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2013/05/13

第29回四国こんぴら歌舞伎大芝居に行ってきました


第29回四国こんぴら歌舞伎が4月6日(土)から4月21日(日)まで行われ、私は4月20日(土)の午後の部『銘作左小刀 京人形』『四代目 市川猿之助襲名披露 口上』『奥州安達原 袖萩祭文』と、4月21日(日)千穐楽の午前の部『鳥辺山心中』『義経千本桜 川連法眼館の場』を観ることができました。
市川亀治郎改め第四代目市川猿之助の襲名披露公演です。

4月2日には、第5代目歌舞伎座がオープンしたこの時期に、金比羅歌舞伎に出演する第四代目市川猿之助の心意気に期待しました。

4月20日は肌寒く、開場前の列に並んでいる間に雨が降り始め、鼠木戸口に入ってホッとしました。

20日は肌寒く、午後からは雨

天井に雪が用意されている

最初は『京人形』、華やかな舞台です。
名匠左甚五郎が、見染めた太夫にそっくりに掘った京人形が実際に動き出すという話。最初はぎこちなく動いていたが、人形の懐に手鏡を入れたとたんに女らしく動き始めるというユーモラスな内容です。

『袖萩祭文』は、人間関係が非常に複雑な仇討連鎖の物語で、平安末期の戦争時、袖萩と敷妙という姉妹がそれぞれの夫のことで敵味方になってしまう悲劇です。
舞台および客席全体が雪吹雪に覆われ、全編悲しみに打ちひしがれる内容で、袖萩の父は切腹、袖萩は自害、さらに袖萩の夫は妹敷妙の夫源の義家を殺そうとするが、その幼い娘お君が止めます。やはり歌舞伎は最後に救いがあります。

翌日の千穐楽は、前日の雨天から一転して晴れ、町長や観客や役者達によって餅つきが行われ、周辺の観客たちにも餅がふるまわれて、私もおすそわけをいただきました。

千穐楽の餅つき


『鳥辺山心中』は、愛之助演じる若い侍の半九郎が、ひょんなことから朋輩の市之助の弟を殺してしまい、一緒になろうとしていた遊女お染と共に死を決意して鳥辺山に向かうという内容で、全編に虚しさ漂います。
義太夫三味線に加え、黒御簾の中から泣くような胡弓の音色が印象的でした。

最後は、いよいよ猿之助の『義経千本桜』。
静御前の初音の鼓を(親狐の皮でできているために)親と慕う子狐が化けた忠信と、本物の忠信を猿之助が早変わりで演じます。
最後には、狐ということがばれて元の姿に戻り、鼓を抱きかかえながら宙乗り(懸筋)を使って桜吹雪とともに山に帰るシーンが、これぞ芝居小屋という見応えのある舞台です。

終演後、昨年回り舞台を支えるロールベアリングが外れてしまい、その修繕の跡を見に奈落に行きました。人が舞台上で動くと舞台はかなり揺れ、ロールベアリングにも負担が大きいことを感じました。江戸時代の釘を使った鴬張りの床も舞台上手側で、キィーキィーとなっていました。

江戸時代の釘を使った鶯張り

屋根はかわら葺


帰途、うどんの『たぬき屋』に行くと、先ほどまで出演されていた義太夫三味線の野沢松也さんがいらっしゃって、気さくにお話をしていただきました。古典だけでなく子供も楽しめる物語を浄瑠璃風に作曲をして演奏会をしているそうです。

2013/05/10

劇団ヴィエルシャリン公演『マネキン人形論』


4/26シアターX(カイ)に行ってきました。シアターX+ポーランド広報文化センター主催のポーランドの劇団ヴィエルシャリンの公演で、原作:ブルーノ・シュルツの『マネキン人形論』をピョトル・トマシュクが脚色・演出したものです。

