2020年1月からはじまった新型コロナの流行はもう三年も終わろうととしています。とくに最初の2年間は演劇や音楽の公演は不要不急と言われ、開催することが困難になっていました。やはり人が集まると新型コロナも感染しやすくなります。そこで松本幸四郎(旧市川染五郎)のように観客を集めないでもいいように公演をZoomで開いたりしている場合もありました。観客側はいいとしても俳優側は公演をしないと収入が無くなってしまいます。また舞台技術者、例えば照明や電気音響の人たちも舞台がないと動きが取れなくなってしまいます。劇場管理者や劇場の設計者も同じような状況が生まれてきそうです。
この半年は開いても客席は半分の量で、かなり客数が少なくなってしまったが劇場が身近になってきました。また現在(多分六月以降)はほぼ満席の状態で公演しています。またお祭りもかなり正常な状態で開催することができてきているようです。荏田のお祭りもお神輿はやめて、お囃子だけ外部で行っています。ただ阿波踊りでは、「今年3年ぶりに本格開催された阿波踊りでの新型コロナ感染者をアンケートしたら800名余が感染したとのこと。」ということがテレビでニュースになっていました。
新型コロナは手ごわい相手です。コンサートや演劇をもって、精神的な集中を図るとか、作曲者の気持ちになって立場を変えるとか、観客と一体化するとか、地域のまとまりを得ようとか、人が時の権力と戦う場合とか、権力が人をまとめて戦争するとかは「音楽・演劇は不要不急か?」というテーマも成立しそうですが、感染症と戦う場合には、人類にとってなかなか手ごわい相手になります。感染症に対して原因がわからず、ワクチンがない時には感染するかは行き当たりばったりだったと思います。
岡本隆司著 「明代とは何か」の中の「14世紀の危機」の章で「このペストは実に、中央アジアからモンゴル帝国の商業ルートをたどって、地中海に波及した。もとより疫病は、到達点の地中海・ヨーロッパのみならず、シルクロードとその周辺にも被害を及ぼさなかったはずはない。ユーラシアの東西を貫通していた交通幹線・商業ルートは、これでズタズタに分断されてしまった。」「モンゴル帝国自体も、バラバラになり内部崩壊していく。」とありました。
新型コロナに対してはマスクや手洗い、3密の回避などがまずあげられますが、さらにワクチンが積極的な対応策になっています。今後感染症の治療薬も開発されてくるといいと思っています。建築の立場からは、インドネシアのプンドポのような屋根だけで壁のない開放的な劇場で新鮮な外気を取り込むことができる劇場ができるといいと思っています。さらに紫外線を用いた室内の換気や空調設備や、さらにフィルターなどの方法によってウイルスを殺菌する方法も考える必要があります。また人の集まる競技場や飛行機や電車やバスもその対象になるような気がします。感染症に対しては、まだまだやることがあります。