2020/03/16

鶯と室内音響

昔から不思議に思っていたのですが、鶯は、目の前で鳴いてはいてもほとんど姿が見えません。それはなぜかということを、仮説を立てて、室内音響の指標を基に考えてみることにしました。

室内音響の最も有名な指標は残響時間です。明治33年(1900)ボストンシンフォニーを設計するためにSabineが作った指標です。これが室内音響の歴史の始まりです。

現在では劇場などの残響時間の測定方法はISO3382-1:2009-06-15(JISにはまだない)で定められていて、ノイズ断続法とインパルス応答2乗積分法の2種類が規定されています。
ISOではインパルス応答からは、残響時間をはじめ以下のような指標も分析することができます

AnnexA
Sound strength,G,
Early decay time(EDT)
Clarity,C80,
Definition,D50
Centre time Ts
Early lateral energy fraction ASW JLF
Late lateral sound level LEV Lj

AnnexB
Inter-aural cross correlation (IACC)

Annex C
Acoustic parameters measured on orchestra platforns
Early support, STEarly
Late support STLATE

以上がISO3382-1の音響指標ですが、イエンス・ブラウエルト他編著『空間音響』から、頭部音響伝達関数という指標を紹介します。本書の16ページ、「頭部音響伝達関数」の章より、
音源からの音波が人の両耳(鼓膜)に到達する経路は、壁の反射、回折、散乱等の室の伝達系と、頭部音響伝達関数と呼ばれる頭部や耳介による反射、回折、共振等の伝達系に分けることができる。それらの系を経て鼓膜に到達した音響信号は音刺激となり、その結果、受聴者は次の3つの特性をもった聴覚事象すなわち音像を知覚する。
1. 時間・・・リズム感、逐次感、持続感など
2. 空間・・・方向感、距離感、広がり感等
3. 室・・・大きさ、ピッチ、音色など
とあります。
頭部音響伝達関数を評価する場合には、頭の形や大きさだけでなく、耳介や耳道や鼓膜の音響特性まで忠実に似せないと聴覚事象の空間特性に顕著な違いが現れると書かれています。

以上が音響設計の主な指標となっています。

この最後の頭部音響伝達関数で、音の方向感や距離感などを感覚的にとらえることになりますが、これを利用して鳥や昆虫が音を出して、自分の位置をだましているのではないかと考えてみました。

以下に鶯の鳴き声の波形を示します。「ホーホケキョ」の中でも、瞬間、瞬間で発生する周波数が多少異なっていることがわかります。この周波数が異なることで音の方向感・距離感が異なって聞こえると想像できます。このことで鶯は見つけられないように対応しているのではないかいうのが今回の仮説です。

音の方向と、人の頭や顔の形、鼻や耳の位置で音の周波数が変化します。しかも人によってその特性が変わります。したがって音の特性が変化しない場合には、ある方向、またはある距離から聞えていると感じますが、音源の特性が突然変化すると違った方向や距離に変化したと感じるのです。

録音は昨年のものですが、我が家の庭で3月12日(木曜日)の朝、今年初めて鶯が鳴きました。また、桜の開花(3/14東京、この日は雪も降りましたが)も始まりました。

上段:鶯の鳴き声を約6分ほど録音したもの
下段:上段の赤丸部分の鶯の鳴き声を拡大したもの


上の波形を1~4の部分に分けて周波数分析


FFT分析