舞台はまず暗く、青白く、そして太い材木でできた格子の中で主に展開されます。中には様々な神経質そうな細い金属でできた機械があります。マネキン人形論を講義するマネキンのような父親、屈強な男が演じるマネキンのような女中、ひ弱な息子が登場します。ファシズムがつくりだした世界、マネキンの様にしか生きられない世界を表現しているようです。格子の外では、ソビエト兵はポーランド人を、ナチスドイツ兵およびその手下のポーランド人はユダヤ人を探しています。最後に、父親は飛行機のような謎の機械に乗って逃避しようと夢想する救いがない世界です。

公演後に演出家・俳優を交えてアフタートークが開かれました。テーマが重かったためか、演出家のトマシュクは観客の質問に熱心に答え、演劇の役割を力強く語っていました。終了したのは10:20、まだ話し足りないような感じ様子でした。

帰り、空を見ると透明感のあるすがすがしい満月がありました。

日本騒音制御工学会春季研究発表会(2013.4)の発表



建築音響研究会の翌日4月23日(火)に、国立オリンピック記念青少年総合センターで騒音制御工学会の大会が開かれ、共同研究者の堀内さんが『高性能乾式遮音二重床の開発 その2 築40年超RC集合住宅における測定結果』と題して発表いたしました。

昨年はUR都市機構の八王子の技術研究所の実大実験棟で行ったものを発表したのですが、今回は、実際の築40年を超えるストック住宅の実験棟を用いて実用化実験を行った結果を発表しました。

現在、100万戸も存在するストック住宅の再生は社会的な要請であり、このような住宅に対応できる乾式二重床が早急に求められています。
従来の乾式二重床のほとんどは、スラブに設置すると重量床衝撃音はスラブ素面よりも悪化してしまいます。遮音二重床と言っても悪化の度合いが小さいというもので、よくなるというものではありませんでした。スラブ厚が薄い40年ほど前のストック住宅ではなおさらです。

今回開発した二重床は、昨年発表したものをユニット化し、工期短縮や工費を押さえるための改良を行いました。このユニット化したHelmholtz共鳴器を有した乾式二重床を用いて、スラブ厚110mmのストック住宅で重量床衝撃音を10dB低減することができました。今年は理論的な裏付けもできたことで、実用化を目指す所存です。

当日のプログラム(PDF)はこちら


建築音響研究会(2013.4)の発表


4月22日(月)、音響学会の建築音響研究会が、東京の田町にあるキャンパス・イノベーションセンター東京で開かれ、『Helmholtz共鳴器を有する高性能乾式二重床の開発-2質点系モデルに基づく検討-』の発表を行いました。発表は、共同研究者の神奈川大学の安田先生です。
この2年間、UR都市機構と共に『高性能乾式二重床』の開発を行ってきましたが、その高性能の理由について、2質点系の運動方程式を解いて説明しました。
この床は、63Hz帯域において、重量床衝撃音がスラブ素面より約10dB低減します。

2質点とは、支持脚の防振ゴムと床下空気層によるばねで支持された二重床の質点と、ヘルムホルツ共鳴器の中空部をばねとして、共鳴管の中の空気を質点としたシステムを指します。
2質点系ですから共鳴周波数を二つ持ち、今回開発した床では約25Hzと約90Hzにあり、その間の63Hzを含む周波数帯域では、振動伝達率が小さくなります。いわゆる動吸振の様な仕組みで、二重床の振動を押さえることで、床衝撃音を低減します。

安田先生のHelmholtz床の理論的な検討により、どうすれば良い性能が得られるかが検討しやすくなりました。Helmholtzの共鳴器は、自由空間にある場合には、その共鳴周波数はHelmholtzが1862年に発表した理論的な計算方法と一致しますが、床に用いた場合には、共鳴管を挟んで中空部と床下空気層との連成系になってしまい、どの周波数で効果的か簡単には予測できなくなってしまいます。今回の理論的な展開で、高性能二重床の開発が大きく進歩したと考えています。

当日の開催報告(PDF)です。