昨年2021年1月1日のウイーンフィルニューイヤーコンサートはコロナ感染対策のため無観客で行われた。無観客でコンサートを行ったのはウイーンフィル歴史上初めてのことだったとのこと。
正確に言えば数千の観客がオンラインで参加し、拍手を観客席にあるスピーカから返すことをしていた。しかし観客がいない状態は、テレビを見ている我々も異様な雰囲気を感じる。コンサートの中で指揮者のリッカルド・ムーティは、音楽家は文化を伝える使命があると決意を述べていた。
2020年、2021年および2022年にかけて、舞台芸術や映画はかなり試行錯誤して、まともに公演ができていない。クレメンスさんが筆頭で書いた「The Acoustics of Kabuki Theatres」というテーマの論文(2020年11月のブログ、http://yab-onkyo.blogspot.com/2020/11/)の中に江戸時代の中村座の浮世絵がある。
この図を見ると「暫」の公演で、舞台の上の侍が自分の意に従わないものに対し、家来に命じて殺そうとするが、主人公が暫く、暫くと低い声で言いながら、花道から入場するところを描いている。このあと主人公が舞台で長い刀を振り回し、役目を終えた後は六法(ろっぽう)を踏んで花道から帰るという、簡単な筋書きであり、江戸時代からの人気の物語である。観客は枡席も桟敷席もいっぱいで、舞台の周辺さらに舞台の後ろも観客で埋め尽くされている。その結果、観客の中に舞台があるような、舞台を観客が取り囲むような形で臨場感が得られている。
下図に示すようにイタリアのテアトル・ファルネーゼも観客席がU字型で、舞台を観客が取り囲む方になっていて、観客の熱狂が聞こえるようだ。
S.ティドワース著 白川宣力・石川敏男 訳 「劇場●建築・文化史」
P.94 第57図 テアトル・ファルネーゼ 18世紀の平面図 「ネプチューンの結婚」の馬によるバレエの一場面 (1616年開場)
しかしコロナの感染は人から人へ感染する形なので、劇場や音楽の人気があればあるほど、人が密集すればするほど、コロナに感染しやすい状態となってしまう。人間側もいろいろ改良を加えているが、コロナも少しずつ変異し、状況に応じて適応する形となっているため、終りが見えない。そこで何らかの対策、例えば紫外線などによりコロナ菌を殺菌するなどの方法(弊社ブログ:劇場や音楽練習室等の紫外線によるコロナ対策の検討 http://yab-onkyo.blogspot.com/2021/05/)が必要ではないかと思われる。劇場やコンサートホールでは天井から新鮮空気を吹き出し、床下で吸い取る方法が多い。したがって床下で紫外線によりコロナを殺菌する方法は人間の吐く息を最初の段階で対策をすることになる。