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2025/10/21

解決されぬ「1音」背負う音楽家 朝日新聞2025年10月19日朝刊を読んで。

 この朝日新聞の「日曜に想う」という文章の中に、バーンスタイン作曲のウエストサイドストーリーの曲について書いてある。この曲の最後の部分は、本文をほぼ引用すると、『恋人のトニーが殺された後、ヒロインのマリアは「あなたたちみんなが彼を殺した。」と泣き崩れ、やがて毅然と歩み出す。その後、両グループが静かに従う。澄み切ったドミソの響が葬送の列を包む。そのときバーンスタインは低音域にファ#の音を響かせる。この1音は異なる価値観の持ち主を対話へと導く難しさの象徴でありながら、平和への道のりを、聴く人それぞれに深く思考させる。』

私の小学校の時に何人かの友達と日比谷の映画館で映画館の周りを1周以上回って並んでやっと入ったことをよく覚えている。映画を感激してみたものだ。みんなは学校で足を上げたり、鉄棒で宙返りなどをして、その気になっていた。それ以来バーンスタインが好きになった。

写真:写真集 BERNSTEINREMEMBERD 日本語版 解説 ドナルド・ヘナン p.74 ウエストシドストーリーの1場面、ジェット団の少年たちの誇らしげな踊り

 この朝日新聞の文章の前段は、ベルギーの音楽祭で、イスラエル人の指揮者が率いるドイツの楽団をボイコットしているとあり、イスラエルのガザへの攻撃が激しくなっていることが影響しているようだとある。作曲者のバーンスタインがイスラエル系のアメリカ人であり、メータ、バレンボイムといった名匠たちが「イスラエルのオーケストラ」という国家的属性を越え、平和を希求する精神の象徴とするべく指導に情熱を傾けてきた。しかもバーンスタインのお父さんはウクライナ生まれのユダヤ人だそうで、根っから大変そうな生まれだ。

最近は、ロシアーウクライナ、イスラエルーガザ、ミャンマーのロヒンギャ難民や、タイーカンボジアの紛争があり、私は、特にロシアの作曲家や演奏者などに一瞬ためらいが生じる。しかしチャイコフスキー、ムソルグスキー、スタラヴィンスキー、ラフマニノフ、ショスタコーヴィチ はみんなロシア生まれ、だからといってどうしたらよいのか。そんなためらいを捨てて、馬鹿な考えを直して聴くことにしている。

ただ身近な日本と韓国や日本と中国との間でもし戦争があったら、どうするか!音楽には戦争を遂行したいという音楽もあるし、平和を希求するという音楽もあるので、やはり見極める必要がありそうだ。「この1音」を判断する意思が必要だ。その場合には平和を希求する音楽を聴こう。

 



2025/10/14

杉山哲雄ピアノリサイタル ベート-ベン ソナタ連続演奏会 シリーズⅠソナタからフーガへ(全3回)

日時;2025102日(木)午後630分から

場所:銀座王子ホール 座席数約300席、シューボックスタイプ

曲目:ソナタ第一番、ソナタ第4番、ソナタ第7番、ソナタ第14番「月光」 アンコール曲

演奏は杉山哲雄。主催:杉山ムジーク・アカデミー

このコンサートは建築家の濱口オサミさんに紹介された。以前渋谷で、杉山さんのピアノの練習スタジオの設計に音響設計の立場からかかわったことがある。設計は(有)濱口建築・デザイン工房、建物は渋谷にある大きな集合住宅の一階で、この住戸部分は、台所とトイレを残し、あとは1室を浮構造にして、遮音対策をした。この浮構造は、床は木造のヘルムホルツ床を用いている。

杉山さんのプロフィールを見るとわかるが、伊勢市出身で、濱口さんと同郷となる。濱口さんは私と東工大の同期なので、多分杉山さんも似たような年だと思われるが、ものすごく元気だ。プログラムのチラシの後ろ側には2026年、2027年の予定まで書かれている・

