【音源が不明な場合】
集合住宅等の騒音対策の場合、音源が不明で、その探査から行うという依頼も多い。音源が目の前にある場合は対策も立てやすい(音源が複数ある場合も同様である)が、音源の位置が不明で、さらに固体伝搬音の場合には、部屋の中で聞こえる騒音は部屋全体の壁から聞こえてくるために、建物の中の何が音源であるのか見つけることが難しくなる。
空気伝搬音であれば、音源が見えない場所にあっても、先行音効果(Cremer)の影響があるために音の方向性があり、また距離によって減衰があるが、固体伝搬音の場合には伝搬速度も固体中では早く、建物全体に伝搬して、しかも距離減衰が小さく、部屋全体から聞こえるために、音の方向感が無くなってしまう。
【騒音が定常音の場合】
さらに固体伝搬音の場合でも、騒音が定常音の場合には、常時その騒音が存在しているため、測定をして周波数分析を行えばかなり音源が特定できる。
例えば、電源トランスなどでは通常50Hzや100Hzが卓越するために、騒音計で計測するだけで音源の推測がつく。また給水音などはポンプの起動する音が変動するためわかりやすい。
【騒音が衝撃音の場合】
問題は音源がわからない場合の「ドンドン」とか「コツン」「パキッ」などの衝撃音である。いつ発生するかわかりにくく、発生時間もバラバラであれば場合によって測定も長時間、数日に渡って行う。長時間待機していても鳴らない場合もあり、音源探査が難しい。
【騒音発生時間からの推測】
衝撃音で、音源がわからない場合、まずは発生時刻とその音の様子などを、しばらくメモをとって記録する(または住民の方に記録していただく)ことを行う。
一見バラバラの時間に発生するように思えても、たとえばサッシの熱ひずみによる衝撃音や天井の軽鉄下地から出る衝撃音などは、太陽が当たり始めた頃や、また日が沈む頃に再び発生することが多い。また、夕方から夜にかけて発生する騒音は、お風呂の排水管の熱膨張などのこともある。
天井下地の熱ひずみで発生する音の場合には、上階の床衝撃音と間違えやすいため近隣トラブルなどの問題となりやすい。音源の予測がまず第一である。
【振動を測定する】
騒音計で方向性がわからない場合、方向性の予測に振動を計測することもある。加速度振動ピックアップなどを室内数か所に設置、同時に計測して、加速度の振幅や到達時間などを見て音源探査をする。
【集合住宅等の固体伝搬音の対策】
固体伝搬音の場合も、発生源を見つけられれば、簡単に対策ができる場合もある。高層階の手すりなどの風切り音は、手すりの形状を変更する必要がある場合がある。ファン類、電源トランスなど、設備から発生する固体伝搬音は前回のブログで述べた防振基礎でほとんど解決する。
対策が困難なものもある。上階の床衝撃音(子供の走り回る音やゴルフの練習)などは人為的なため、解決には住民同士の関係性なども大きな要素となる。床衝撃音もなかなか対策が困難な固体伝搬音である。
その他異音の原因であったもの
- 高層住宅のサッシは風圧力に耐えるためにアルミと鋼材を組み合わせたフレームを使うことが多いが、熱膨張率の違いで、温度ひずみが生じて異音を出すことがある。
- 特にカーテンウオールでは、スラブに固定するファスナーの形状で、ひずみを生じて異音が発生する場合もある。
- 屋上の携帯電話のアンテナの冷却ファンの振動が、防振の不良で下階の部屋に伝搬していたことがある。