元弊社に在籍していたアントニオ・サンチェス・パレホさんの、スペイン、アンテケラにいるお父さんから日本語に翻訳された「アルハンブラ物語」が昨年送られてきた。著者はワシントン・アービングで、1832年の出版である。アービングはアメリカ人で、人気作家のひとりだったようで、1829年にここグラナダに旅をして、一時期グラナダのアルハンブラ宮殿に住んでいたようだ。当時アルハンブラ宮殿は城壁としての役割は残していたが、中流の、質素で色調様々な人が住んでいたようだ。
話は草木も生えないような荒れた山賊が出てくるような土地から始まる。セビリアからロシアの友人とウマにのって、用心棒を雇ってグラナダまで出発。アルハンブラに住むことになり、ここに住むマティオがアルハンブラに隠されている物語を話してくれることになった。ただ歴史が滅亡するときには、色々偏ってしまうことがあるため調べないダメだと書かれている。この本に出てくるいくつかの物語を紹介する。
p.199愛の巡礼アハマド王子のはなし:グラナダ王国ムーアの国に、アハマドという王子がいた。愛の誘惑から避けるために王は王子を幽閉してしまった。王子は鳥と友達になって鳩から肖像を入れたペンダントをもらったが、どこの誰だかはわからないまま、そこにむかって脱出した。そしてオウムからこの肖像はトレドに住むアルデコンダ王女で、キリスト教徒でやはり愛の誘惑から避けるために幽閉されていることが分かった。着いた翌日アルコンダ王女は結婚相手を試合で勝った人を選ぶことになり、アハマド王子は梟の先導で近くの洞窟で馬と鎧を魔法で手に入れて、試合相手を吹き飛ばし、止めようとした王も吹き飛ばして洞窟に戻った。梟は王女が嘆いていることを伝え、アラブの旅人に変装して、王女を魔法の絨毯にのせて、飛んで城に戻ってしまう。
この「アルハンブラ物語」を思い出したのは、NHKESで6月に放送されたラヴェルの管弦楽伴奏歌曲集「シェエラザード」を聞いた時で、アラビアンナイトの話のように異文化に接する感じで描かれており、突然思い出しました。歌はステファニー・ドゥストラックで、素晴らしい歌声でした。