しかも演奏は楽譜を見ないで力強く演奏している。杉山さんのプロフィールには、バッハ、モーツァルト、ベートーベンのリサイタルで、古典調律を用いたとある。この古典調律は何を意味しているか正確には解らないが、純正律を中心とした音律のことではないかと思う。モーツアルト、ベートーベンの時代はこの純正律を用いることによってきれいなハーモニーができるようになった。ただ現在は平均律という音律になり、正確には純正率より美しい響きではない。チラシには「ベート-ベン没後200年(2027年)に完結するベート-ベン全ソナタの連続演奏会は、ベート-ベンの創作の本質に光をあてるものである。」 と書いてある。気合が入っている。しかもいずれの曲も力に入った演奏だった。この曲の最後の曲はソナタ第14番“月光”で、月の光が水面に反射してキラキラしている印象があるが、この曲は作曲した当時から人気のあった曲だとある。このような主観的に表現が出来る曲はいいが、コンサートのチラシは、ピアノの演奏の技術的な説明が多く、例えばソナタ第一番では、「全曲を統一する6度の音程や下向音型を含んで、上昇する音の波の引き締まった音楽の表情を見せ、冒頭の動機の反行形よる第二の主題による第二主題も無駄がない。」 とあってなかなか曲の技巧的な説明は分かるが、曲の雰囲気は私には伝わってこない。第4楽章プレスティッショモの説明で、「第一主題の和音は、「闘争」を感じさせ、独創性がある。和声の微妙な変化が美しい経過部をへて、穏やかな第二主題がなだらかな地平線を思わせる。」 やはりベートーベンの曲は言葉で表すことが難しいことがわかる。ただ感情的な動きによって、強い意志を感じさせる美しい曲だった。やはりベートーベン創作の本質に迫るには、最期の20276月まで聞く必要がありそうである。

2025.10.20 追加:

ブログに 建築技術201812月号に「渋谷スタジオの音響設計」という記事を書きました。実はこの文書の中に、へrムホルツ床のことを書いていて、URとの共同の特許工法と書いてあるが、実は特許になっているのは、床下開口に唾を設けたものだけで、現在はこの工法は使っていません。誰でもがこの工法を用いることができます。

http://yab-onkyo.blogspot.com/2018/11/201812.html

さらに次のブログも書いています。杉山スタジオの内容が見れます。

杉山スタジオ オープン

http://yab-onkyo.blogspot.com/2018/07/blog-post.html

 





 


2025/10/02

Afternoon Jazz Live 明るい表通りで 後藤裕二カルテットwithマリア・エヴァ

日時:2025928日(日)1400開演

場所:ブッシュホール 1Fリハーサル室 大きさは正確には分からないが、15m×10m程度で、天井高さは2.52.6m程度、収容人数は約100名、舞台は長手の面にある。客席と舞台は段がなく一体感がある。床は浮床コンクリートの上に直貼りフローリングのような気がする。

出演: 後藤裕二:Tenner Sax & Flute, 須藤俊也:Piano,ジャンボ小野:Piano、八城邦義:Drum, マリア・エヴァ:歌、幕間の後、次回出演予定のトロンボーン奏者薗田勉慶が挨拶

曲目:曲目はほぼプログラム通りで、アンコールは1曲に更にアンコールの声にこたえて、ちょっと悩んで更に一曲。

テナーサックスの後藤裕二は、チラシによれば1955年生まれとある。今年で70歳ぐらいになる。出演者はおおよそ70歳前後の人だ。ベースの人はジャンボ小野と紹介されていたが、最近30kgほど痩せて、(ジャンボでなくなり、)背広がぶかぶかと紹介されていた。

コンサートはちょうど秋になったころと思ってこの曲を選んだ。Tis Autumn、ところが今年は大変暑かったのでサマータイムを加えたと。そのあとマリア・ヱヴァが加わり、みなさん眠くないですか、もう2時ですよと。夜と昼を間違えているようにしてしゃべった。本当は昼の2時。マリア・ヱヴァの声は力強い歌声で、とんでもない迫力だった。しかも観客席の中央まで歩いてきて、歌うので、拍手を求める人も出てきた。実は私の横まで歩いてきて歌うので、本当のことを言えば私も握手をしたかった。共感した。

        写真:公演の始まる前のリハーサル室、私の席から撮影

このリハーサル室の入り口の反対側は、楽屋として使っている部屋や音楽練習室がいくつかあり、トイレもある。音楽練習室は、除き窓があり、浮構造ともなっている。この上の2階は先日行った劇場となっている。多分同時進行が可能と思われる。