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2024/06/24

ジル・アパップ ヴァイオリンコンサート

 2024622日(土) 1630開演

場所:杉田劇場 名前は劇場だが多目的劇場で、コンサート時の響きもよい。

 場所はJR新杉田駅から歩道橋で接続された超高層ビル「らびすた新杉田」の建物の中に杉田劇場はある。住民の投票で、この近くにあった杉田劇場が美空ひばりのデビュウ時の名前で、それにちなんでつけられたものだ。しかしこの杉田劇場は、多目的劇場で、音響反射板を用いた時にはかなり響く状態になり、クラシック音楽には好ましい状態になり、音響反射板を除いた時には、残響は短くなり、芝居にも電気音響にも好ましい状態が得られる。しかし芝居の舞台を音の反射性のベニアで舞台装置を3方囲ってしまうと、響きが出てしまうために、できれば布や紙である程度吸音性がある舞台装置で囲う方がセリフの明瞭性はえられてくる。これは実際に竣工後に出くわしたことだ。建築設計は松田平田横浜で担当者は熊田さん、舞台設計はACT環境計画の林さんで、音響設計は弊社YAB建築音響設計で2001年ごろである。この劇場には桟敷席が両側にあり、下手側には可動の花道も設置でき、歌舞伎や現代演劇などの演目にも対応しようとしている。またオペラも演奏はピアノだけであったが、公演を2度ほど見たことがあり、好ましい響きだった。今回の演目はヴァイオリンとピアノのコンサートで、改めて好ましい響きを感じた。ヴァイオリンの人は曲によっては動き回って演奏していたが、音響障害や音量などで、大きな問題は無かった。観客席は約300席、満席時の設計値は約1.5秒で、側壁は屏風折れとなっていて、フラッターエコーは生じていない。また舞台天井は10m以下で、舞台の中でもお互いに聞きやすいと思われる。

 実を言えば、ヴァイオリンのジル・アパップはチラシの写真では髪の毛がたくさんあるが、実際のジル・アパップは髪の毛がほとんどなくなっていて、想像とちがっていた。ただこのコンサートの前にはギターアンサンブルフェスティバルというコンサートがあり、このグループの主催で、ジル・アパップのコンサートも計画されていて、観客のかなりの人たちは、このギターアンサンブルの出演者たちで、そのことを知っていて、リラックスした感じで、舞台から直接本人があいさつをしていた。また同時にピアノのアルフレッド・オヤグエスも曲の始まる前に、曲の説明をしていた。

 結構楽しんだコンサートであった。









2024/06/18

ガムランの扉 天井の音 大地の音 ガムランコンサート

日時は2024616日 開演1500

場所は日暮里サニーホール、ホームページでは舞台設置時定員は401名と書かれているが、演奏者のいるところだけでなく、踊りも踊る部分もあり、さらに床に坐る席もあるので、実際にはお客さんはどの程度になるかよくわからないが、とにかく満席であった。

今回の特徴は、雅楽の章・篳篥との合奏やインドネシアの舞踊があること、雅楽は越天楽をガムランも演奏できるようにガムラン越天楽として編曲をしたようだ。雅楽の演奏者の中村仁美さんによると雅楽とガムランには似たところがあり、ともに宮廷を中心に発展してきているが、お互い、喜怒哀楽を直接表現することなく、淡々と時間が流れる、床に座った十数人の奏者が、指揮に合わせることなく、お互いに聞きあいながら合奏すること・・・特に私は気になったのは、拍子が変化することかもしれません。いくつかの共通点があるので、ジャムガムランも雅楽も古代アジア音楽の同じ流れを汲んで今に伝えられているかもしれないと書かれています。先日聴いたイリャン・チャンの肖像というコンサートで、マリンバと韓国の太鼓(チャング)と横笛(デグム)の合奏があったが、とにかくリズムが変化してくるのが何か似通った感じがあることが分かった。このガムランには木琴のような形の竹楽器(チャルン)も演奏されたが、イリャン・チャンのコンサートで、マリンバをこの竹楽器と置き換えても可能性があるのかもしれない。ガムランも雅楽もイリャン・チャンの音楽もヨーロッパのクラシック音楽とは全く異なるものである。タイトルに天上の音と大地の音とあるが、勝手に思うに、天上の音とは宮廷の音楽のことで、大地の音とは竹楽器チャルンによる農村地帯の音楽を意味しているものともう。チラシのあいさつ文に「各々の楽器の音色が緻密に絡み合いつつ、ゆったりと流れるような上品で洗練された音楽となっている」とあった。このたんたんと規則的にながれるガムランのリズムと踊りと雅楽の組み合わせで大変楽しむことが出来た。

