日時:2025年4月20日(日)14:00開演、しかし終了時間は17:45ぐらいだった。
場所:ティアラこうとう(江東公会堂) 大ホール 半蔵門線の住吉駅から約300mにある。
演目:1.歌劇「外套」、2.歌劇「修道女アンジェリカ」、3.歌劇「ジャンニ スキッキ」 公演はそれぞれ約1時間ずつあり、その間には幕間が20分ほどずつあった。すべてピッチー二の作品で、当初からこの3部作として作曲されたようだ。「外套」の作曲は1916年で、第一次世界大戦1914年から1918年の間になる。プッチーニはイタリアで、第一世界大戦の戦争当事国になっている。ロシア革命は1917年で、政治的には、世の中は物騒で騒然とした状態かもしれない。プッチーニはマノン・レスコー(1893)、ラ・ボエーム(1896)、トスカ(1900)、蝶々夫人(1904)、トゥーランドット(1924遺作)などのオペラの代表作があり、この外套他の3部作は人生後半の作品になる。
演奏は、舞台前のオーケストラピットに50名ほどいて、しかも時々それぞれの演目で、2階の両側の桟敷席で、大勢の歌手たちが歌を唄うという演出をしていた。オペラは、オーケストラピットで、観客席と舞台とを切り離されてしまうために、スクリーンの映画を見るような感じになってしまっていて、現代演劇では、舞台と観客をできる限り一体化したいという方向になっていたが、このオペラでは、合唱団が2階桟敷席で歌うなど、かなり観客と演技者が一体化しようとしていた。欲を言えば1階桟敷席があれば、そこで歌う方がより観客と一体化できるのでいいかもしれない。1階の観客席の中で歌う場合も考えられる。次第に歌舞伎の形態と近くなる。
歌劇「外套」:この歌手のメンバーは、2024年12月14日にマリーコンチェルトで行われたオペラIL Trovatore (そのブログ http://yab-onkyo.blogspot.com/2024/12/iltrovatore.html)のメンバーとほぼ重なっている。舞台の背景はノートルダム寺院がみえるセーヌ川、シャンソンが聞こえるセーヌ川でなく、倉庫が立ち並ぶセーヌ川で、貧しい暮らしをしている労働者たちとそれをまとめている船長とその奥さんが主人公だ。労働者の中ではゴミ拾いを生業としている若い娘フルゴラが天真爛漫で、この物語では唯一明るくふるまっていて、物語の暗い部分を余計感じさせる役割をしている。この船長の奥さんは労働者のひとりに心が移っており、船長はそれに気づき、その労働者を絞殺してしまうという話だ。タイトルのこの「外套」は殺した後、この外套で死体を隠していて、奥さんが来た時に奥さんをこの死体に押し付けることで幕になる。物語としては大変暗い話だ。ただ人間の感情、愛と憎悪はこのように激しい。憎悪による殺人という結果的には暗い話だが、愛の奥深さを強調するようなことを感じさせているように思う。さすがオペラだ。
歌劇「修道女アンジェリカ」:修道院の日常的な生活がまず描かれて、そこにいるアンジェリカのことに少しずつ話が移動する。アンジェリカは何か情報を持ってくる人を待っている。この情報とは自分の子供の消息である。あるとき彼女の裕福な叔母が来て、アンジェリカの妹が結婚するので親の全財産を渡したいとのこと。それを了解したことと、自分の子供の消息を訪ねると、2年前に病気で亡くなったとのこと。アンジェリカは悲観に暮れて、森に入って、毒の野草を食べて自殺してしまう。すると聖母マリアがアンジェリカの子供を抱いて現れ、それを抱きかかえて幸福感の中、息を引き取る。最後は良かったような気がするが、全体は暗い悲劇だ。しかしこれにはいろいろ疑問が生じる。なぜアンジェリカは修道院にいるのか、道ならぬ恋から生んでしまったようだ。しかしそのために修道院にいるのか、しかし彼女のかわいい子供をなんで置き去りにしたのか、なんで自殺しなければならなかったか、死ぬ間際で聖母マリアが自分の子供を抱いてきて、会えても少し遅すぎないか、劇的にしそこなった感じだ。半分疑問を持ちながら、この悲劇の舞台を見ていた。
歌劇「ジャンニ スキッキ」:これは痛快な物語だ。大富豪が息を引き取ったあと、そこにお見舞いに来ていた親戚たちが、彼の遺書を探し出し、それにはすべての遺産を坊主に引き渡すと。ジャンヌ スッキキの娘がジャンヌに、助けを頼もうと言うことになった。この中で彼の娘が、有名な「私のお父さん」の歌を唄う。お父さんなんとかしてと。本当にこれは美しい、いい曲だ。遺言書の偽造は共犯者も含め、手を切断されて追放されると親戚の皆さんに言いながら、ジャンヌは大富豪になりすまし、死の床から公証人が来たときに、遺言を述べる。いくつかの財産は、親戚に、また坊主に、また公証人に渡す。その他すべて、この家も含め私の友人のジャンニ スキッキに渡したいと。公証人が帰った後、親戚は激しく怒るが、後の祭りで、この家は自分の家だと親戚を追い出してしまう。最後に娘とその彼氏が愛の二重唱を唄い、娘の結婚に対しても、万々歳であった。
これらのオペラは、プッチーニの三部作とされているが、全体を通してみれば、夫婦や子供への愛がテーマか、しかもオペラなので劇的な愛なんだろうと思う。これはオペラの醍醐味だ。しかもプッチーニの周囲の世の中は騒然とした状態だと思う。身近なことを考えると、現在も不安定な状態で、ロシアとウクライナやイスラエルとパレスチナで戦争がある。トランプの関税政策も世界を震撼させている。これらの解決に対し、憎悪だけではないと、ほんの少しヒントになりそうな感じもある。
写真:ティアラこうとう 大ホールの公演開始前