日時:2024年5月4日(土祝) 12:45~13:55
場所:東京フォーラムホールA
出演者:ナタナエル・グーアン(ピアノ)、マリー=アンジュ・グッチ(ピアノ)、東京21世紀管弦楽団、キンボー・イシイ(指揮)
曲目:ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲ナタナエル・グーアン(ピアノ)、ピアノ協奏曲第3番マリー=アンジュ・グッチ(ピアノ)
建物は5000名収容のホールAからそれよりは多少小さなB,C,Dとあり、さらにガラスの展示場等のホールがある。今回はこの5000名収容のホールAで公演を行う。ただその他のホールでもいろいろ音楽の公演があるようだ。建築設計はラファエル・ヴィニオリ、大規模なホールがいくつかあるため、狭い敷地に要綱を満足させることはなかなかむつかしい。
設計コンペ時飛島建設の名木山部長を筆頭に5~6名とホラインおよびホライン事務所の人たちと元NHKの浅野さんとで参加して、残念ながら落選してしまったが、ホールAは思い出深いものがある。こちらの案は5000名の会議を主の用途と考えたので内部空間が一体化している扇型のギリシャ劇場のような形を求めた。今考えると強いて言えば現在のNHKホールの形約3000名を5000名まで拡大したような形で、天井はどちらかといえば高くはなく、天井の反射音を利用して直接音を補強し、音の強さをもたらすような形となっている。しかし審査員の理解には届かず?設計コンペで負けてしまった。
今回のヴィニョリ案は、ほぼシューボックスタイプであるが、舞台の幅は25m以上あり、客席の幅はさらに40m近くあるようだ。また天井も非常に高く、1階席の奥は2階席の下に大きく重なっている。これだけの形と広さでクラシック音楽を行うためには、電気音響による補強が必要のようだ。私の席は2階の前から6列目で、音楽はプロセニアムの上にある6個のスピーカから聞こえてくる。舞台の演奏者より私の席はスピーカに近く、先行音効果により、音は上部空間(スピーカ方面)から聞こえてくるので、舞台の音は単なる映像となっていた。しかも両袖の壁に大きな舞台を映す映像があり、視覚的な効果を大きくしようとしているようだが、音はプロセニアム上部からなのでいろいろ分離して感じられた。さらにスピーカは6個、はじからはじまでで多分30mぐらい離れているので、舞台の上の実音と合わせて到達するまでに少しずつ時間差が出て、はっきりしたクリアな音ではなくなっている。ただこの規模のホールで電気音響を使わない場合には、直接音を補強する間接音は不足してしまい、小さな音になってしまっているだろう。したがって建築音響的にはあまり好ましい音響ではないと思う。このホールは電気音響を使用することを前提に計画したと思われる。このホールAには初めて来た。実はキンボー・イシイがこの大きなホールAで指揮をするというので、気になってきた。曲目はラフマニノフの曲で、2曲ともよく知られた部分も含まれていて、きれいな曲だった。ピアニストは二人とも上手で、キンボーさんも堂々としていて立派になったと思う。ただ指揮者そのものは遠くてよくは見えなかったが。
屋外の通り抜け空間
このホールの公演が終了した後、その他の歩ける部分を歩いた。公共部分は主に大きなホールの階下にあり、外部にはただで聴けるコンサートもあった。ただこの場合も電気的な拡声が必要で、しかも音を豊かにする反射音がほぼないので、例えばヴァイオリンの生の音が拡声して聞こえるので、つややかな音になっていない。何か電気的な工夫が必要と思われた。ただガラスホールといくつかのホールの間の空間は外部空間と繋がっており、有楽町駅と東京駅をむすぶ便利な外部空間で、屋台もあり、人がたくさん食事をしたり、お茶を飲んだり、コンサートを屋外で聴くことができる、いい空間で、設計者のヴィニョリはこれを作りたかったのではないかと感じた。