入場するときにいただいたチラシの中には、日韓琉鎮魂のまつりというコンサートと横浜ボートシアターの小栗判官・照手姫の公演のチラシもあった。いずれもアジアの伝統芸能という立場はガムランと一緒だが、小栗判官の公演は演劇であるが、ガムランで用いるような楽器も含まれている音楽と仮面を用いているところが一般の現代演劇とは異なり、しかも現代に通じる内容となっている。




















2024/06/15

仮面・昆虫展

 2024613() 300ごろ、大倉山記念館ギャラリー(回廊というか通路??)、開催は12日から17日まで行われている。大倉山記念館は東急東横線の大倉山駅から坂道を上り、さらに階段を上ったところにある。主催者は元横浜ボートシアターの木村秀行さん、木村さんのお手紙には、「この展覧会を出発点として、仮面劇の復活を目指します。」とある。能や狂言でも仮面を使うが、お囃子でもおかめ・ひょっとこ踊りがある。もちろん現在の横浜ボートシアターも仮面を用いているが、団長の遠藤さんが尊命の時の仮面を忘れられないのだと思う。木村さんの仮面劇を観てみたいと思う。今回の仮面の内容は、昆虫に限らず、能。狂言に出てくるような面や童話に出てくる内容の仮面、例えばブレーメンの音楽隊やウクライナの手袋といった内容の仮面や、110匹の猫?の仮面もある。子供たちも150点ほど作っているようだ。仮面の世界を想像しながら作ることもいい経験だと思う。昆虫展の方は子供たちが採集したもののようだが、木村さんが採集したものもあった。子供たちと仮面をつくることや昆虫を採集することもいい活動と思われる。





大倉山記念館













2024/06/14

ウクライナへの祈り 日宇アーチスト達の饗宴!since 2018 コンサート



2024611() 1900 青葉台のフィリアホールで、開演

この日、昼間は数年前までYAB建築音響設計にいたアントニオさんとその友達、Stephenさんが当日の朝訪日し、その日に我が家に来て、久しぶりに会うことが出来た。その日の夕方、フィリアホールで行われたウクライナ支援コンサートに行った。コンサートのタイトルはウクライナへの祈りというものだが、目的はウクライナ支援コンサートである。

このコンサートは、主にヴァイオリニストの澤田さんとピアニストのシャポワロフ・レオニードさんが演奏していたが、武松洋子さんの朗読や、依藤由紀さんのバレエがあり、さらにUkraine Japan Artというウクライナから戦争のために避難してきた人たちからなる合唱団や羅漢という合唱団も合奏をした。時々はピアノやヴァイオリンの伴奏も含まれていた。

演奏は、シベリウスの「悲しみのワルツ」が低い音の荘重な曲から始まって、次はヴァイオリン協奏曲、その次は山田耕作・北原白秋の「この道」これにはUkraine Japan Artの合唱団が加わり、次は「戦争辞書」を武松洋子が朗読し、ときどきヴァイオリンとピアノが加わり、つぎに「亡き王女のためのパヴァーヌ」を依藤由紀がバレエをおどり、さらに「草原の赤いガマズミ」というウクライナ伝統歌をUkraine Japan Artと羅漢が歌った。盛りだくさんの公演内容で、しかも参加者が生き生きしていた。見ている観客も大変楽しむことが出来た。よくあるクラシック音楽会でしゃちこばって聞いている感じではなく、楽しんでいる感じがよく分かった。

