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2022/09/25

アルハンブラ物語

  元弊社に在籍していたアントニオ・サンチェス・パレホさんの、スペイン、アンテケラにいるお父さんから日本語に翻訳された「アルハンブラ物語」が昨年送られてきた。著者はワシントン・アービングで、1832年の出版である。アービングはアメリカ人で、人気作家のひとりだったようで、1829年にここグラナダに旅をして、一時期グラナダのアルハンブラ宮殿に住んでいたようだ。当時アルハンブラ宮殿は城壁としての役割は残していたが、中流の、質素で色調様々な人が住んでいたようだ。

話は草木も生えないような荒れた山賊が出てくるような土地から始まる。セビリアからロシアの友人とウマにのって、用心棒を雇ってグラナダまで出発。アルハンブラに住むことになり、ここに住むマティオがアルハンブラに隠されている物語を話してくれることになった。ただ歴史が滅亡するときには、色々偏ってしまうことがあるため調べないダメだと書かれている。この本に出てくるいくつかの物語を紹介する。

 .134最初の話:アラビア人占星術師のはなし:むかしむかしグラナダ王国に君臨したアベン・ハブジという王様が年老いた後、アブラハム・アベン・アブ・アジュブという老人の占星術師がエジプトから徒歩で、城に来て、占いをした。ある時グアディックスの山で、キリスト教徒の美しい娘を捕虜にした。この娘はゴート族の王女であったが、この娘に恋をしてしまった。王は占星術師に隠れ家を作ってほしいと頼んだ。そこで占星術師はその建物ができた折に最初にその城門を通り抜ける生き物を私に下さいという約束をしたうえで完成した。最初に城門を通り抜けたのは白馬にのって通り抜けたのは王女だった。『すると、あたりに凄まじい轟音がひびき渡り、足許の大地がまっぷたつに割れたと思うと、老人はゴート族の王女とともに正門をくぐって姿を消してしまった。』

 .192老伯爵の宴:伯爵である老将軍が、ある時大家族を連れてアルハンブラに住むようになり、時々中庭で一緒に食事をするようになった。大家族の一員は音楽や踊りで伯爵を喜ばす方法を知っていたが、スペイン栄華の時代の貴族たちの威力もスペインの栄華とともに衰えた。

.199愛の巡礼アハマド王子のはなし:グラナダ王国ムーアの国に、アハマドという王子がいた。愛の誘惑から避けるために王は王子を幽閉してしまった。王子は鳥と友達になって鳩から肖像を入れたペンダントをもらったが、どこの誰だかはわからないまま、そこにむかって脱出した。そしてオウムからこの肖像はトレドに住むアルデコンダ王女で、キリスト教徒でやはり愛の誘惑から避けるために幽閉されていることが分かった。着いた翌日アルコンダ王女は結婚相手を試合で勝った人を選ぶことになり、アハマド王子は梟の先導で近くの洞窟で馬と鎧を魔法で手に入れて、試合相手を吹き飛ばし、止めようとした王も吹き飛ばして洞窟に戻った。梟は王女が嘆いていることを伝え、アラブの旅人に変装して、王女を魔法の絨毯にのせて、飛んで城に戻ってしまう。

 魅力的な幻想的な話がいくつかあって、話を終えるに当たり、彼はマティオとともにグラナダの図書館で、羊皮綴じの書類などを調べた。また最終的にはマティオは正式にアルハンブラの高給取りのガイドとなった。

この「アルハンブラ物語」を思い出したのは、NHKES6月に放送されたラヴェルの管弦楽伴奏歌曲集「シェエラザード」を聞いた時で、アラビアンナイトの話のように異文化に接する感じで描かれており、突然思い出しました。歌はステファニー・ドゥストラックで、素晴らしい歌声でした。

 

2022/09/12

フェルメール 光の王国の光と音

 フェルメールは1632年にオランダで生まれた。そして同時にレーウェンフック、スピノザも同じ年に、同じ国に生まれた。彼らに共通なテーマは、フェルメールの作品の中の「光のつぶだち」であった。「フェルメール 光の王国」の著者は福岡伸一で、専門は生物学者である。

