2019/09/30

天井改修のための劇場および体育館の音響測定

平成26年4月、特定天井の構造について建築基準法が改正された。東日本大震災(2011年平成23年)で各地で天井が落下したことがきっかけである。

特定天井の条件は以下の様になっている。
吊り天井で居室、廊下など日常人が立ち入る場所で、高さが6mを超える天井で、その水平投影面積が200m2を超えるもの、天井面の単位面積質量が2kgを超えるもの(天井に固定されている照明器具を含む)

以上の場合は規制対象となり、一般的な体育館や劇場の天井はほとんどこの規制に含まれることになり、何らかの対策が必要となる。それにより、弊社でも体育館や劇場の天井の耐震改修に伴う音響測定を請け負うことが多くなっている。

天井を耐震化する場合、最初に考えられるのは、天井を撤去して、躯体を露出させてしまう方法である。耐震的には満足するが、気を付けなければいけないのは、体育館などでは既存の天井が吸音天井になっていることが多く、それを撤去すると言葉が聞きづらいなどの音響障害が生じる可能性が高い。

弊社で担当した事例をご紹介する。

東工大体育館では、既存の屋根が折版で大きな荷重をかけられないため、新たな構造体を設置し吸音材を付加することができなかった。そのため壁に吸音材を貼付して対策を行った。対策前測定を行い、対策方法の検討を行った。写真は、対策後の吸音材を貼付した状況で測定を行っている。

東工大体育館

 また福山市の中学校の体育館では、天井の吸音材撤去が行われていたが、天井がドーム形状のために、仮に壁に吸音材を貼付しても天井と床の往復反射によるエコーがあり、音響障害が除去できない。そのため音響シミュレーションで、エコーが発生しない天井の吸音材の範囲を最小にする範囲を求めたが、現実には再度足場を立てねばならずこの対策はできていない。

福山市の中学校体育館
さらに、既存の天井にネットをかぶせてしまう方法もある。これは現状の音響性能に問題がない場合には、比較的安価な対策として効果的である。山武市のさんぶの森ホールや成東文化会館にて、工事前の音響測定を行い対策を検討して、この手法を取った。

また既存の天井を生かす方法としては、吊り天井を撤去して、鉄骨を設置しその鉄骨に下地を直に固定する方法があり、この方法が最も多く採用されると思われる。
弊社が音響設計を担当し、2005年に開館した横浜市磯子区民文化センター杉田劇場の例がそれに該当する。平成29年から30年にかけて天井の改修が行われた。

また弊社の例ではないが、音響で一番有名なサントリーホールも天井改修を行った。ここは、天井を壊さずそのままの状態で、内部の構造を取り替えている。

さらに、現状に不具合がある場合天井改修を機に修正する場合もありうる。東工大講堂の舞台上部天井のように、吊り天井であったものを鋼材で固定し、文化財のために大きくは変更できなかったが、舞台から出した音を一部演奏者に戻すような工夫を行った。音響シミュレーションソフトのCATTを使用して設計を行っている。またこの場合にはST(Support)を計測した。


工事前・後の音響測定については以下のような内容が考えられる。

1.客席の残響時間特性調査
スピーカからスイープパルスを放射し、インパルス応答を測定し、この値から残響時間を求める。この方法により、エコータイムパターンを分析し、エコーの検知もできる。また話声の明瞭度指数STIも計測することができる。

2.ST(舞台音響)
ST(Support)はA.C.Gadeらによって考案された物理量であり、演奏者などの主観量(演奏のしやすさ)と相関を持つもので、ステージ上の反射音の量を評価する際に用いられる。

3. IACC(Inter-Aural Cross-Correlation両耳間相互相関係数
両耳の外耳道入口にマイクを挿入して、舞台に設置した無指向性音源から放射した音を受音して、空間の広がり感の評価を行う。

4. 音圧分布測定
舞台上で発生した音が、ホール内で均一に分布しているか確認する。音圧レベル分布は、主に天井、壁の拡散形状の影響を受ける。可動の音響反射板がある場合には、音響反射板状態と幕設備状態の二通りを測定する。
   
5.音響シミュレーション
測定結果に音響障害があれば音響シミュレーションソフトのCATT等で現状と改良案を作成する。音響障害の代表的なものはエコーないし、フラッターエコーである。または残響音の豊かさが不足するなどもある。


室内音響は主として以上のものであるが、改修時に天井以外の音響性能をチェックすることもある。
 
6. ドアの遮音測定
7.  界壁、階床の遮音性能測定
8. 空調騒音測定
9. ビリつき音測定
10.電気音響に関する測定