2022年11月6日(日)に 新横浜のスペース・オルタで、横浜ボートシアターの公演があった。団長の遠藤さんが亡くなってから2作目の新作公演。1作目は石原吉郎のシベリア抑留生活を描いた「望郷と海」から作品にしたもので「白い影絵」、今回は中勘助の大正11年作品の「犬」より。物語は11世紀のインドでの話。隣国から攻めてきた若者の兵隊にレイプされた町の若き女性が、その男に興味を持ち、さらに森の中の庵に住んでいる宗教上の年老いた僧侶がその娘をさらに恋して、話がきわどく、また難しくなる話。脚本、演出および人形製作の吉岡紗矢がまえがきで「原作の「犬」を読んでいやな気持がした人にも是非この劇を観ててほしい。」とある。
この劇は人形の仮面をつけて演じている。これが生々しく生き生きしている。仮面の一つは若き美しい女性のもの、もう一つは恐ろしい醜悪な年老いた僧侶の面。この二人が主の登場人物である。この仮面は多分人間が演じるより、表情が豊かになっていて、人間の感情がより強くつたわると思う。最後は女性が地面の割れ目に落ちて行ってしまう。女性の恋が背徳的にとらえているようにも思うが、人間の生き方をもう少し肯定的にとらえられる場合もあるような気がする。とにかく小栗判官や極楽金魚のようにどこかで救いが欲しい。
スペース・オルタは地下1階にあり、120名ほどが入れる。ただし入場はコロナ感染防止のため1席飛ばしでいれていた。この程度のライブハウスのような劇場は臨場感があって今後増える可能性がある。横浜ボートシアターとしては、この公演をふね劇場で公演したかったが、艀が多少水漏れしているようで、現在は修理点検中になってしまった。はやくふね劇場で見たいものだ。