また1年前にもフィリアホールで澤田さんの演奏のコンサートがあったが、その時には、ピアノとヴァイオリンが離れていて、ヴァイオリンの音が小さく、ピアノとヴァイオリンの音のバランスが悪いと思ったが、今回は、ピアノはヴァイオリンのすぐ近くにあり、ヴァイオリンの音とのバランスが非常に良かった。これは多分舞台音響のため、お互いが聞きにくいことがあったのかもしれない。また幕間に赤いカリーナのブローチを買ったが、これにはウクライナの愛国歌、「生きのびるために」と書かれていた。ウクライナから避難して来た女性たちが、もっとも思っていることが、この「生きのびるために」と思っていることと思う。横浜ボートシアターの小栗判官・照手姫の公演の中で、小栗判官の餓鬼をみんなで引いて、生きろ生きろと言っていることと近いかもしれない。以下は2023.11.29のブログである。

https://yab-onkyo.blogspot.com/2023/11/blog-post_29.html

                   






2024/06/03

イリャン・チャンの肖像(portrait of Il-Ryun Chung)という名のコンサート

 「イリャン・チャンの肖像」とは、内容がわかりにくいので、イリャン・チャンの作曲した音楽とした方が具体的で、まだわかる。また副題は、韓国伝統と現代音楽の邂逅というものだが、韓国の伝統的な楽器を用いた現代音楽とした方がはっきりしている。ただしその中心の楽器はマリンバと思われる。韓国の伝統楽器ではない。マリンバに太鼓のチャングと横笛のデグムが加わった形だ。イリャン・チャンの音楽は、伝統的なハーモニーやメロディがなく、リズムも絶えず変化している。このイリャン・チャンの曲にはマリンバが多分もっともあっていると思う。

コンサートは531日(金)、場所は神奈川県立音楽堂、演奏者は加藤訓子(かとうくにこ、マリンバ)、ホン・ユー(デグム横笛)、ウーンシク・キム(チャング太鼓)、さらに後半ではイリャン・チャン指揮により、先ほどの演奏者+アンサンブル・ノマドが演奏した。

1曲目は韓国トラディショナルというので、伝統的な韓国の音楽という意味か、イリャン・チャンが作曲した伝統を踏まえた曲かはよくわからないが、デグムとチャングによる演奏で、2曲目からはマリンバが主になり、音が、大変新鮮に聴こえてくる。さらに後半はアンサンブル・ノマドが加わり、さらに複雑になった。多分今後の音楽を示している曲の一つと思われる。

イリャン・チャンによればあいさつ文で、「私たちは、音楽が実は私たちがその一部である自然へのリンクであることをほとんど忘れてしまっています。人々は実際にこれを感じ、分かっていれば、音楽を常に人々と共にあり続けるでしょう。人々も自然に属しているように、音楽も人々に属しているからです。」とあった。

デグムとは韓国の楽器で、篠笛のような横笛より大きな形、形としては尺八を横笛にしたような感じのものだった。多分吹き方は篠笛と似ていて、音も結構高い音がメインで、篠笛と近いが、時々は頭を縦に震わせ、腕も縦に揺らし、人間の息吹ないし、自然の揺らぎに近いものだが、この時には尺八の音と近くなる。このデグムという楽器が日本にはそのまま伝わらず、尺八になったとしたら興味深い話だ。ところで最近の横浜ボートシアターの小栗判官・照手姫の公演で出てきた横笛は、このデグムと相当似ていたが、これは台湾で購入したもので、バウというものだそうだ。歌口にリードがついているもので、1オクターブ+αしか音が出ないとのこと。多分これはこれで吹く対象が限られていて、目的があるのだと思われる。







写真:コンサート終了後の舞台の写真、ガムランで使うゴング・アグンやマリンバが合わせて使うガムランの打楽器、多分クトとクンピヤン、その他、更にマリンバ2台、ピアノやハープやヴァイオリンなどがあり、大編成となっている。