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2021/12/24

倉敷の録音スタジオ

7月の初めに、約1年かけた録音スタジオが竣工し、音響検査をしてきました。

スタジオの用途は主にJAZZの音楽を録音する録音スタジオで、主にピアノの演奏用に残響の多少長いエリアと、ドラムやベースギターの演奏用に残響が短いエリアを可動パーティションで仕切られるようになっています。

また周辺に隣接して民家があることから、外壁はRC300mmの厚みとし、内部は防振ゴムで支持する浮構造としています。なお床はヘルムホルツ共鳴機構を用いた乾式の浮構造です。またこの録音スタジオは個人の住宅の付属施設ともなっています。

平面図 (注: ピアノが左右逆)

防振板ゴムの設置

 

乾式浮床の設置(注:床構造の下面にヘルムホルツ共鳴孔が設置されている)

ピアノ側のエリア

ドラム側のエリア

コントロールルーム(ここも演奏用ブースとして利用可能)

設計:井上商環境設計株式会社

施工:株式会社藤木工務店


倉敷の町

測定の翌日は、倉敷の町の観光をしました。宿泊場所は倉敷アイビースクエアで、明治22年(1889年)に創業した倉敷紡績所の工場跡地です。朝、倉敷の中心にある鶴形山の山頂にある阿智神社に行ってみました。この周辺は古くは阿知潟と呼ばれる浅い海域で、ここはかつて瀬戸内海の小さな島だったらしくとても印象に残りました。その後重要伝統的美観地区の古い町並みを散策し、大原美術館も見学しました。古い町並みだけでも十分な価値があると思いましたが、その後、備中国分寺にも立ち寄り、翌日は吉備津神社、岡山後楽園などを見学し、この地域の豊かな歴史文化を堪能しました。

アイビースクエア

倉敷の街並み

倉敷の街並み

大原美術館

阿智神社

備中国分寺

吉備津神社

後楽園




2019/09/10

2019年 建築学会大会(北陸)で発表しました

今年の建築学会大会は例年より多く、9月3日から6日までの4日間開催されました。

大会会場となるのは金沢工業大学で、私の発表は4日の午前約10時から、会場は7号館です。以下の写真の右側手前の写真の建物の4階です。



本建物は大谷幸夫(おおたにさちよ)の設計です。国立京都国際会館や沖縄コンベンションセンターの設計者として有名です。この7号館は中央が吹き抜けていて、その中をエスカレータで登っていくようになっていて、教師や学生同士のコミュニケーションの容易な形態になっています。このときも、私が廊下でトイレを探していたら、目の前を歩いていらした濱田先生が気づいて教えてくださいました。

今回は、
「ヘルムホルツ共鳴器を有する乾式遮音二重床の開発 集合住宅の改修への適用」

と題して発表させていただきました。
今まではヘルムホルツ床の開発実験ばかりの発表でしたが、今年実際の集合住宅に採用されましたのでその結果を報告いたしました。
衝撃音遮断性能は、このヘルムホルツ床を使うことで今までの二重床やスラブ素面よりもこのように向上するとグラフで示しながら述べました。

質疑応答コーナーでは、6件の講演がある床衝撃音(2)のセッションの中で、最初に会場からは本題に質問がありました。

「防振ゴムの硬度が40度で柔らかいから低減効果があるのであって、ヘルムホルツ共鳴器の効果ではないのではないか」
という質問がありました。私はそれに対して、下部開口をガムテープなどで塞ぐと共鳴周波数の部分の低減効果はなくなると説明し、防振ゴムの影響ではない説明しました。

また「防振ゴムが柔らかすぎて、たわみが大きいのではないか」との質問もありましたが、これに対しては現場の所長は少し柔らかいかなとおっしゃったと答えたところ、会場でどっと笑いが起こりました
興味をもって質問をしていただき、良い雰囲気で終えることができました。

