「特集:都市をつくる最前線の集合住宅」のうち、「音環境のテクニック」について、4ページの記事となっています。
ご興味のある方は、ぜひご覧ください。

客席の床は畳で、その上に座布団を敷いてある。壁は、襖か障子で、これは吸音性というか、ほとんどの音が透過してしまう。天井は、薄い板か八千代座のように和紙で出来ているものもある。
(写真:嘉穂劇場内観)
したがって床、壁、天井はかなりの吸音性があり、特に低音域の吸音性が大きい。この特徴は、コンクリートで出来た劇場とはまったく逆の特徴となる。
コンクリートで出来た劇場は、やはり強い反射音があり、響きを感じる。発生した声は大きな音で伝搬はするが、場合によっては明瞭性が劣ってくる。木造劇場は、明瞭な声の伝達が可能であるが、大きな音になりにくく、したがって役者は声の出し方に工夫が必要となる。
最近の芝居小屋では、歌舞伎役者以外の大衆演劇の芝居では、ほとんどがマイクを使って公演をしているそうである。マイクを使うと、音はスピーカから出てくるので、音像が役者でなくスピーカの位置に移動してしまうために、舞台に動きがなく平板な感じになるという欠点がある。
このような現象は、BIGバンドのJAZZのコンサートで、電気音響の拡声を行う場合によく感じる。生き生きした情感を表現するためには、やはり生声で公演することが必要であると考える。しかし、音が反射しないため、役者の喉にかかる負担が大きく大変なのもたしかである。
それを改善する方法は、舞台装置を使って、音響反射板の代わりとすることではないかと考える。それにより、直接音を補強し、力強い音で伝搬させることが可能となるのではと。いずれにしても木造芝居小屋の音響データを収集することが重要である。
また嘉穂劇場では、この3年間、12月のベートーベンの第9を演奏しており、九州交響楽団と、地元出身のオペラ歌手と地元の合唱団で構成されている。
このような木造劇場では、クラシックコンサートホールのようには響かず、その点からは好ましくないが、しかしこのような木造劇場の空間が日本の劇場の原点と考えれば、この日本的な空間の中で、ヨーロッパで発展した音楽を演奏することは、それはそれで文化の交流と解釈してもいいのかもしれません。
芝居小屋でこのようにクラシックの演奏会をする場合には、演奏者は客席のスペースで演奏したほうが、音が観客に行きわたるかもしれません。
工事の主な目的は施設のバリアーフリー化と、練習室の遮音性能の向上、およびホールの電車騒音対策です。その他意匠的には、長い間市民に親しまれた外観は残し内部空間を明るくまた利用しやすい空間に改修いたしました。全体計画はパシフィックコンサルタンツ株式会社が担当し、YABでは、そのうち劇場の使われ方の検討と改善、各練習室の防音対策を担当しました。
防音対策は浮き構造による方法として、地下のリハーサル室、1Fの音楽室、視聴覚室、3Fの第3多目的室、第4・5多目的室の防音対策工事を行い、各室間に十分な遮音対策をして同時使用を可能としました。また大ホールは舞台側に八高線が隣接しており、鉄道走行騒音の影響を受けていたため、舞台側の線路に面する壁を防振支持した壁を付加しました。
視聴覚室の騒音測定(窓の向こうが線路です)。
客席と測定時の様子 |
客席の様子 |
客席の様子 |
1Fオープンスペースの測定の様子 |