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2020/10/16

横浜ボートシアターの「横浜ふね劇場」での公演

10月3日に横浜ふね劇場でコロナ対策のため、少人数の観客15名限定の公演がありました。

創作影絵人形劇「極楽金魚」、今年(2020)2月に亡くなられた脚本・演出の遠藤さんの処女作の公演です。

結末をここで話してしまいますが、物語の最期は奉公先の息子の身代わりとなって亡くなったおさきが極楽浄土の金魚・頂天眼となり、首のない血だらけの老馬(おさきが世話をした)と天に昇っていく衝撃的なシーンで終わります。

ただ最後に、この物語ができたきっかけは四国高松に伝わる「奉公さん人形」からヒントを得たと演者から説明があります。張り子のかわいらしい人形です。奉公先の息子の身代わりになったおさきが奉公さん人形となって人々の心の中に存在していることを感じることで、おさきも観客も救われた気持ちになり、そこに遠藤さんの弱い者側に立つ優しさを感じます。

ふね劇場の公演はコロナの影響でもう10か月以上行っていなかったために、今回の公演がみられてほっとしました。この鋼鉄製の艀の劇場が2000年にでき、劇団当初の木造の艀から変わり、現在に至っています。

このふね劇場は海に浮いているために時々揺れるし、遠くで船の汽笛も聞こえ、出演者・観客が同じ空間にいるという一体感が得られます。またこの劇団は人形浄瑠璃のように音楽や効果音などを生演奏し物語を盛り上げています。一体感を感じる現代の芝居小屋と言えます。

今後の計画としては、来年2月に遠藤さんが最後に計画していた作品を、劇団が総力を上げて作り上げた新作を公演するとのこと。楽しみにしております。

公演終了後の舞台裏の見学会
スクリーン下部に置かれているのが奉公さん人形






2020/10/01

換気と消音

この新型コロナでいわゆる3密(密閉、密接、密集)として営業が難しくなっている業種がたくさんありますが、中でもカラオケ店や録音スタジオや劇場などは、内部で大きな音が出ることや外の音が入らないようにするために窓などを開けて換気をすることも難しい状況です。

これを、音の分野で何か力になれることはないかと考えています。

最近対応した仕事ですが、ある大型の電気設備のある施設で、ガラリから内部の稼働音が漏れてきているために周辺の住民から苦情が出ていました。そのガラリは自然換気用のガラリでしたが、ガラリを取り外し、そこに写真のような消音器を当社で設計し、設置しました。内部の音は低音域の音が大きいため、消音器も低音に対応できるように設計しました。消音器を設置した結果、内部の音は消音器の近くでもまったく聞こえなくなりました。

この消音器は自然換気用ですが、さらに換気扇を取り付ける場合もあります。このタイプはもともとは清掃工場のために開発したものですが、飲食店などの場合は小さなタイプになり、換気扇とさらに熱交換機(ロスナイ)を設置して、吸気・排気を行う場合も考えられます。ルームエアコンで温度調整をしていて換気が不十分の場合には、このシステムを追加することによって換気が可能になります。

またライブハウス等で大きな空調機を設置するような場合も、外部にダクトで開放する部分にこのような消音器を設置することもあります。もちろんダクトで接続するような場合にはダクト用の消音器もあります。この場合も内部の音を外部に出さない効果はあります。

換気をしながら消音する方法は様々考えられるので、コロナ対策に役に立てるのではと思っています。


2020/09/30

お囃子のリズムについて

毎年10月初めに行われている地元荏田町の剣神社秋の例大祭、お神輿(荏田では子供神輿)も新型コロナの影響で中止になってしまいました。やはりこの時期にこのお祭りの音を聞けないと寂しい気がします。例年のお祭りは、関係者が集まって、宵宮(前夜祭)があって、仮設舞台で祭囃子を演奏し、翌日朝から荏田の町を地区ごとに、子供たちを集めて神輿を担いでいる後ろから、お囃子を演奏しながら回ります。老人施設ではお囃子のグループが回ってくるのを入り口広場で待ってくれていて、お囃子や「ひょっとこ」や「おかめ」などの面踊りを披露します。荏田の町をほぼ全域回ると、ここがわが町という印象になります。

若林忠宏 著 『日本の伝統楽器 知られざるルーツとその魅力』という本(p.254)を読んでいましたら、「祭り囃子以外の日本音楽にビート感がない理由は?」という章に(主題の内容ではないのですが)、

「なぜ『祭り囃子』には、例外的に『テンポ感・ビート感』が持続するのか。それは、その源流にシャーマニズムがあるからに他なりません。」

と書かれていました。

 著者が世界の各地のリズムを紹介している中で、日本の祭り囃子のリズムは以下のように書かれています。実際に、荏田町のお囃子もこのようなリズムです。


お囃子(本では祭り囃子)の練習で先生が太鼓を打っている時に、たまたま親に連れられて来ていた5~6歳の子供が練習用のタイヤを叩いていると、次第に乗ってきて踊りだす勢いでタイヤを叩き始めて驚いたことがあります。

祭り囃子の「源流にはシャーマニズムがある」とされているように、たしかに体のリズムを活性化させるような不思議な力があります。祭囃子は持続する太鼓のリズムと感情を表現する篠笛と相まって祭りが盛り上がってくる原動力となります。今年はそのチャンスがないのは大変寂しいですが、コロナに負けず元気を出さねばいけません。来年のために練習を続けようと思います。

