2007/05/10

旧金毘羅大芝居金丸座第23回四国こんぴら歌舞伎大芝居公演

日本最古の芝居小屋(天保6年(1835年)に建設)として国の重要文化財として指定されている旧金毘羅大芝居金丸座に、建築家の賀古氏のお誘いをいただき、芝居小屋会議、歌舞伎学会、JATET(劇場演出空間技術協会)のメンバーと行ってまいりました。


旧金毘羅大芝居金丸座


 この金丸座は、昭和51年に移築に伴う大改修を行った後、平成14年以降に耐震改修に伴って、江戸時代の当初の状態に復元されています。それを「平成の大改修」と言い、設計を担当されたのが賀古氏です。

 その復元で、江戸時代の芝居空間の素晴らしさがわかる大発見がありました。特にすばらしいのは、舞台空間と客席空間が一体で連続していることです。

ま ずプロセニアムがなく、舞台からは本花道と上手側に仮花道があり、さらに本花道の上に「かけすじ」すなわち、宙乗り用のレールがあります。また、舞台か ら客席空間まで、天井はすのこで出来ており、どこからでも雪や木の葉を降らせることが出来、天井裏が演出空間となっていることです。さらに、廻り舞台や すっぽん、暗転用の蔀戸のようなものや、雨戸のようなものもあります。

客席は桝席になっており、コノ字型に2階の桟敷席もあります。桝席 には仕切 りがありますが、この仕切りがあることで、たくさんの人が座っていても、客席か ら仕切りの上を歩いて出入りが出来るので、よく考えられていると思います。このように舞台と客席が渾然一体となって、芸能空間を生き生きさせていることが 特徴です。

 この3月に、市川団十郎氏がパリオペラ座に行って公演をされました。朝日新聞に掲載されていた市川海老蔵氏の談話によると、客席と舞台が遠く感じたとのこと。
  歌 舞伎では、下手側に太鼓や笛、上手側に浄瑠璃と三味線といった形で演者を取り囲むように演奏者が存在し、オペラ座のように俳優と観客の間に演奏者が存在 するということはありません。また俳優も、舞台、花道、仮花道、さらに宙乗りといった形で、様々な方角から音を発します。このことにより、観客と舞台が一 体となった感じになります。

 木造芝居小屋の音響的特徴は残響感がないことです。床が畳、天井は竹のすのこ、壁は障子ですから、吸音する 材料ばかり です。とくに低音域の音は吸音されて しまい、したがって明瞭性があります。そのため、残響感を管楽器自身でつけたり、声も長く伸ばしながら話すといったことが、歌舞伎らしさを形作っていま す。また、音が反射音で補強されにくいため大きな声を出す必要があること、さらに直接音がはっきりしていて、音の方向感があることも特徴で、したがって音が立体的 になります。

桝席

かけすじ(布で覆われている部分)

桟敷席(明かりとりは、障子の外の蔀戸が閉められている。)


客席上のぶどう棚


 第23回四国こんぴら歌舞伎大芝居は4月12日から25日まであり、演目は、

午前の部 1.正札附根元草摺、2.芦屋道満大内鑑 葛の葉(中村扇雀) 3.英執着獅子 
午後の部 1.傾城反魂香、2.ご挨拶(坂田藤十郎)、3.男女道成寺

 私は4月24日に午前の部を鑑賞しました。
午前の部では、葛の葉が圧巻でした。「陰陽師・安倍晴明出生にまつわる伝説を題材とした作品で、人間と狐の異類婚姻を描いた代表的な作品です。」(サイトより)) ストーリーは不思議な昔話ですが、なんとも美しいものでした。廻り舞台や、すっぽんを使って舞台転換をし、主人公の葛の葉が障子に墨で遺言を書くところな ど も素晴らしく、また人間の姿が次第に狐に変身していきながら、「かけすじ」を使って宙を飛んでいくところがとくに圧巻でした。