートがあった。出演者の一人が荏田のお囃子グループに大田さんがいて、呼びかけられ、お囃子の仲間と伺った。ガムランの楽器は多分20個程度あるが、チラシにあるように青銅なのか、金属の楽器が多く、またそのうちかなりが唸る。演奏者も20名ほどいたので、ちょっとしたオーケストラであった。この中には二胡のような弓で弾く楽器と縦笛があり、両方ともメロディの出せる継続する音が出るが、あとは様々な打楽器で、和太鼓のようなものや木琴のようなものもあった。また薄い木の箱で太鼓のようにたたくものもあった。典型的なものは大きなドラムで、お寺の本堂のお坊さんの横にあるような楽器で、低音で、唸りを伴ってゴーンと音を出すものから、ガムランではよくみる中央に突起のついているお椀を伏せてたくさん横に並べたような打楽器もあった。また楽器だけの演奏もあり、また舞踊のある曲もあった。

ガムランはジャワのガムランとバリのガムランがあるようで、このグループのものはジャワのガムランで、ゆったりした音楽であった。しかし踊りが能のようにゆったりとしているとしていたが、能のように死後の世界のような達観した場面ではなく、若い男(実際にはダンサーは女性)がナイフで戦う場面もあり、生き生きした現世の舞踊であった。 

ガムランの特徴はゆったりしている上に、かなりの楽器が唸る。日本や韓国やタイやチベットのお寺の鐘と同じように唸る。また仏壇の鈴(リン)のように唸る。この唸ることはクラシック音楽とは大きな違いがある。クラシック音楽の音律は、純正律や平均律で、正しいかどうかはわからないが、元はピタゴラス音律とおもわれ、いかに唸らないかを求めて得られた音律である。これに反して、いかに唸るかを求めて作られた音律だと思われる。インドネシアのジャワ島は主な宗教はイスラム教と思われるが、なんだか宗教的な響きを感じた。







2022/06/13

篠笛の響きのある音

隣町の驚神社の宮元お囃子の会から、荏田のお囃子の会の練習の時に時々来ていただいている矢島先生が、先日、破矢から全曲通して吹いて頂いた。あらためて矢島先生の笛はとても響きのある音色を感じた。我々の篠笛は響きを感じることがなかったので改めてびっくりだった。

響きのある音色がよくでるなと感心していたが、ひょっとしてお祭りは屋外で演奏するので、響きが必要なことが多い場合があるかもしれないと思うようになった。ただし篠笛でこの響きを感じられるようにすることは技術的にレベル向上が必要だ。多分笛の共鳴周波数を強調することと、強い息で音をならす必要がある。また基本的なことだが笛の穴を指でしっかり塞ぐことも重要である。

ところで残響のない、または少ない屋外の空間では、楽器で響きを作り出す必要があるのではないかと思うようになった。例えば三味線や箏や琵琶や太鼓などは自ら残響を持っているか、尺八のように音を震わせて残響を感じさせているものもある。

これに反してヴァイオリンは自分に残響がない。そのため残響のあるホールが必要なのはそのためかと思うようになった。しかしチェロやコントラバス、ピアノ、ハープ、ハープシコードやチェンバロも残響がある。ヴァイオリンはヴィブラートすることで響きを感じるように演奏しているのかもしれない。チェロも常にヴィブラートをしている。さらにパイプオルガンは残響の長い教会の空間の中にあり、ゆっくり弾く事で、自らも残響を作り出しているように思う。

  またウクライナのバンドウーラには残響がある。カザフスタンの指でつま弾くドンブラや弓で弾くコブスやモンゴルの馬頭琴も残響がある。インドネシアのガムランは日本の鈴(リン)のように残響だけでなく、唸りもある。シタールやバンドウーラのように共鳴弦があるものもある。これらの楽器とホールの残響の関係は大変興味深いところがある。また楽器自らが持っている残響を自己残響、ホールなどの空間が持っている残響を空間残響と呼ぶことも必要かもしれない。 

2022/06/03

ソニックブーム(音速の壁を突き抜けるときの衝撃音)

 

とある日の朝7時ごろから一時間ほど、上空でドーンという音が何度も聞こえた。最初は花火かもしれないと思ったが、明るいし、またドーン音は響きを伴っているため、ひょっとして大砲の音の感じもある。しかし北富士演習場とここまでは多分100kmもあり、距離減衰から考えると到達音は、SPLr=SPL1-20log(100000)=SPL1-100 (dBA)となり、音源1mからは100BA減衰するはずである。そのためか我が家で北富士演習場の音は聞こえたことがない。

また継続音もあることから、軍用機のソニックブーム(Sonic Boom)ではないかと思うようになった。残念ながら曇っているので、飛行機は見えないが、音速を超えるような飛行機は、例えば、10000mの高度で音速で飛行している場合には、飛行機の音は、その時の音速が340/sとすると10000÷34029秒となり、すなわち見える方法と聞こえる方向は29秒すなわち約10000m=10km異なっていることになる。したがって音の原因がわかりにくい。

ソニックブームは音速を超える飛行機が音速を超えるときに発生する衝撃波で、大砲のような、かなり大きな音である。ヨーロッパで開発された超音速旅客機コンコルドがソニックブームのために、海上でのみ飛行ができる状態になっているらしい。