2020/09/20

音響学会秋の大会に参加『富岡製糸場 西置繭所保存修理工事 ガラスホールの音響特性』

2020年秋季研究発表会が9月9日(水)から11日(金)にありました。

当初は東北工業大学八木山キャンパスで行われる予定でしたが、新型コロナのために初めてオンラインで開催されることになりました。

講演申し込み6月12日、原稿提出は7月14日でしたが、それから間もなく音響学会からオンライン(Zoom)開催の詳細が届きました。



私の発表は、初日の建築音響部門の最初の発表で少し進行が手間取りました。発表が始まる時間に待機していましたが、開始の指示がなく、こちらから確認をして1~2分遅れてスタートすることになり少し慌てました。多少早口で話したのですが、時間を調整してくれていたようで持ち時間12分間のうち2分残して終了しましたが、無事に発表を終えることができました。オンラインだと顔を見て始められないために、なかなか難しいところもありました。

聴衆は100名ほどと、多くの方に見ていただくことができました。ただ画面の並んでいる参加者のお名前を見ると、知らないお名前も多く(顔を見れば知っている人もいらっしゃるかもしれませんが)、反応もわからないのは不安なところでもあります。

発表のタイトルは『富岡製糸場 西置繭所保存修理工事 ガラスホールの音響特性』でした。

富岡製糸場は、明治5年(1872年)に明治政府が日本の近代化のために設立した模範器械製糸場で、敷地内には多数の歴史的建造物があり、国宝も3棟含まれます。建造物の多くは老朽化が進み保存修理と耐震補強が必要となりました。
国宝の1棟、西置繭所の保存整備工事を行うにあたり、施設を有効に保存活用するために、建物内部に耐震補強の鉄骨フレームを組み、建物内部を見学できるガラス張りのホールが誕生しました。
その音響設計の部分を弊社で担当いたしました。

耐震補強のために鉄骨の柱を内部に建てて、建物を耐震補強するのですが、その細い柱を捕捉するために、その柱に張ったガラスも耐震要素として設計されています。
そのガラスで囲まれた空間が建物内部を見学できる博物館のような空間で、内部では講演や演劇・コンサートもできる空間になっています。
また内部を空調しても歴史的建造物の建物内部を空調の空気で傷めないようにもなっています。

一般的に考えるとガラス張りのホールは、お風呂のように残響が響いてしまうのではと思われがちですが、幸い天井が低いため、人が吸音材となると残響的にはちょうどよい空間になりました。

音響設計側で検討したことは、一部の壁に吸音材を張るなどではなく、いかに拡散できる壁を作るかということでした。詳細は発表資料を下に掲載いたします。

発表後の質疑の際にはまず座長から質問があり、なぜ残響時間の分析を一般的に行っているT-30で行わなかったのですかというものでした。
測定当日は雨が降っており、隙間からノイズがあったためと答えたのですが、さらに付け加えるならば63Hzまで分析しているためT-20で分析する必要があったと答えればよかったと思っています。
もう一つは、文化財の工事で何か苦労したことはないかというものでした。正確には音響設計は与えられた条件を大きく変更するものではなかったので、意匠や構造の担当者の苦労とは大きく違いがありましたが、ガラスを覆い隠すカーテンなどで調整することはしないということが最初のテーマでした。

音響学会の発表は終了しましたが、まだコロナの影響でなかなかこのガラスホールで演奏会も開けていないのではと思います。私は音響測定の際に篠笛を吹いてみましたが、気持ちよく響いていました。また音声も聞きやすい状態で聞こえました。よく響き、よく聞こえる珍しいいホールと感じています。

以下は発表時パワーポイントです。





















2020/08/28

リトアニアの首都ヴィリニュスの国立ヴィリニュスコンサートホールの設計コンペ

リトアニアの首都ヴィリニュスのTaurus hillという場所にある歴史的な建物を立て替えて、国立のコンサートホールを作る設計コンペが昨年行われ、スペインの建築家Nazareth Gutiérrez Francoと組んで弊社も音響設計として参加しました。

この設計コンペは昨年2019年7月3に締めきられ、9月に結果が公表されました。最優秀はスペインのArquivio Architectsというグループで、採用された案は、サントリーホールに似た感じのホールでした。

優勝者Arquivio Architectsの案

コンペに参加したきっかけは、元弊社に在席していたAntonio Sanches Parejoが、現在RSKといイギリスの事務所に所属しており、スペインの建築家Nazareth Gutiérrez Francoと組んで設計するということでこちらにも声がかかりました。音響設計協力者として、清水寧氏(元東工大特任教授)と私とともに参加しました。

残念ながら落選はしましたが、World Architecture Communityという雑誌に我々の提案内容を掲載していただきました。 

World Architecture Community

e-architect

音響設計の目的としては、このホールの特徴は、球体を組み合わせて立体空間を構成したものですが、球体そのものではフラッターエコーや囁きの回廊等の音響障害が生じますが、球体を組み合わせること、また拡散するための仕掛けによっていかに音響障害を解消しながら豊かな響きのある空間が実現できるように検討を行いました。

2020/08/14

コロナ禍の荏田お囃子の会の練習

私が参加している荏田のお囃子の会も、この2月から新型コロナの影響で練習が中止になってしまっています。夏祭りの予定も無くなり、お囃子の練習も今後どう続けていくのか定まらず、皆で検討しているところです。

我々のお囃子グループの先生である宮元お囃子連から、これを見て練習をしてほしいと動画で2曲送られてきました。『ひとっぱやし』という曲が15分、『いんば』という曲の9分の動画です。

グループの仲間の演奏で、篠笛と、子供たち2人の太鼓です。篠笛は非常にレベルが高く上手です。

実際の太鼓は締め太鼓と大太鼓を使用しますが、写真のこれは家で練習する用の軽い太鼓です。

LINEで動画が送られてきてから約1ヵ月、私も毎日篠笛の練習をしています。コロナのせいでお盆休みの予定も特にないので、私も頑張って練習したいと思います。