.11にはアインシュタインも出てくる。「光が、音や電波のような振動、というよりはむしろ粒子であることを理論的に予言したのはアインシュタインである。」

.74の「窓辺で水差しを持つ女」(メトロポリタン美術館収蔵)では「窓から入る光が金属の水差しを光らせる。その一瞬を“微分”することに成功した。」

.90 「ガロアは1811年、パリ郊外の町ブール・ラ・レーヌで生まれた。」「歴史の劇薬のようなフランス革命が勃発して20年。フランスは激変していた。」「1823年、12歳になったエヴァリスト・ガロアは中略 当時の旧学制では、LLGは中学校であった」「フランスの偉大な数学者アドリアン⁼マリ・ルジャンドルの「幾何学原論」が教科書に指定された。」最初は「幾何学の目的は空間の測定にある。」「幾何学の目的は空間の測定にあることに、ずっと意識的だったのは、ガロアひとりだけではない。“神々がめでた人”はここにもいる。」

.209 「ガリレオは土星の発見者としても知られてる。望遠鏡で不思議な形をした星を見つけた。しかし、彼の望遠鏡はまだ十分な解像力を持っていなかった。」

このように著者は科学者であり、本の随所に物理的な言葉が出てくる。この本のテーマは“光のつぶだち”が対象となっていて、音のことは検討の対象ではない。しかしひょっとしてフェルメールは、音も対象としているかもしれないと思って、以下を書いてみた。

実はフェルメールは音楽に関係している絵もたくさんある。気になるのは絨毯がテーブルの上にかけてあることだ。普通考えると絨毯は床の上に敷くものだと思ってしう。ただこの絨毯は手織りで、高価だと思われるので、床ではなく装飾としてテーブルの上に敷いていたのかもしれない。しかしさらに絨毯が残響調整のためにあったとも考えることもできる。

 .128 「音楽の稽古」(1662-65年ころの作 英国王室コレクション所蔵) 少女がヴァージナルを演奏している。テーブルには絨毯が置かれている。「ヴァージナルとは小型のチェンバロのことで、鍵盤を叩くと弦が弾かれる仕組みの楽器。ガラスのビーズをふりまくような細やかで華やかな音を奏でる。」もので、ハープシコードのように弦をひっかくようだ。したがって楽器の自己残響があるはずで、テーブルの上に絨毯が置かれていることで、部屋の残響は長すぎず、適度が好ましいと思われる。

 .129 「合奏」かつてボストンのイザベラ・スチュアート・ガードナー美術館にあったが、現在盗難にあったまま行方不明。ヴァージナルを演奏している女性と多分歌っている女性と多分男性の指導者。ここにもテーブルに絨毯がかかっている。

.139には「ヴァージナルの前に立つ女」(ロンドン・ナショナル・ギャラリー所蔵)がある。この絵には残念ながら絨毯が絵の中に存在していない。床・壁と額に入った絵が見える。しかしこの絵にはないがどこかの場所に置いてあるのではないか?

 .142には「ヴァージナルの前に座る女」(ロンドン・ナショナル・ギャラリー所蔵)には楽器のコントラバスも壁に立てかけられていて、さらに壁には絨毯と思われる布がかかっている。これは吸音材としては十分だ。コントラバスの響きも適度となると思われる。

この時代はガリレオや、ニュートンなども科学の分野で活躍していたし、シェークスピア、ドン・キホーテのセルバンテス、さらにオペラ、歌舞伎など、新たな動きが演劇にもあった。

2022/09/03

蝉の鳴き声

 8月半ば、アブラゼミやミンミンゼミやヒグラシやひょっとしてクマゼミなどの声がやかましくなって、今が夏だと感じるころ、地面の上に蝉のなきがらが落ちていることが多くなった。蝉のなきがらをみているとその他にもクワガタのハサミだけ残って、あとは食べられてしまった跡とか、シマヘビが道の端でなくなっていたり、ムクドリがはらわたを出して死んでいたり、コガネムシやスズメバチがときおり死んでいたり、また朝顔に、数匹の蛾または蝶の5㎝位の芋虫がいて、何日か後に、太ったところで多分鳥に食べられて無くなっていた。昆虫など生き物が生きることに懸命なときに、虫たちの死も身近にあることがわかる。シマヘビやムクドリは別として、虫たちの一生のサイクルが短すぎる。一生を楽しむには時間が足りなすぎる。

なんとか九月になって、秋の虫も鳴き始めた。秋の涼しげな鳴き声だけだといいと思う。ただ残念ながら台風11号が沖縄付近を通過している。