緊急事態宣言により、舞台や音楽関係には依然として厳しい制限がかかっている。
劇場の形態はいわゆる3密が特徴で、対策として座席は半数を上限とされ、入場時はアルコール消毒、検温、マスクも着用が厳守となっている。加えて換気が重要で、大型の劇場やホールの場合には、基本的に大規模に空調をしながらシステムの中で換気も行っている。
しかし、空調による換気を行っていても、咳等による飛沫が遠くまで飛んでしまうことも考えられるため、劇場では一般的に設置されている床下排気口からできるだけ早く排気することが望ましい。劇場は収容人員が多いため換気量は多いが、そのうち外気からの新鮮空気の割合は20~30%であるため(※)、空調稼動時にウイルスが循環することも考えられる。
そのため、可能であれば排気口の中で紫外線などによる抗ウイルス処理ができれば安心である。
(※20210607追記:20~30%というのは一般的な数値であるが、現在オンラインで視聴できるJATETフォーラム2020/21の建築部会の講演 で、劇場は外気からの新鮮空気の割合は50~90%(一般的な事務所では20~30%)であると発表されている。)
紫外線によるコロナウイルス不活性化については確認されており、それを利用した装置もさまざまなメーカーで開発されている。
以前直接話を伺った(株)ハリマビステムでは、様々な場所で使用可能な高出力紫外線発生装置があり、殺菌灯・ファンを内蔵した装置にて室内の空気を循環させながら除菌するものである。実際に病院や学校、研究施設などで利用されている。
劇場ではこのような装置を空調機の排気口側に設置すると効果があるのではと思われるが、空間が大きく換気量も多いため、現在はまだ使用されている例を知らない。
また水銀ランプにかわる光源として紫外線LED(UV-LED)が実用化されたことも多数の製品化につながっている。
「深紫外線LEDは、人体や環境への影響も極めて少ないうえに、コンパクトで省エネ・長寿命という特長」があるとのこと。
その他、紫外線LED(UV-LED)を使用した空調システムのニュース等
前田建設と日機装が空調設備のウイルス除菌ユニット開発で提携、「深紫外線LED」で99.9%不活性化
室内空調システムに応用可能な新型コロナウイルスの除去不活化技術
弊社もかかわることが多い音楽練習室や録音スタジオなどは遮音が必要なため使用中に十分な換気がしにくい。また直接使用中の室内に照射すると人体に有害である場合がある(※人体に悪影響を及ぼす230nm以上の波長をカットした、222nm紫外線ウイルス抑制・除菌技術も開発されている)。その場合も空調の中での紫外線殺菌が効果的である。
仮に今後ワクチン接種が進み感染者が減ったとしても、より安心して使用するためには今後もそのようなシステムが必要であると考え、今後の設計の際には検討していきたい。
紫外線による殺菌装置は現在多数開発されており、いくつか調べてみたものを以下にご紹介する。
空気循環型の紫外線照射装置
直接照射型 紫外線照射装置