4月17日の早朝、この時期41年ぶりの雪の中、四国の高松に向けて車で横浜を出発しました。午後2時に無事に琴平に到着、目的はこんぴら大芝居を見ることです。
こんぴら大芝居は、天保6年(1835年)に完成した江戸歌舞伎様式の芝居小屋、旧金比羅大芝居金丸座で、鶯のさえずる4月に毎年行われています(今年は4月10日~25日)。実際、劇場の中にいると、鶯の声が聞こえてきます。
午後の部は「通し狂言 敵討天下茶屋聚(かたきうちてんがぢゃやむら)三幕」。敵討の話ですが、一幕も二幕も、裏切りや殺しなど暗い話から始まり、3幕目でようやくドタバタ劇が始まります。小悪人演ずる市川亀次郎が、平土間の客席の中で追いかけっこをしたり、梯子を持ち出して2階桟敷席まで登り、そこから舞台へひらりと飛び降りたり。その間、観客はやんややんやと笑い声がいっぱいになります。最後は無事敵討を果たすことができるという話で、このような形の劇場のよさを十分活かしていると思いました。
翌朝は、こんぴらさんの階段を数百段上り、金比羅宮大門を入った近くにある資生堂の神椿という素晴らしいデザインの喫茶店に入りました。コーヒーを飲み、その後歌舞伎の午前の部を見ました。3部あり、一部は義賢最後(よしかたさいご)、二部は棒しばり、三部は浮世風呂です。
義賢最後の公演の演出には度肝を抜かれました。追われる源氏の片岡愛之助演じる義賢は、妻や子供を逃がした後、平家に切られ血まみれになって舞台の上に仁王立ちした後、階段に向かって顔から棒のようになったまま倒れます。見ている方は、さらに血まみれになっているのではとハラハラします。二部「棒しばり」、主人が出かける留守の間、召使いが蔵のなかの酒を飲まないように両手を棒に縛られていますが、二人で力を合わせてその酒を飲んで踊る話で、非常にこっけいな話です。一人は中村翫雀(かんじゃく)、もう一人は先ほど顔面血だらけになったはずの片岡愛之助です。三部は、三助の話で、風呂を掃除していると大変美人のナメクジが出てきて言い寄ってくるのですがそこに塩をかけて撃退する話です。あり得ない話なのですが、気持ちが悪くおかしな話です。あんなナメクジなら出てきてほしいような妖艶なナメクジで、塩をかけられて消える時には花道のすっぽんからスーッと消えていきます。セリは人力ですからずいぶんスムーズに動いていました。
二日間なんと楽しんだことか。
数日前、ブログで紹介したM邸ピアノ室で試演会がありました。ピアノ、ヴァイオリンやソプラノやチェロの演奏でした。20名ほど観客がいましたが、残響時間が2秒ほどあるために、ソプラノの人は残響をうまく使いながら、それに声を重ねていくように次第に乗って歌っているように感じましたし、ヴァイオリンも艶のある素晴らしい音で響いていました。
金丸座の響きとは全く違う世界で、こちらも大変素晴らしい演奏会でした。
2010/04/28
2010/04/07
M邸ピアノ室竣工
葛飾区のM邸に、ピアノ室が完成いたしました。建築設計はACT環境計画、音響設計をYABが担当いたしました。
設計にあたり、お客様からの要望は「大ホールで弾いているような豊かな響き」というものでした。しかし住宅ですからそれほど大きな空間ではないため、空間印象を左右する初期反射音は、直接音が到来してからせいぜい10msで到来してしまいます。そこで天井をできる限り高く(約9m)し、高さ1.8m以下の範囲は、屏風折れなどの形状で拡散性にして、強い初期反射音を拡散させるようにしました。ただし、この初期反射音は、ヴァイオリンの柔らかい音色を作りだすことに関係している可能性があり、拡散性の程度については注意が必要です。残響調整は、2Fの奥の壁にグラスウールを貼ることで調整いたしました。
残響時間は、空席でグラスウールがない状態の場合2.41秒/500Hz、グラスウールを貼った場合には2.28秒/500Hzと非常に長く、平均吸音率も0.08程度と非常に小さな値です。
竣工したピアノ室で、アルトサックスで音を出して確認を行った際には、グラスウールのない状態では、早いパッセージの音は若干濁った感じになりましたが、グラスウールを設けると濁りが無くなりました。音は教会のように上から降ってくるような印象があり、とても気持ちのよいものになっています。今後、壁面の本箱に楽譜などが入り、また観客が在席すると残響時間が多少短くなりますが、それでもとびきり残響の長いすばらしいピアノ室ができたと思います。近いうちに試演会が行われるようで、楽しみにしています。
先日新しくできた銀座のヤマハホールは、側壁を拡散形状として、初期の側方反射音を弱めています。似たような考え方ですが、おそらく目的は違います。シューボックス型の特徴は強い初期の側方反射音が得られ、音に包まれた感じが得られますが、そのためか音像の大きさが大きくなりぼやけてしまいます。確かにヤマハホールでは、音を聞いてみると音像がはっきりとしていてクリアのように思います。
設計にあたり、お客様からの要望は「大ホールで弾いているような豊かな響き」というものでした。しかし住宅ですからそれほど大きな空間ではないため、空間印象を左右する初期反射音は、直接音が到来してからせいぜい10msで到来してしまいます。そこで天井をできる限り高く(約9m)し、高さ1.8m以下の範囲は、屏風折れなどの形状で拡散性にして、強い初期反射音を拡散させるようにしました。ただし、この初期反射音は、ヴァイオリンの柔らかい音色を作りだすことに関係している可能性があり、拡散性の程度については注意が必要です。残響調整は、2Fの奥の壁にグラスウールを貼ることで調整いたしました。
残響時間は、空席でグラスウールがない状態の場合2.41秒/500Hz、グラスウールを貼った場合には2.28秒/500Hzと非常に長く、平均吸音率も0.08程度と非常に小さな値です。
竣工したピアノ室で、アルトサックスで音を出して確認を行った際には、グラスウールのない状態では、早いパッセージの音は若干濁った感じになりましたが、グラスウールを設けると濁りが無くなりました。音は教会のように上から降ってくるような印象があり、とても気持ちのよいものになっています。今後、壁面の本箱に楽譜などが入り、また観客が在席すると残響時間が多少短くなりますが、それでもとびきり残響の長いすばらしいピアノ室ができたと思います。近いうちに試演会が行われるようで、楽しみにしています。
先日新しくできた銀座のヤマハホールは、側壁を拡散形状として、初期の側方反射音を弱めています。似たような考え方ですが、おそらく目的は違います。シューボックス型の特徴は強い初期の側方反射音が得られ、音に包まれた感じが得られますが、そのためか音像の大きさが大きくなりぼやけてしまいます。確かにヤマハホールでは、音を聞いてみると音像がはっきりとしていてクリアのように思います。