今回使用した防振ゴムは、日東化工さんでこのために加硫して作ったもので、少量なためまだ高額です。

以下発表原稿です。

















2019/06/25

「ヘルムホルツ床」東京白金のマンション採用事例

お知らせが遅くなりましたが、URと共に開発を行い、実用化を目指してきた「ヘルムホルツ共鳴器を有する乾式遮音二重床」が、このたび港区白金の民間マンション1棟まるごとのリノベーションに採用され、今年の3月に竣工いたしました。

建物は平成10年(1998)竣工の民間の賃貸マンションでRC造4階建、15戸、スラブ厚は150mmの建物です。

URの実験では、団地を想定して床高さを140mmとしていましたが、今回の条件は床高さ100mm、しかも床下に配管を行うというものでした。そのため重量床衝撃音(ゴムボール)での改善目標は、実験時の10dBより少し低く、10dB弱に設定しました。

床衝撃音測定は、(1)旧フローリング(二重床)、(2)スラブ素面、(3)ヘルムホルツ床が張られた状態(天井無し)、そして(4)天井が張られた後の計4回行いました。

図1 住棟平面図(一部)および測定位置図

測定結果

重量床衝撃音(ゴムボール)測定結果
旧二重床 → 63Hzと125Hz帯域でスラブ素面より低下していた
ヘルムホルツ床→ 63Hz帯域で8.3dB、500Hz帯域で19.7dB、スラブ素面より改善した

軽量床衝撃音(タッピングマシン)測定結果
ヘルムホルツ床は旧二重床と比較して250Hz帯域で8.8dB改善

※天井の設置前後の変化は、ゴムボールではL値上変化はなく、タッピングマシンではL数で2dB効果があった。

図2 床衝撃音測定結果(左ゴムボール、右タッピングマシン)

ヘルムホルツ床の特徴
ヘルムホルツ共鳴機構により、床下の空気層の音圧を低減できること、面剛性が高く力が分散し変形を抑えられること、面密度が一般の二重床より大きいことなどの長所があります。

床仕上構造の設計にあたり、床仕上高さおよび床下の必要空間を設計条件として、部材の厚み、空洞部の厚み、面剛性、面密度、防振ゴム、表面材およびコスト・施工性・耐久性などを、また最後にヘルムホルツ共鳴周波数および床下空間の共鳴周波数の設定を行っています。

表1 床仕上げ表

図3 床仕様

図4 平面の基本パターン

今年の秋の建築学会にて「ヘルムホルツ共鳴器を有する乾式遮音二重床の開発 集合住宅の改修への適用」と題して発表を行う予定です。

設計および施工技術にあたり、技術士事務所 佐野英雄氏、平成ビルディング 小池豊氏、アーキジャムワークショップ 小山美智恵氏、アルファリンクス 弓削寛司氏、雨澤壮敏氏に協力を得ました。

2018/11/26

建築技術2018年12月号に「渋谷スタジオの音響設計」という記事を書きました

本記事は、2018年11月号の「渋谷スタジオ遮音工事」という濱口オサミ氏による記事の続編となります。この渋谷スタジオとは、渋谷の桜丘にあるマンションの1階に計画された木造架構の音楽スタジオで、竣工時には本ブログにも紹介をしています。

床は檜、壁・天井は赤松集成材で、軽鉄等の一般的な下地のない、仕上げが構造体になった架構です。また天井は木造のトラス梁を柱で支えて、その梁に赤松集成材の根太(240×40)を支持させ、さらに赤松集成材の板を載せた構造で、スラブからは構造的に分離した構造です。内部は木をふんだんに使った柔らかな温か味のある雰囲気で、音楽を演奏することに気持ちの良い空間です。

今回の記事は、その設計に対応した音響設計を弊社で行い、内容を記したものです。遮音設計や室内音響の方法などを書いています。中でも床は、一般的な防振床ではなくヘルムホルツ共鳴器を有する床を採用しています。その設計方法について、かなり具体的に書きました。

ご興味のある方がいらっしゃいましたら、ぜひご連絡ください。なお、この工法はUR等と集合住宅用に共同開発した特許工法です。